アフリカの魅力伝える絵本をタンザニアの子どもたちに100冊贈りたい

ドドマの農牧民ゴゴの間では、薬草を中心にした呪術が活用されていますが、ニョタのメンバーにも地域で頼られている呪術師がいます。呪術というとおどろおどろしい印象を受けますが、現実の呪術師は伝統医療を行う人です。実際に薬効のある植物について豊かな知識と経験を持ち、人びとの日常の悩みや苦しみの相談にのってくれます。多くのゴゴの呪術師がそうであるように、夢でお告げをうけて呪術師になります。効用のある薬は、師匠の呪術師から教わるだけでなく、夢の中に出てくるそうです。

　Gさんは、少し前までマジェレコ村の一部でありながらかなり離れていたマンジランジに、1954年に生まれました。父方の祖母も呪術師でした。彼は、1977年に重病になったときに、ニョタのメンバーである親せきに、マリンバという楽器を弾いてもらいました。その音楽に踊り、その後、森に薬草を取りに行ったそうです。それから彼は、「精霊と踊り」、薬草を得ているといいます。

私が訪問したときも、「霊との踊り」に誘われました。ニョタのお客さんにみせる芸能とは一味違い、身体の芯に響きわたって吸い込まれるような音楽と踊りでした。絵本に出てくるニョタのふしぎな力は、そんなイメージからもきているのです。

　わたしも薬草の研究をしていたので、彼にもいくつか薬草を教えてもらいました。

• ムガンガマラ（Senna occidentalis）：日本語名はハブソウ、英

  

  語名はStinking weed。Gさんによると、根は男性の性力増強に効き、他の薬草と組み合わせると男性の性病にも効くらしいです。
• ミフク（Acacia polyacantha）：アカシアの一種です（右写真）。 根はひきつけに効くといいます。
• ムコレ（Grewia bicolor）：ゴゴになじみに深い木で、実を食べ、男性儀礼にも使用されています。Gさんは、根が女性特有の病気に効くといいます。
• ムタフタ（Grewia burttii）：これも実を果物として食べます。Gさんは、根が女性の不妊症に効くといいます。
• ムタンガ（Clerodendrum glabrum）：葉を腫物、根を畑や身体を守るために使用するといいます。

　Gさんは、男性と女性のリプロダクティブ・ヘルス関係の薬草が専門だそうです。どうりで、彼自身も8人と妻と42人の子どもがいるのも、自慢の薬を実証しているのでしょうか。

　わたしの薬草研究の一環として、ドドマで活用されている薬草を、写真付けで紹介している本も出しています。

91 Useful Plants in Deciduous Bushland and Thickets of the Dodoma Region

ご興味がありましたら、是非、手に取ってみてみてください。同じくタンザニアで、少し離れた南東部の薬草も聞き取りまとめています。109 Useful Plants in the Coastal Bushland of the Lindi Region, Southeast

　たくさんの呪術師や薬草師の話を聞き取りましたが、Gさんのストーリーは、本当に聞き入って、印象深かったです。