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2021年03月24日 06:56

(上)『ホタテと瓢箪』。その8。「ジャック白井」

 わたしはようやくマドリッド空港に降り立った。スペインに行こうと決めてから半年以上。大事な処で逡巡。グズグズしてしまう。今想うにReiに「サッポロに行ってイイ」なんて手紙を書く必要は無かったのだ。行きたいなら行く。行ってからそれからを考える。それがわたしらしい。でもその時は教師。さっさと辞めて学校や同僚に迷惑をかけ、心配顔の母親を差し置いて「ちょっこらサッポロに行って来る」とは言えなかった。
 わたしは『安定』を欲していない。けれども何かしらの『安心』は必要だ。その『安心』とは自分に留まらず、先ずは母親の心配を解きほぐし、友人たちに応援され、職場の同僚に迷惑をかけない手続きを終えた末にもたらされる。
『一緒にスペインに行きましょう』
 Reiにはもしかしての一分の望みが残っていた。それが一行の手紙。一分の望みが断たれないとわたしはマドリッド行きの片道航空券を購入できなかった。哀しいかなこれが在りのままのわたし。大切だったのは出発することだったのだ。出発してから気づく間抜けなわたし。マドリッド空港から一歩外に出た時の陽射しは衝撃だった。太陽が巨大。能登の輪島の海の夕陽と同じ大きさ。今は昼中なのに。スペインの人たちの多くは褐色系の肌。合点した。わたしの気分はスペインの太陽に照らされすっかり変わった。やっと来たマドリッド。念願のスペイン。さぁ行こう。先ずはブルネテへ。
                                            
 ブルネテはスペイン内戦の時にジャック白井が狙撃され亡くなった処。
 一九三七年七月十一日。
    Reiから聞いていた。                           
「高三の時の英語がジャック白井を追跡していた。それを知ったのが一〇年前。奴はジャック白井が函館生まれと知り追跡開始。しかし孤児同然だったジャック白井の出生年月日も両親も分からない。奴は一九〇七年の函館大火で両親が亡くなりジャック白井だけが生き残ったと推測。ジャック白井はNYで家族を持った時にも自分の生年月日と本名を記憶していなかった。それでジャック白井と名乗った。奴は孤児を引き取り育てていたカトリックの修道院を当たる。ここでも成果は上がらなかった。奴はめげなかった。NYに渡り足跡を追う。コックとして働いていたレストランをつき止めたり妻と子供友人たちと面会。国際旅団の義勇兵に共に参加していた老人とも接触。何故にジャック白井が義勇兵に志願したのかを探る。奴は追跡の一部始終を出版していた」
 Reiの話は何時もわたしを刺激する。
「戸籍謄本が無いとパスポートが発給されない。どうやってNYに辿り着いたのかしら」
 これが最初の疑問だった。
「恐らく密入国。不法移民としてのアメリカ滞在。就労ビザ無しでの労働。それでも雇用主に認められ市民権を取得した。アメリカは今よりもおおらかだった。豊かだった。モンロー主義を貫き戦争に加担せずして国力を増強。欧州は第一次大戦で疲弊。物資をアメリカに頼った。基軸通貨がポンドからドルに代わって久しい。慢性的な労働力不足が好景気のアメリカに在った。奴はジャック白井の参戦の真意を得られないまま稿を閉じていた」
「ジャック白井はどのようにしてNYに辿り着いたのだろう」
「分からない。本人も語っていない。語らないのは言えないか言いたくないかのどちらか。何故アメリカに行こうと決意したのかも分からない。スペイン内戦への参戦の動機も分からないんだ」
「ミステリアス」
「立ち寄った書店に平積みされていた本が眼に止まった。見覚えのある名前だった。履歴を読むと確かにまさしく高三の時の英語だった。俺は本を持ってレジに急いだ。ジャック白井は知っていた。函館生まれとは知らなかった。そして俺のいち時でも身近に居た英語が追跡している。俺は興奮」
「一気に読んだのでしょう」
「うん。奴が追跡しようと決めた心の動きが手に取るように分かった。それでまた興奮。その心の動きがジャック白井の心模様と重なった。追跡した結果の事実は不明でも伝わってきた」
「わたしにも伝わってくる。奴はジャック白井と同時代に生きていたら必ずや国際旅団に加わりスペイン内戦に参戦。ファシストと戦う。それを興奮して読むReiも同じ。わたしにはジャック白井と奴とReiが繋がる。間違っている…」
「何と正しい理解なんだ。奴の函館での追跡は成果を挙げられなかった。しかし追跡の過程で奴はジャック白井と心を通わせていたんだ。それが俺の心を震わせた」
「凄いね。読後感がすざまじい。質問。スペイン内戦は世界中の人たちを巻き込んだ。それは確か。ピカソも『ゲルニカ』を描いている。ファシストと戦おうとするジャック白井や奴やReiはスペイン内戦に何を感じ取り突き動かされたのかしら…」
「自由なのさ。ファシズムには自由が無いと世界中が知っていた。世界中のインテリや文化人と呼ばれる人たちも多く国際旅団に馳せ参じた。アンドレマルロー。へミングウエィ。ジョージオウエル。ジャック白井は知識人では無かった。けれど馳せ参じた。妻や子供たちをNYに残して。知識を持っているだけではダメ。今は行動すべき時だ。行動に移せない者は弱虫。イクジナシ。人間失格。自由は人間にとって何よりも大切。この想いは共通していたはず。現代からスペイン内戦を振り返ると『な~んだ』に満ち溢れている。それらを説明したくない。のぞみさんなら一日で『な~んだ』に辿り着く。当時はファシズムに対して自由で戦ったんだ」
「わたしなりに調べてみる。奴もReiも参戦したであろうスペイン内戦を。分からない処が出てきたら宜しくお願いします。でも分かったことがひとつ分かった。だからReiはスペインなんだ」
「その通りだよ。でもね。実はもうひとつあるんだ」
「えっ。なに。教えて。教えて」
「カタロニア。今の仕事と繋がっている。詳しくはゆっくり。せっかく金沢駅でおち合って能登まで来たんだ。楽しもうぜ。泳ごう」

 

 

 

 

 

 

 

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(上)『ホタテと瓢箪』。その7。「トラウマ」(上)。その9。『ブルネテで出会ったハポン』
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