子どもには労働ではなく教育を。ACE SDGsプロジェクト2022

インドにおけるコロナ禍の子どもたち、家族、プロジェクトの様子をお伝えしていきます。

 

ブリッジスクールの休校と再開

 

ピース・インド プロジェクト*を実施しているインドでは、新型コロナウイルス感染拡大による2020年3月からのロックダウンの影響で、ブリッジスクール（プロジェクトで運営している、公立学校への就学を支援するための補習学校）の断続的な休校が続いていました。

 

プロジェクトの活動地はテランガナ州の農村部であり、ロックダウン直後から日雇い労働者や貧困層を中心に、多くの人々が厳しい生活を強いられていました。子どもたちを取り巻く環境、現地の課題も変化する中、プロジェクト実施方法も試行錯誤を重ねてきました。

 

2021年3月に子どもの保護者たちに聞き取りをしたところ、「休校になってから子どもたちは文字の読み方や書き方を忘れがちになっている」「起きる時間など生活のリズムが乱れている」など子どもを心配する声が聞こえてきていました。

 

また、「日中子どもだけで家に残していくのが不安なので畑仕事に連れていっていて、感染が心配」と話す保護者も多く、仕事場に子どもが行くことは労働につながるリスクがあるため、引き続き防止を働きかけていました。

 

しかし、2021年は雨が少なかった影響で、繁忙期である種まきの時期が例年より遅く8月末にずれ込み、この時期が学校閉鎖と重なっていたため、学校に通えない子どもたち6人がコットン畑で児童労働に従事していたことが判明しました。

 

この子どもたちと家族への働きかけを行い、子どもたちはブリッジスクールの再開後に学校に戻ってきましたが、コロナ禍における児童労働の増加に対する懸念が現実となり、一層の働きかけと親の収入安定の重要性が浮き彫りとなりました。

 

ブリッジスクール休校中に労働に戻らなかった子どもたちの大半も、村にインターネットが行き届いていないため、政府のオンライン授業にアクセスできませんでした。そのため現地スタッフが家庭学習キットを配布したり、地域住民と協力して家庭訪問を続け、学習支援や精神面のフォローを行うなど、子どもたちが児童労働に戻らず学習を続けられるように活動してきました。

 

また、食料の確保も大切であるため、政府からの支援を受けられなかった人々や、家族の人数が多く政府からの支援物資では足りなかった世帯を特定し、食料セットの配布支援も行いました。

 

 

 

そして2021年9月、公立学校の再開に伴い、ブリッジスクールも約1年半ぶりに再開することができました。

 

スクール再開後の子どもたちの声です。

 

 

 

 

ブリッジスクールが再開したいま、休校中に教育機会を失った子どもたちへのサポートはとても大切です。ブリッジスクールは子どもたちの学び・交流の場であると同時に、公立学校への就学支援の場でもあります。

 

私たちACEは、学校の閉鎖によって学習進度が遅れてしまった子どもたちへの効果的な教育支援の働きかけを、他団体とも連携しながら進めていきたいと思っています。

 

 

そのほかの教育・就労支援

 

ピース・インド プロジェクトでは、他にも子どもたちの教育、将来の就労のための支援を行っています。

 

ひとつは「子どもクラブ」の運営です。

 

子どもクラブは活動地の村に住む子どもたちによる活動で、子どもたち自身が直面する問題点や課題、他の子どもたちが抱える問題への解決策などを自分たちで考えるミーティングを月に1回開催しています。

 

子どもクラブには、学校に通っている子ども、通っていない子ども、学校からドロップアウトしてしまった子どもあわせて約90人が参加し、それぞれの立場から自分の想いや意見を伝え、お互いに学校に行けるように話し合います。

 

特に、長期にわたる休校期間中に学校をドロップアウトしてしまった子どもは、子どもクラブが再開したことでその問題点を話し合うことができ、再び学校に通う意欲が生まれたようです。おとなによる個別対応だけでなく、子どもたち同士の交流による心理的サポートも可能となり、自信をもって意見を言ったり、自分の意志を持つ子どもが増えたことは、プロジェクトにおける大きな前進です。

 

もうひとつは職業訓練センターの運営です。

 

義務教育を受けていない15-17歳の女の子を対象とした職業訓練センターの運営は、弱い立場におかれやすい早熟期の女の子の経済的な自立および精神的な支援を目的とした、本プロジェクトの大切な活動の一つです。

 

公立学校やブリッジスクールの再開より一足早い2021年8月、感染対策を十分に講じたうえで、縫製技術の職業訓練センターが再開され、3つの村から20人の女の子が通い始めました。

 

訓練センターに通っている女の子たちの声です。

 

 

 

ACEでは引き続き現地パートナーと協力し、子どもたちの将来の選択肢を広げる活動を続けていきます。

 

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*ピース・インド プロジェクトとは

 

インド国内でコットン生産、特にコットンの種子栽培が最も盛んなテランガナ州ジョグランマ・ガドワル県の3つの村で、危険な労働にさらされている子どもたちを守り教育を支援するため、現地パートナーNGOとともに活動を行っています。

 

現在のプロジェクトは2019年4月より開始しており、それ以前の2010年～2019年に活動していた地域では、児童労働をしていた子ども794人が学校へ行くようになり、3つの村で「児童労働のない村」を実現、住民自身で児童労働のない状態を維持しています。

 

主な活動内容

✓児童労働や子どもの教育に関する意識啓発

✓児童労働の見回り活動や家庭訪問による親の説得

✓「ブリッジスクール」の運営

✓学校環境の改善

✓女の子の職業訓練とエンパワーメント

✓女性（お母さん）の収入向上