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被災した人たちへ、楽しい思い出を写真集にして配布したい

智田邦徳

智田邦徳

被災した人たちへ、楽しい思い出を写真集にして配布したい
支援総額
692,000

目標 610,000円

支援者
61人
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終了しました
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3お気に入り登録3人がお気に入りしています

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2015年11月16日 19:43

「喜びも悲しみも幾歳月」若山彰

 「その人はまるで中国の仙人みたいに白い髪と髭を伸ばした背の高い人で、とても面白い恰好をしていました」

 

 壁一面に手芸教室で作ったふくろうのマスコットが飾ってある仮設住宅談話室で、お茶を飲みながら一人の女性が、突然私に向かって語ってくれたお話です。

 

「面白い恰好というと」

 

「男の人なのにスカートを履いていました。仕事はお菓子の行商をしていたけど、暇になると海の一望できる高台に登ってよく編み物をして。できあがると、近所の子供たちにあげていました。昭和三十年代の思い出」
 
 私はその話を聞きながら、どういう外見だったのか‥をうまく想像しようと頭をフル回転させていました。なかなかうまく造形できなかったので、実在の俳優でキャスティングしてみたところ、田中泯がピッタリでした。

 

「もともと、土地の方では無かったんでしょうかねえ」

 

「そうですね、聞いた話によると、その方は元々は九州地方のご出身だったようです。流れ着いた三陸の町でお嫁さんをもらって、お子さんも出来て、何度か商売は始めたけれどなかなかうまくいかなかったみたい。私が実際におぼえているのは、アイスキャンデーを売っていたことかな?当時で一本十円でした。でも、あまり商売ッケが無くて、キャンデー買った子にはおまけで飴をくれたりしたの」

 

 平成の現代でさえ、LGBTなど自分と違う性癖や性愛を持つ人への風当たりはそれほど弱まっていないというのに、六十年近く前の田舎で男性がスカートを履いたり、長髪にしたりと、目立ったでしょうに‥彼はここで生きにくくはなかったのかしら?と私は思いました。しかし、目の前にいる女性たちは嘲るでもなく、嫌悪するでもなく、どことなく懐かしそうに、愛おしそうに彼の思い出を語っているのでした。

 

「あの人、どこに住んでいたのだったかしらね、あうぇいこだった?」

 

 耳慣れない単語が出てきて、私は身を乗り出して質問しました。すると、全員が顔を見合わせて笑いながら答えてくれました。

 

「私たちの住んでいた地区には“あうぇいこ”と呼ばれる小さな路地があったの」

 

「あうぇいこ、ですか?」

 

「そう。語源は何かしらね‥淡い、という意味かしら。英語かしら」

 

 そこから、どんどん話が弾み、津波前の集落の細かい暮らしぶりや店などの場所、ご近所さんの思い出話が次々と供されました。

 

「おやつが無い時代だったからね、良く学校帰りにそこら辺に生えている草をもいで、齧っていたのよ」

 

「そうそう、あれ何て言ったかしら」

 

「すっけんこ!」

 

「すっけんこ!そうそう、あまり美味しくなかったわね」

 

 他にも、町中にあった洋装店やパーマ屋、飲食店の思い出話などが出ました。女性ばかりなので、お洒落の話題が一番盛り上がるようでした。また、この集落にはいくつか映画館もあったそうです。近所の人には割引券や試写のチケットが配布されて、無料で観る機会も多かったとのことでした。

 

「ヘップバーン、良かったわね。可愛くて。スカーフの巻き方も流行ったわ」

 

「アリアーヌっていう登場人物の、あれは何て映画だったかしら」

 

「真昼の情事じゃない?」

 

 一瞬、沈黙の後に大声で皆さんが笑い、腹を抱えて互いの背中を叩きました。

 

「昼下がりの情事と、真昼の決闘が混ざってんじゃない!!ああ、おかしい!!」

 

 私は映画の主題歌をいくつかキーボードで弾きながら、皆さんに質問をぶつけてみました。

 

「邦画がかかっていた映画館は無かったんでしょうか」

 

「あったわよ、記憶にあるのは“喜びも悲しみも幾歳月”ね。高峰秀子が出ていたの」

 

 この映画の主題歌は、仮設を巡回している時に何度もリクエストが出て、ものすごい人気だなあといつも思っていました。

 

「そりゃそうよ、ここの皆はご当地ソングだと思っているもの」

 

「この町が舞台になったお話なんですね」

 

「そう、原作となった灯台守の奥さんが書いた手記に、市内の半島にある灯台が出てくるの。残念ながら映画ではカットされたエピソードなんだけどね、でも原作者の娘さんが同じ町に住んでいるから、とても馴染み深いのよ」

 

 そして最後に、全員で「喜びも悲しみも幾歳月」を歌いました。この日は皆さん、最後まで笑いが絶えない一時間を過ごしました。音楽療法の活動なのに、歌は一曲か二曲しか歌いませんでしたが、歌よりも皆さんの思い出話がもっと重要な意味を持っていた一時間でした。

 

 皆さんがずっと思い描いていたのは、小さい頃、若い頃に家族や友人たちと過ごした大切な故郷の姿でした。東日本大震災の津波で、すっかり姿を変えてしまった故郷は、こうやって集まり、笑いながらお互いの記憶を寄せ合った時に、ありありと蘇って、全員の心を和ませているのでした。
 

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リターン

3,000

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①お礼状(ポストカード)

支援者
31人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年2月

10,000

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①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

支援者
20人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年2月

30,000

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①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③「三陸ことば絵本」1冊

④オリジナルエコバッグ1枚

⑤当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

⑥仮設住民がヘンプもしくは刺繍糸で編んだミサンガ、フクロウなどのマスコット、布製小物など5点セット
(色や模様、種類は在庫により変更がございます、あらかじめご了承ください。)

支援者
8人
在庫数
2
発送予定
2016年2月

50,000

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①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③「三陸ことば絵本」1冊

④オリジナルエコバッグ1枚

⑤当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

⑥仮設住民がヘンプもしくは刺繍糸で編んだミサンガ、フクロウなどのマスコット、布製小物など5点セット
(色や模様、種類は在庫により変更がございます、あらかじめご了承ください。)


⑦仮設住民と一緒に「歌と体操のサロン」体験にご招待
(2016年9月まで有効、現地までの交通費は自己負担となります)

支援者
3人
在庫数
完売
発送予定
2016年2月

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