入院や治療が必要な地域猫やネグレクトされた猫への御支援お願いします

葉桜に縁どられた堤。暖かい一日。

Kさんとふたり、「Aさんの家に行ってみよう。」と突然決まった。

 

Aさんは三十余年前、わたしたちNPOの前身となった「不幸なねこを一匹でも多く救う会」ないしは「Aグループ」の活動を始めたリーダーである。Kさんとわたしとの間では勝手にボス、と呼んでいる。

もしAさんが知るところとなれば、「やめてよ、ボスとか、リーダーだとか」と言うに違いない。

 

Aさんは、この地でねこ達をとことん守ってきた。30年前は「地域猫」などという言葉はなく、外で暮らすねこたちに対する理解もなく、いわゆる「野良猫」に対する社会の目は冷たかった。その中で、Aさんはかわいそうなねこが増えないように手弁当で避妊去勢手術を施し、餌やりをしてきた。少なからずの人々が文句を言ったり、暴言を吐いたりした。

しかしAさんは江戸っ子、喧嘩上等。威勢良く啖呵を切るし、負けちゃいない。

そう、ねこたちのために負けるわけにはいかなかった。いつも闘ってきた。

だからこの地域のねこたちは、そしてわたしたちの活動はいま現在もこうして生きている。

 

「あたいが塩まいてやるよ。」

「けつまくってやるよ。」

江戸っ子で口は悪いが心は温かかった。

 

ねこたちの頭数が増えて治療費にこと欠き、途方に暮れると、なぜかいつもAさんがポン、とお金を差し出してきた。

「あんたたち、困ってんだろ？」

でもそれはＡさんの年金だったはずであり、生活費だったはずである。

自分が独り占めにしていいはずの大切な虎の子を、ねこたちのために、この活動のために、差し出すのだ。少しのためらいもなく。

 

Aさんとわたしが以前初めて会ったとき、突然、係を命じられた。

「あんた、会計やってよ。Kちゃんは現場で忙しいからさ。」

あれ以来わたしは、会計はもちろん、総務も庶務も喜んで兼任する“なんでも課員”だ。思うにそれは、「この会のためなら頑張りたい」と心底願うからだ。

 

NPO法人化の話をした時や、クラウドファンデイングの話をした時は、「わたしに難しいことはわからないけどさ。」「若い人たちがやりたいようにやればいいのさ。」と任せてくれた。私たちが自由に新しいことに挑戦できるのは、Aさんに見守られている絶対の自信と安心感があるからだ。

 

わたしたちの活動はかかりつけの獣医さんなくては成り立たないが、その獣医さんとのつながりは、Aさん当時からの長きに渡る。

「先生は、あたいのこんな貧しい家まで来て、ねこを診てくれたこともあった。あの先生は本当にすごいよ。あんたたちも、先生には感謝の気持ちを忘れちゃいけないよ。」

 

そう、わたしたちはAさんの江戸前スピリッツを受け継いで、Aさんが長年育ててきたこの活動を続けてゆく。Aさんの熱いハートと流した涙を忘れない。

 

・・・・・・・

唐突ではありますが、私たちの会のことをより知っていただきたくて、メンバーＡさんの話をさせていただきました。わたしたちの現在の活動の礎を築いたのはＡさんであり、ねこを想うその一途な気持ちでした。

 

明日も病院に行って参ります。ねこたちに十分な治療を受けさせることができるのは皆様のご支援のおかげさまです。心よりお礼申し上げます。　

　　　　　　　　　　　前身・赤澤グループこと特定非営利活動法人ねこ辰一同