そして佐吉はこの事件や愛吉のことを多くの人に伝え続けたいと、妻のみすずによくこんな話をしていた。
 「最近ゴジラっていう映画ができただけぇンな、これがビキニ環礁の水爆実験で放射能を浴びて怪獣がどでっかくなって、マーシャル諸島から海を歩いて渡って日本を襲うって話だでぇ。その放射能を浴びたゴジラが、俺達(おら)とソックリなような気がするだけぇンな。せぇだって俺達(おらん)原子まぐろを持ってきてばら撒いて、日本中を騒がせて漁業を壊滅状態にしちまって、町はパニックになっちまっていろんなもんをダメにしちまうだぞっ。だけん、そんなな放射能なんてねえっけ事にしぜぇ、そんなな原子怪獣がいちゃあいかんだと、自衛隊や国民が頑張ってごじらを大人しくさせようとして、大砲はバンバン撃つは、機関銃のたまは雨あられのように降るはで、ますますゴジラは原子の火を吹いて暴れまわるってぇ訳だぁえ。情けねえけぇが、なんか俺(おら)と似てねぇかなぁ。もしかしたらそうこうしてる内に、放射能を浴びたゴジラみてぇののん、他にも沢山(たぁくさん)出てきて、地球のあっちこっちに上陸したりするかもしんねぇな。せぃでな、どうせならゴジラにも俺(おらん)見てぇに焼津の港から上陸してもらって、そこに上陸記念のどでけぇゴジラのモニュメントを作って、そん中に原水爆記念館を作りゃええじゃん。最近ビキニ環礁の水爆実験に衝撃を受けて、岡本太郎ってやつが「燃える人」っていう油絵を描(けぇ)たらしいだけぇが、それも飾りゃえぇじゃん。もっとデッケエやつンありゃあそれも一緒にな。ゴジラのモニュメントは向かいの伊豆半島からも良ぉく見え(めぇ)るし、富士山からも見え(めぇ)てえぇー目印にもなるぞっ。それを見てりやぁー、これっから先も俺(おらん)ことも忘れねえらし、核兵器なんていらねぇだっていつも思い出してくれるら。新しい怪獣が出てきたら、そいつのどでけぇ模型も作って浜に並べりやぁええら。ゴジラ街道なんてぇのを作ったりして観光客を集めりやぁ一石二鳥だらし、沢山(たぁくさん)の人に何が有ったか何時までも思い出(だ)いて貰えるし、考えても貰えるらよ。何時か誰かン本当にそんなのを作るやつがいるとええけんなぁ」。
 こうしてそんな夢のような事を妻のみすずによく話ていた佐吉も、放射能による肝臓機能障害や愛吉が亡くなった時と同じように、背中に高圧電流が走るような激痛に悩まされ、新たな年の祭りを観ることなく、ついに佐吉も帰らぬ人となった・・・・続く・・・・

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