カンボジアの青年作家達を日本での記念絵画展に連れて行きたい！

肉親との別れ。自分の場所を見つけるために勉学に励む日々

　幼くして母を亡くし、その後父が病気になったので、小学生の時にシェムリアップに住む叔母に引き取られて、叔母家族との生活が始まりました。 引き取られて、暫くの間は「どうしたら家に帰ることができるのか」と悩んでいましたが、幼すぎて自分では何もすることができずにいました。その頃から母の死を受け入れ、叔母を「母」と呼ぶように決めたのだそうです。 でも、いつの日か父は迎えに来てくれると信じて日々を送っていましたが、その父は再婚して新たな家族を作り、また生活も困窮していたため、父のもとに帰ることもできないまま叔母の家で成長しました。

　叔母の家では、従姉妹の子どもの面倒や家事などの仕事に追われ、また家の中には自分の居場所もなく、肩身の狭い思いをしながらの生活でした。このような環境にありながらも、プノンペンの大学への進学を希望し猛勉強は続けました。奨学金を受けながらの大学での生活を夢見ていましたが、わずかに力が足りずに進学することは叶いませんでした。それでも将来を諦めず、独学で英語や興味のあるエンジニアの勉強をしていたのだそうです。

美術スクールとの出会いによって、夢の実現に一歩進む

　小さな美術スクールの存在は、友人のハイ・チューンから聞きました。それまで、絵を描いた経験はありませんでしたが、ハイの勧めもあって学校に通うようになりました。一緒にバスケットボールをしていたクンティア・リムもここの生徒と知ったのだそうです。　笠原や先輩アーティストからも熱心に学ぶようになり、はじめの頃は、人物、鳥、花などの写真模写などを描いていましたが、現在は、クンティア・リムやソッペア・ドーンと一緒に、村の小学校、NGOの子ども達の絵の指導にあたるまでに成長しました。

彼の学ぶ意欲の高さと子どもの面倒をよく見て、気配りができる性格を評価され、笠原の友人から大学の奨学金を得て、念願のエンジニアの勉強ができる大学に通うことができるようになりました。また、笠原の生活援助を受け、現在はアパートで一人暮らしをしています。 大学での成績も優秀で、大学3年の時、成績2位の表彰を受けました。 趣味はバスケットボールと科学の実験。 尊敬する人は、アインシュタイン博士。 将来は、エンジニアと画家の両立を目指しています。

また、長年疎遠だった父とも和解し、最近は、父の新しい家族にも会いに行くようになり、休みには異母姉妹に絵を教えることを楽しみにしているようです。

バンデットの絵画作品は、こちらからご覧いただけます。Bandeth Art