邦久庵クラウドファンディング2021完了のご報告
2021年4月から5月にかけて実施したクラウドファンディング「建築家・池田武邦さんから継承した邦久庵(長崎)の茅葺きを補修したい」は、200万円の目標金額に対して251万円のご支援をいただき、お陰様で大成功のうちに終了しました。
ご支援くださった皆様、また応援してくださった皆様、告知にご協力くださった皆様、すべての方々に改めて感謝申し上げます。
茅葺き屋根の改修そのものは5月10日に開始し、5月29日に無事完了致しました。築20年目の茅葺き屋根は、昨年の台風や雪によるダメージも大きく、押さえ材の竹が露出してしまうほどに痩せてしまっていましたが、今回「差し茅」と呼ばれる修復作業を通じて、大変美しく凛々しい姿を取り戻しました。金色に輝くような、美しい茅葺き屋根です。建設当時も担当された大分の「奥日田美建」の職人さんたちによる丁寧かつプロフェッショナルな仕事に、改めて感謝の意を表したいと思います。
池田武邦さんが、茅葺き屋根で終の住処を建てた理由を振り返ると、それは「技術の伝承」にありました。 現代においては、茅葺きのような伝統工法技術を、後世に伝承する機会がほとんどありません。池田さんが邦久庵を建てようと計画していた頃、「私の弟子は、伝統工法の家に携わったことがない」という地元の大工・志田功一さんの嘆きを聞き、長い歴史の中で培われた地元の技術が途絶えてしまうことを強く危惧し、自分の家で存分にその技術を伝承してくれ、と依頼したのです。 池田武邦さんが目指した、自然の一部としてふさわしい「土に還る」建築。地域で採れる自然の材料で、断熱性・調湿性に優れた茅葺き屋根は、そのシンボルでした。
5月22日・23日の週末には、その「技術の伝承」をテーマに、「差し茅ワークショップ」を開催しました。コロナ禍の影響もあり、もともと期待していたほどに大きなイベントとして催すことはできませんでしたが、特に地元の長崎国際大学から、先生・学生が熱心にご参加くださり、棟梁や職人さん方もそれに応えるようにじっくりご指導くださいました。中には香港や中国からの留学生もおり、国際交流の場として今回のワークショップが機能したことも、嬉しいプロセスでした。
今回、皆さまからご支援頂いた251万円は、当初予定の200万円を茅葺き屋根の改修に充当します。今回工事費そのものは280万円以上となっておりますが、差額については現在管理運営を担当しているSLOW LIFE JAPANと邦久庵倶楽部で調整し、工面します。
また当初の想定以上にご支援いただいた51万円については、今回のワークショップ開催費および返礼品の準備に数万円を使用させていただくほかは全て、邦久庵の建物の改修費に充当いたします。デッキの補修やシロアリ対策など、まだまだ多数の補修箇所が待ち受けています。計画的な補修を進めていく中で、必ず有効に活用させていただきます。
返礼品(リターン)につきましては、「池田武邦さんと邦久庵倶楽部から感謝のお手紙をお送りします」については6月に、「邦久庵の折り紙建築キット+邦久庵ポストカード+邦久庵トーク冊子+お礼のお手紙をお送りします」については7月に、順次発送してまいります。それぞれ楽しみにお待ちいただければ幸いです。
クラウドファンディングのプロジェクトはこれで一区切りがつきますが、邦久庵・SLOW LIFE JAPAN・邦久庵倶楽部の活動は、まだまだ始まったばかりだと思っています。ただ今回、邦久庵の一番のシンボルである茅葺き屋根が生まれ変わったことは、今後の活動を進める上で、私たちにとっても、ご来場くださる皆様にとっても、大きな意味を持つと確信しています。
今後の活動についてはHPおよびFacebookで積極的に発信してまいります。
Facebook:https://www.facebook.com/hokyuann
この屋根の下で多くの方々と交流できる日が来ることを楽しみに待ちながら、場を今後も丁寧に整えていきたいと思います。今後とも末長く邦久庵の保全活動を見守ってくださいますよう、心よりお願い申し上げます。