応用生命科学科 助教 島田 貴士

 

 現在,世界人口は75億人を超えました.1950年の世界人口が25億人でしたので,この70年の間に人口が3倍に増えたことになります.現在も人口は増え続けており,世界的な食糧危機はもう目前に迫っています.深刻な食糧危機を乗り越えるために,重要な食糧資源である植物の研究は欠かせません.
しかし,私たち人類は植物のことをきちんと理解しているでしょうか?例えば,植物由来の食品として重要な菜種油を考えてみましょう.菜種油はアブラナの種の細胞の中に,油滴として貯められています.種がこの油滴をうまく作れないと,種の発芽が悪くなったり,油の生産量が下がったりと,様々な悪影響が現れます.しかし,植物が油を作るメカニズムは,わかっていないことが非常に多くあります.
 
 私たちの研究室では,油滴がどのようにして作られるのかを研究することによって,油の生産量の向上を目指しています.油滴は非常に小さく,直径は1ミリの1000分の1しかありません.そのため,油滴の観察には顕微鏡を使う必要があります.一般的な光学顕微鏡から,とても小さな構造が観察できる電子顕微鏡,特定の波長の光のみを検出できる蛍光顕微鏡など,様々な顕微鏡を使うことで,油滴が作られるメカニズムを明らかにする研究を行っています.
 私たちの最新の研究では,植物の葉に油を貯める研究を行っています.一般的に,油の含有量は種で非常に多くなっています.しかし,長い育種の歴史で,油の含有量が多い種を選抜してきたため,これ以上,種で油の含有量を増やすのは難しくなってきています.一方,葉は油の含有量が少ないために,油を貯める「空きスペース」がたくさん余っていると考えられます.また,バイオ燃料の原料になる油を作る場合,食糧となる種の油を使うのは得策ではありません.逆に,捨ててしまう葉から油をとれば,効率よく資源を使うことができます.こういったことから,葉に油を貯める研究は,ここ最近,世界的に注目を集めています.
 私たちは,HiSE1というタンパク質の機能を失った植物では,葉に油滴をたくさん作ることを発見しました.HiSE1は,油の合成を統率する重要なタンパク質であることがわかってきました.HiSE1の研究をすすめることで,葉に油を貯めるメカニズムを明らかにし,油の生産性を高めた高機能植物を作ることを目指しています.
 

 

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