Fermentators week が行われる秋田県湯沢市周辺には、自らの豊かな感性と知恵を地域のものごとと軽やかに掛け合わせ、おもしろく、しなやかに暮らす Fermentators(個性を醸す人)がいます。
 
Fermentatorsの言葉から見えてくる、この土地の美しさ、厳しさ、無限の奥行き。育まれた食文化の圧倒的な豊かさ、美味しさ。地域への想いと葛藤。
 
こんな Fermentators がいるまちってどんなところなんだろうと気になり始めたあなたは、もう発酵の虜!


Fermentators vol.12  木村吉伸さん / 雄勝野きむらや 代表取締役
 
江戸時代に開山され、最盛期には東洋一の銀採掘量を誇った院内銀山。全国から多くの人、物資、文化がこの地に集まっていたと言われています。

人が集まれば、食べ物、お酒がどんどん消費され、食文化が豊かに育つ。秋田の漬物文化もその1つと言えるかもしれません。

今回ご紹介する Fermentator は、湯沢市の中でもとくに雪深い院内地域で、いぶりがっこをはじめとする漬物文化の多様性を打ち出す”土着の漬物屋”です。
 


雄勝野きむらや 代表取締役 木村吉伸(きむら・よしのぶ)さん
1973年、湯沢市院内(旧雄勝町)にある昭和38年創業の漬物屋「雄勝野きむらや」の長男として生まれる。高校卒業後は、東京の大学に進学。9年間の製薬会社での勤務を経て、2005年に雄勝野きむらやに入社。現在3代目として代表を務める。


 
ー雄勝野きむらやさんは、秋田県内でも数少ない”漬物屋”とのことですが、どのような会社なのでしょう?
 
木村:
きむらやは、いぶりがっこをはじめとする”秋田の多様な漬物”を造り伝える漬物屋です。 昭和38年創業で、秋田では最も古い漬物屋になります。

 

秋田は昔から家々で漬物を作る文化があるので、”買う”という概念がなく、漬物屋があまり発展してきませんでした。そこで、一般家庭ではなかなかできない長期にわたる燻製や熟成を生業とし、真空パックにしてお土産として選べるようにするなど、昔ながらの製法と無添加にこだわりながらも”秋田漬物“として新しい価値を付加していくようなことをやってきました。

 
ここは秋田の中でも有数の豪雪地帯で、降雪期間も長い。なかなか野菜を天日干しにできないので、囲炉裏がある屋内に大根を紐で編んで吊るし、囲炉裏火と煙で乾燥させて漬物にしたのがいぶりがっこの起源です。当時はこれといった呼び名は無く、この地方で「でご漬け(大根漬け)」と言えばこの囲炉裏干しの沢庵漬けのことでした。
 
昭和30~40年代にかけて家屋の囲炉裏は薪ストーブに変わり、流通が発達して美味しい天日干しの沢庵漬けが買えるようになると、囲炉裏干しの「でご漬け」造りは途絶えていきました。しかし、それと同時に「あのいぶくせーやつも良がった」と、独特な味を懐かしむ声も聞こえてくるようになったんです。そこで、地元の漬物屋として燻製乾燥と熟成をヒントに試行錯誤して商品化したものが、現在のいぶりがっこです。
 
もちろん秋田には、他にも多種多様な漬物があります。秋田の食べ物にはまだまだ可能性があるということを、漬物を通して打ち出したいと思っているので、うちは”いぶりがっこ屋”ではなく、あくまで”漬物屋”なんですよ。

 

 
ーまさに地域に根ざす土着の漬物屋ですね。漬物屋として地域に関わる中で、何か見えてくることはありますか?
 
木村:
発酵をはじめとするこの地域の食文化は、これぞ秋田!と言える文化だなあと思います。いぶりがっこのような荒削りで原始的なものから、漬物のお寿司、お菓子のような超甘口の漬物まで、繊細で独特な味わいを持つ漬物文化があります。ここは院内銀山の繁栄による人々の交流を背景に、独自の進化を遂げた”発酵ガラパゴス”のまちですよ。
 
実は今、いぶりがっこに興味を持って海外から取材や見学に来られる方が最近増えています。とくにヨーロッパの方々はこの燻製の香りを好まれるようですし、韓国、台湾、シンガポールなどのアジアの方も来られます。また、都市圏の方々にとっては、秋田の独特な部分…素朴で牧歌的と言いますか、”じゃんごくさい、田舎くさい、洗練されていないところ“こそが秋田の魅力として映るのではないでしょうか。いぶりがっこはその意味で、秋田のイメージとぴったり重なっているように思います。
 
僕自身は、院内の特徴的で多様な漬物文化に可能性を感じているので、商売を通して地域の食文化に光をあてられるように、また、希少な風味や製法を絶やさないように、造り継いでいけたらと思っています。ただ、最近はいぶりがっこ屋さんばかりが増えて、多様な秋田漬物を造る漬物屋さんが減ってしまったことがとても寂しいです。 きむらやとして地域の魅力をお客様にしっかり伝え、やりがいのある楽しい商売を実践していきたいと考えています。
 
厳しい過疎化と豪雪で、田舎特有の諦めムードのような空気もありますが(笑)、湯沢・院内の可能性を地域の方に感じてもらえるような存在になれればと思います!
 

 
ー木村さんには、Fermentators Dinner (発酵人晩餐会)のうち雄勝地域を舞台にした11月8日にいぶりがっこを提供していただきます。参加される方、興味を持ってくださっている方にメッセージをお願いします!
 
木村:
あんまり無理をせず、かっこつけず、みんなで協力して、好きな人にはたまらないであろう地方のディープな部分を見せていきたいです!「日本の田舎と言えば秋田・湯沢」と思ってもらえれば嬉しいですね。
 
イベントをきっかけにここを知ってもらい、次はふらっと遊びに来てほしいと思います。
 
 
写真・Otan/Photography 文・平元美沙緒 〈Fermentators week 広報担当〉
  
*木村吉伸さんのいぶりがっこが食べられるイベント詳細はこちらから

Fermentators Dinner 発酵人晩餐会(発酵×いぶりがっこ×イタリアン)
雄勝野きむらやのいぶりがっこ、秋ノ宮産ネギ、イルサロ特製の自家製生パスタを使ったイタリアンコースをご用意!更には、唎酒師の菅善徳さんがお料理に合う日本酒をセレクト。イタリアン×日本酒のペアリングもお楽しみに!いぶりがっこ工場体験はもちろん、院内銀山や院内石について学んだり、モデルをしながらネギ農家へと転身した猪俣公太さんの圃場を見学さ せていただきながらお話を伺ったりします。
 
( 開 催 )2018年11月8日(木)

( 時 間 )14:00-20:00

( 会 場 )珈琲焙煎工房バルーガ(湯沢市雄勝地域)

( 協 力 )雄勝野きむらや・Farmer粋・イルサロ・NPO法人こまちハート・オブ・ゴールド etc…

( チケット ) 当晩餐会の参加希望者はメールにてお問い合わせください
受付は15名限定・先着順になります。


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