旅する茶白猫のお話（その6）

2022年のクリスマスイブに、私は懸案だったエリちゃんの捕獲に成功しました。

 

ただ、捕獲が上手くいっても、まだまだ課題は山積みです。

 

まず、エリちゃんがご飯を食べてくれるかどうかです。

 

捕獲した猫の多くは、新しい環境に馴染むまでは食欲が大きく落ちてしまいます。

 

特にエリちゃんのように野良暮らしが長い子だと、新しい環境に戸惑って食事の間隔が大きく開いてしまうおそれがあります。

 

また、野良暮らしが長い子だと、トイレを上手くできないことも不安材料です。

 

しかし、家猫として暮らすのなら、トイレを覚えてもらうのは必須条件になります。

 

 

このご飯とトイレという2点を、エリちゃんがクリアできるかどうか、私は緊張しながら保護2日目を迎えました。

 

シェルターに着いてから、おそるおそるケージの中を眺めて見ると、私の不安とは裏腹にエリちゃんはしっかりとご飯を完食してくれました。

 

もうひとつの不安材料だったトイレも、上手にできていたので問題なしです。

 

私はエリちゃんをたっぷり褒めながら、新しいご飯を作ってからトイレを掃除しました。

 

 

そして、エリちゃんに話しかけながら、もうひとつの大問題を思い出しました。

 

私とエリちゃんは2年以上の付き合いですが、一切触ることができないのです。

 

毎日ご飯を食べに来ているのに、全く触ることができない猫というは、なかなか珍しい気がします。

 

しかし、これからエリちゃんと仲を深めていく時間は、まだまだたっぷりあります。

 

今までは外猫としての付き合いでしたが、今後はシェルターで暮らす家猫なのですから、誰にも気兼ねなく仲良くなっていけば良いのです。

 

 

こうして、私とエリちゃんの新たな生活がはじまりました。

 

思い返してみれば、私とエリちゃんは数奇な縁で結ばれていました。

 

・近所のマンションのゴミ捨て場でゴミを漁っていたエリちゃん。

 

・そんなエリちゃんへダメなことと分かっていてもご飯をあげてしまった私。

 

・その半年後に私の家の駐車場に流れ着いたエリちゃん。

 

・流れてきたエリちゃんに毎日ご飯をあげるようになった私。

 

偶然が重なり合って生まれた縁でしたが、今では私のシェルターでエリちゃんが暮らすようになりました。

 

 

私はケージ越しにエリちゃんを見つめながら、私のことを選んでくれたことにお礼を言いました。

 

そして、これからエリちゃんが生涯を通じて穏やかに暮らせるよう、一生懸命に頑張ることを約束したのです。

 

これまで長い旅路を歩んできた茶白猫のエリちゃんは、私のシェルターを旅の終着点として、新たな生活の第一歩を踏み出したのでした。

 

（おわり）