葦の芸術原野祭を終えて

こんにちは。加賀田です。

葦の芸術原野祭、無事に閉幕いたしました。ご来場いただいた皆様、ご支援いただいた皆様、心から感謝申し上げます。

 

 

現在アーカイブブック制作に向けた撮影や会場の片付けを一通り終え、「おもいでうろうろプロジェクト」でおあずかりしたおもいで達も多くが持ち主のもとへ戻って行きました。私は会期中ほぼ毎日会場にいて、日々起こる出来事や往来するおもいでたちに出会いました。

 

 

「歴史」というととても大きくてどこか自分と関係のない話のように感じますが、もちろんそのおおきな歴史からは溢れてのりきらない様々な存在がいて、それはひとりひとり個別で具体的な経験であり、そこから斜里の「歴史」が編み出されているのだと感じます。今回のプロジェクトを通してその小さくも大切な歴史の断片を拾いあつめることができたらいいなあと思っていました。

 

本棚に並べられたおもいでたちは、旧庁舎でのおもいでから、斜里、日本全国、もしくは海外でのおもいでと様々な時代、様々な土地のおもいでたちです。どこかでだれかが出会った個人的なおもいでが斜里町旧庁舎を接点に交わり、また他のおもいでや誰かの体験と重なり合っていく場面を私はずっと間近で見ていました。

 

芸術祭会期中はこの建物に関する記憶も多く集まりました。役場時代は２階が議場でしたので、そこの議会で議員として座っていた方や、新卒で初めての面接に来たという方、授業料を払いに来ていたという方や、中には天然痘の予防注射会場がこの建物で、幼い頃注射が怖くて逃げ回ったという方もいました。資料館時代は、畑で拾った石器を持って行き学芸員さんに同定してもらっていたという方や、図書館時代に夏休みの宿題をしに来ていたり、バスを待つ時間つぶしに図書館にいた方などなど、本当に様々な時代に、様々な状況で、人々が行き来していたようです。建物自体がおもいでであふれかえっていて、文字通りおもいでがうろうろしていました。

どのような出来事が起こったのかについては、本クラウドファンディングのリターン品である「おもいでうろうろ通信」にて詳しく綴ろうと思います。

 

持ち寄っていただいたおもいでの多くは、持ち主の方に会場へ引き取りに来ていただきました。急遽3日早い閉幕となり、オンライン配信でクロージングイベントを行ったとはいえ、来てくださった多くの方々にそのオンライン配信が届かないことをとてももどかしく思っていましたので、おもいでを引き取りに来ていただいた地域の方々と、オンライン配信で流したドキュメント映像などを見ながら芸術祭を振り返ることができました。

 

 

人々やおもいでたちが徐々にいなくなりまたガランとした空間に戻った旧庁舎は、一晩で見事な蜘蛛の巣が制作されていたり、本棚にうっすらとほこりがたまっていました。

 

そしてオンラインクロージング配信の翌々日、羅臼岳に登ってきました。今まで羅臼岳に登ったことがなかったのですが、旧庁舎の窓から遠くにうっすらとそびえる半島の知床連山を毎日眺めていると、あの山はどんな山であのてっぺんからはどんな景色が見えるんだろうと思って、芸術祭終了後にふと登ってみようと思いつきました。結局羅臼平から曇ってしまい頂上からはなにも見えませんでしたが、毎日遠くにうっすらと見えていた山の存在を体を以って感じました。

 

これからアーカイブブック制作、また第2回葦の芸術原野祭に向けてまた実行委員メンバーみんなで邁進します。楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。