京都駅周辺における「文化芸術都市・京都」の新たな文化ゾーンの創出に向けた土地計画の見直し素案についての意見書

 

一般社団法人アーツシード京都

代表理事 吾郷 賢(THEATRE E9 KYOTO芸術監督・演出家)

理事 茂山あきら(同館長 狂言師)

理事 やなぎみわ(同副館長 現代美術作家・演出家)

理事 蔭山陽太(同支配人 元ロームシアター京都支配人)

理事 關秀哉(同プロダクションマネージャー 株式会社流代表取締役)

理事 浜村修司(同テクニカルマネージャー 舞台監督)

 

 

 

 

第1 「THEATRE E9 KYOTO」について

当劇場は、平成27年から平成29年にかけて、京都市内で5つの小劇場が連鎖的に閉館したことを受けて、本年6月、京都市南区東九条南河原町に開館したおよそ100席の民間小劇場です。プロジェクトの始動から、2年以上をかけて、様々な交流、ws、公演事業を通じて関係性を育み、2度の公聴会でのご承認を経て、劇場建設の特例許可を得ました。

平成29年6月に、劇場建設プロジェクトを公表し開館に至るまで、市民、企業の皆様から1億円に近い寄付金・協賛金のご支援を頂き、更に、融資、出資、自己資金などを合わせておよそ2億円に近く総事業費をかけ、設立しました。このように、当劇場は、市民の皆様に支えられて成り立っております。

劇場入り口には、株式会社ラ・ヒマワリが運営するカフェ「ODASHI」と2階にはコワーキングスペース「コラボオフィスE9」が併設されており、アーティストや観劇者のほか、ビジネスパーソンも日常的に通う複合施設です。

今回の素案策定の背景として、京都市立芸術大学の移転と共に我々の劇場の開場についても記載されています。その意味でも、我々としては、今回の素案は無視できませんので、意見を述べさせていただきます。

 

第2 平成29年3月30日付京都駅東南部エリア活性化方針の趣旨には賛同すること

京都市は、上記活性化方針において、目指すべき将来像として、以下の4つをあげています。

  •  文化芸術を基軸に、伝統産業、観光、教育などのあらゆる分野と融合することにより、新しい価値を創造し、世界中の人々を惹きつけ訪れたくなるまち
  •  京都の玄関口にふさわしい魅力的な機能が集積するまち
  •  若者を中心に、多くの人が住み、学び、働き、交流する活気のあるまち
  •  高齢者や子ども、障害のある人、国籍や文化的背景の異なる人など、様々な人が互いの多様性を認め合い、心豊かに住み続けられるまち

我々としては、上記将来像については、賛同しており、京都市の施策に期待しておりました。

それが、今回の素案では、上記の将来像が全く反映されていないばかりか、活性化方針の中核を担うはずであった高齢者、若者、芸術家等が住みづらくなるとともに、地域で育まれた多文化共生が損なわれかねない為、今回の素案については、憂慮しています。従いまして、地域住民や、地域の芸術関係者と継続的な協議の場を設けて、広く市民が納得できる計画となるよう強く要求します。

 

第3 素案について

1 地元のコンセンサスが得られていないこと
今回の素案は、地元の意見を充分反映することなく、作成されています。そのことは先般9月4日、6日に行われた説明会での紛糾状況からも明らかです。地元の意見を十分に聞き、議論をしたうえで、まちづくりを進めていただきたいです。

2 地元の人々の生活が損なわれかねないこと
素案では、地元の人々の生活について、全く考慮された形跡がありません。本来優先すべき地元の人々の生活を無視して、都市計画の変更を行うことは、上記の京都市が述べる将来像の③と④と真っ向から反することになると思います。
我々は、人々の生活があってこその芸術で、地元の人に受け入れられた芸術こそが意味があると考えております。上から押しつけられた芸術では、地域に根付いたカルチャーや芸術を破壊しかねないと懸念しております。

3 市場のニーズを検討できているとは思えないこと
素案において、河原町通以東エリアについては、「文化芸術の創造発信のために必要な用途」の場合、容積率を400%にし、当該用途については、劇場、映画館、美術館、博物館等の文化施設を想定しています。
しかし、文化施設を維持・運営していくことは非常に難しく、京都市が何の施策もなく、単に都市計画を変更することで、これらの施設が集まってくると考えているのであれば、非常に甘いと思います。
我々が経営している劇場を例にすると、劇場は、収容人数が1800~2000人以上できないとペイできないと言われていますので、民間が設立するとなると、大型の劇場にならざるをえないと思います。しかし、大型劇場については、既存の劇場がありますので(京都市には、約1000席以上の劇場が既に6つ、500席前後の劇場が8つあります。)、これ以上のニーズがあるのか疑問と言わざるをえません。
もっとも、たとえば、大きな商業施設のほんの一部分が文化施設といった、文化施設に名を借りた商業施設であれば、運営は可能かと思いますが、それでは、将来像に沿った施設と言えるのか疑問です。

4 民間任せの政策としか思えないこと
京都市は、河原町通以東エリアに、広大な空き地の市有地を有しています。しかし、これらの市有地についての活用策について、全く触れることなく、今回の素案をだされています。しかし、せっかく京都市がこのエリアに広大な市有地を有しているのですから、市が率先して、まずは市有地から、活性化方針の将来像に沿う活用方法を見いだし、当該場所を将来像の拠点の場とすべきです。
都市計画だけ変更して、あとは民間任せというのであれば、到底将来像に沿った地域などできるはずはありません。京都市のこのような態度は、あまりに無責任ではないでしょうか。

 

第4 市への要望

1 活性化方針に沿った都市計画していただきたいこと
上記の通り、今回の素案は、活性化方針に沿ったものとは思えません。上記活性化方針 に沿った都市計画を、京都市が責任をもって施行していただきたくよう要望いたします。

2 地元のコンセンサスを充分とっていただきたいこと
地元の意見を十分に反映し、まちづくりをすすめていただきたくよう要望します。改めて、地元と協議する場を設け、充分なコンセンサスをとりながら、じっくりと施策をすすめていただきたいです。

3 地元の住民の生活および生活文化の質の向上をまずは考えていただきたいこと
地元の住民の生活および生活文化の質の向上に貢献する事業者の誘致を最優先していただきたいです。例えば、食料品店、薬局など、人が住まう町に必要な事業者を優先すべきではないでしょうか。
そして、活性化方針にも記載されている高齢者、若者、芸術家など経済的基盤の弱いと思われる人が安心して住むことできる環境整備が必要だと思います。今回の素案が施行されると、地価が高騰することになり、活性化方針の中核を担うはずであった高齢者、若者、芸術家等がまちから消えてしまうのではないかと、強く危惧しています。もっとも、地価の高騰は、現在においても既に始まっている現象ではあります。これらの人々や市民団体、文化関連機関に対する積極的なサポートをしていただきたいです。
上記サポートを具体化するための制度(基金など)または組織を創設したり、それらを実現するための財源を確保するために、規制緩和の恩恵を受ける営利事業者に対しては、売上の一部を、上記制度の創設と運営にあてる等の方法があってもいいと思います。

4 きめ細かい都市計画を策定していただきたいこと
今回の素案では、河原町以東エリアと以西エリアという大きなエリアについて、一律に都市計画が見直されています。
しかし、あまりに規模が広すぎます。エリア全体としては、現在の用途区域のままにして、一部のエリアについて、地区計画等を利用して規制緩和する方法もあるのではないでしょうか。例えば、京都市所有の空き地の一部については、市営住宅等を作り、スーパー等も誘致する、別の空き地では、規制緩和を行い、京都市が主導して、芸術文化のための施設を設備したり、芸術家が移住できるような共同住宅を作る。そのようなきめ細かい都市計画こそ、上記将来像につながると思います。

 

第5 最後に

私達は、当該活性化方針の趣旨には賛同しています。しかしながら、その方針を具体化する手法として、今回の素案は、妥当ではないと考えています。素案の再考とスケジュールの見直しを求めます。地域住民、地域の芸術に沿った、都市計画をすすめていただくことを何より望みます。

以上

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