みなさんはホールボディカウンター(WBC)という測定器があることをご存知ですか?

それは、人の身体の中の放射能(セシウム134と137)を測る機械です。

「たらちね」では、2011年12月からWBCによる測定を行っています。

 

3・11の原発事故以前、私たちは人の身体の中に放射能が存在するようになることなど考えたこともありませんでした。しかし、あの日から、それが現実のことになりました。見えない・におわない・痛みを感じない低線量被曝環境の中で、多くの人々が、自分の身体、子どもの身体、家族の身体を心配し「たらちね」に測定に訪れました。

 

2011年の当時、受けに来たほとんどの「普通の人」の身体からバックグラウンド(そこの環境中の放射能)以上の数値が検出され、今現在の測定の様子と比較すると、「あの時は異常だったんだ。」と思います。

また、その結果を知って、人々は瞬時に悲しい決断をしました。

「放射能が身体にあるから、自分は孫を抱かないほうがいいんじゃないか。」「いつも一緒にいる犬と触れ合うと、犬の毛にまとわりついた放射能の塵を吸い込んでしまうから、犬に触ってはいけない。」「自分は原発の近くで被曝したから、娘のお産の手伝いにいかないほうがいいのでは。」など…

そういう不安や苦しい気持ちを、その場でみんなで話し合い、放射線による人体やまわりへの影響の知識を共有し、笑顔をとりもどして帰っていただく、「たらちね」では、そんな日々がくり返されました。

 

あれから5年です。

「ただちに健康への影響はない」という、「ただちに…」の時期が過ぎようとしています。

 

「たらちね」では、2013年3月から甲状腺検診プロジェクトを開始しています。協力してくださる医師のみなさまと一緒に、検診を受ける人々への丁寧で必要な情報の提供と、それが健康の維持につながることを目的としています。

(検診は福島県内全域及び近隣の汚染の深刻な場所で開催しています。)

検診センターの設立は、これまでの取り組みをさらに充実させ、「ただちに…」の時期が過ぎる今、これから必要とされる対応に備えるための施設です。

 

2012年の春に、WBCを家族で受けにきた消防士さんの言葉が私の心の中に残っています。「事故の時、僕らはとても線量の高い、厳しい現場に入りました。あの時、こういう場所がなかったから、だれにも放射能のことを相談できなくて、怖くて怖くて頭が狂いそうでした。あの時、こういう場所があったら、気持ちがぜんぜん違っていたと思います。」

 

本当に、あの時…「たらちね」があったら良かったと思っても、その時は戻ってきません。

私たちは、この5年間、人々の心や言葉から多くのことを学びました。

「ただちに…」が過ぎようとしている今、被曝という問題を考えて対応できる検診センターが必要だと思います。

放射能による健康被害は、長い長い時間を見つめなければわからないからです。

「学び」を生きたものにし、子どもたちの健康につなげるために、みなさまのお力が必要だと思います。

どうか、この検診センターの実現にご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

 

鈴木薫

 

 

 

 

 

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