小説好きのあなたに未発表の作品を届けたい。
支援総額
目標金額 1,100,000円
- 支援者
- 0人
- 募集終了日
- 2021年5月10日
(上)『ホタテと瓢箪』の抜粋。その30。「ニック」
眼にした様々な事象を在りのまま書くのでは意味が無い。ガイドマップの写真を眺めているのと同じになる。様々な事象には背景が在る。自然にしても歴史的建造物にしても人間にも。自然を描くのが最も難しい。自然を形成した背景を描き今に繫げたとしても人間はポツンと置かれているだけ。人間は自然に働きかけられない。せいぜい自然の景観を眺め何を感じ想うのか程度。自然と人間には隔たる距離が在る。距離を縮めようとすると陳腐の極まりに。ここで気づいた。わたしが書きたいのは自然では無い。人間なんだと。
歴史的建造物には建てた人の想いが在る。それを見つめている人にも想いが在る。建つまでの歴史と建ってからの歴史を共有する人たちの想いとは感慨。この感慨を書きたい。感慨を体験したわたしには書く前と書いている最中と書き上げた後に必ず変化が起こる。この変化も書かなければならない。いいえ。この変化こそがノンフクションの醍醐味と想う。わたしの心象が変化する心模様の連続にわたしの今が在る。わたしは書く前と書いている最中と書き終わった時とでは同じで在るはずが無い。同じならノンフィクションを書く意味が無いのだ。そして読む人にとっても面白くない。これは間違いの無い処だ。今のこの模索がノンフィクションの書き手の心得として成立しているかどうかは分からない。けれど支社長の期待には応えられる。人間を描くとは対象者と書き手のわたしの心模様なのだ。それが繋がった時には何かが生まれる。
岸壁に横づけされたプリマスからのフェリー。いよいよ巡礼の旅が始まる。三〇人の客が直ぐに識別できるよう『ホタテと瓢箪』を描いたプラカードを掲げ、皆が桟橋から降りて来るのを待ち受けた。わたしの周りに一人、また一人と集まってくる。大きなリュックとトレッキングシューズが客の目印。
一人、異彩を放つ男が降りてきた。菅笠で顔を識別できない。白衣の上下。白い手甲と脚絆。草鞋を履き白足袋。首からは紫の下地に金色の刺繍が入った輪袈裟。白の頭陀袋を肩に担いでいた。完璧なお遍路さん姿。ひょっとしてカメラマンかも…。
男は金剛杖に瓢箪を括りつけていた。桟橋から降りると背中を見せた。そこには両手大のホタテの貝殻がカラーでプリントされていた。彼は振り向くと右手でゆっくりと菅笠を上げた。やはりカメラマンだった。彼は菅笠の中から笑顔で近づいてきた。全員が集まった。わたしはひとり一人の名前を読み上げて確認。「沢田研一さん」と呼んだ時には客から「ニック」と拍手が起こった。
リターン
5,000円
応援してくれた方には直ちに感謝のメールを送らせてもらいます。
『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。
- 支援者
- 0人
- 在庫数
- 200
- 発送完了予定月
- 2021年7月
10,000円
10000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせてもらいます。
『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』(圧縮ワープロ原稿)を添付メールで送ります。
- 支援者
- 0人
- 在庫数
- 200
- 発送完了予定月
- 2021年7月
15,000円
15000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。
『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』をワープロ圧縮原稿を添付メールで送信します。
- 支援者
- 0人
- 在庫数
- 200
- 発送完了予定月
- 2021年7月
20,000円
20000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。
『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。次に『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』『』アンダルシアの木洩れ日』のワープロ圧縮原稿を添付メールで送ります。
- 支援者
- 0人
- 在庫数
- 200
- 発送完了予定月
- 2021年7月