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盛り場の空地に町の活性化を牽引する語り場=隠れ酒場を建てる

星野惠介

星野惠介

盛り場の空地に町の活性化を牽引する語り場=隠れ酒場を建てる
支援総額
1,003,000

目標 650,000円

支援者
73人
残り
終了しました
プロジェクトは成立しました!
9お気に入り登録9人がお気に入りしています

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2015年12月07日 18:01

11風の物語3___なぜ風の色は三冷ホッピーなのか?

  


今年のお酉様は三の酉まで。十一月二十九日だった。
通常二の酉までのお酉様が三の酉まである年は江戸に火事が多いと言われている。

 

前回三の酉まであったのは四年前の2011年で十一月二十六日。その日僕はとても大切な店が廃業していたことを知る。それは2007年に母を横須賀から小樽へ移送した日と重なっていた。


大衆酒場もーり。



2007年の盆に母が認知症を発症して、それから翌春まで僕は約二十回小樽と横須賀を往復することになる。その間、通い続けたのが大衆酒場もーりだった。






 

 

 

 

2011年の三の酉の日、神奈川県の三浦海岸へ出向いて両親の墓の草むしりを果した帰り道、京浜急行を横須賀中央駅で途中下車した。ここに2007年九月から十一月まで母が入院していた病院があり、母のマンション売却を依頼した仲介業者さんの事務所があった。だからその頃、集中的にこの駅を乗り降りした。朝昼晩さまざまな時間帯に母の病院に足を運ぶ訳だけれど、京浜急行線横須賀中央駅から病院への道すがらに大衆酒場もーりがあった。

 

壁に手書きで「朝から飲み会出来ます」と書いてある。もーりは朝九時からの営業なのだ。しかも年中無休。

手伝いのおばちゃんもいるにはいたけれど、ほとんど店主ひとりで切り盛りしていた。早い時間から普通に客が居て一杯やっている。
 

絶望的な病状を医師から聞いた帰りに。近々にベッドを明け渡さなければならぬ相談に向かう景気付けに。あらゆる時間帯に僕はもーりに立ち寄った。

 

店主は背が高くて眼光鋭いスキンヘッドで、多くは語らない。それでもひんぱんに通ううちに、こちらの事情を察してもらえる程度の言葉は交わした。

この先の病院に母親が入院していて、短い間に横須賀と小樽を何往復もしている。母親の次の落ち着き先を決めなければならない。そんな事情でしばらくお邪魔しますと。



 

マンションを一円でも高く売って欲しい、と仲介業者さんをもーりでご接待したこともあった。さかのぼること三年前に横須賀のマンションを探し出したのも、実家の一軒家を売却したのも、どちらも同じ担当者だった。そればかりかその人は、横須賀へ母が移るとき、ジャージを着て引っ越しの手伝いにまで来てくれた。普通なら考えられないことだと思う。

   

 

そんな大衆酒場もーりの看板メニューが三冷のホッピーだった。

三冷とは?___店の片隅にキンキンに冷えたキンミヤ焼酎の入った専用のポットが置いてある。注文が入るとまず凍らせたジョッキを取り出し、次にキンキンのキンミヤ焼酎とこれまたよく冷えたホッピーをさっと合わせる。氷は使わない。

これぞ三冷ホッピー! ずっと以前からのホッピー好きからしても、氷とたっぷりの焼酎からなる「ナカソト」なるホッピーとは完全に一線を画すその清涼感。そのすっきりとした味わい。そして毎度ポットからキンミヤを注ぐ微笑ましい絵面に、いっぺんに虜になってしまった。

この三冷ホッピーと寡黙な店主の存在に僕はどれだけは救われたか。








(大好きなアジフライ)

 

 

 

 

 

発病から横須賀での入院生活、そして小樽の認知症施設グループホームへの移送、マンション売却までの八ヶ月に渡る小樽-横須賀往復がひと段落した報告にもーりを訪ねた時、店主にしばらくはお邪魔出来なくなる旨を伝えた。

強面で言葉少ない店主は、いつもよりも少しだけ高いトーンでこう言った。
 

「こっちへ来たらまた必ずおいでよ。かあさん大事にな。

俺はたぶんあんたのことはずっと忘れないと思うから」



2009年六月の母の納骨の時も、2010年四月の一周忌、2011年三月の三回忌の時も、親族同伴なのでもーりに顔出し出来なかった。

なので2011年の三の酉の日に、店主の強面が少し緩む様子と、もーりで初めて知った三冷ホッピーとの再会を思って僕は改札から足早にもーりに向かった。
 

急ぎ過ぎて僕はもーりを通り過ぎてしまったらしい。

慌てて引き返す。いや違う。大衆酒場もーりはなくなっていた。

すべての看板は引きはがされ、のっぺらぼうの閉じたシャッターだけがそこにあった。並びの化石のような成人映画専門館はそのままなのに。


隣のパスタ屋に飛び込み、女将さんに事情を聞いてみる。
 

「五月のお祭りの頃だからもう半年にもなるかな。身体を壊して閉めちゃったみたいだよ。顔を合わせれば頭下げる程度の付き合いだったから詳しいこと知らないの。連絡先も分からない。ごめんね。せっかく訪ねてくれたのにね」
 

膝ががくがくした。
 

横須賀中央から数駅上った金沢文庫駅には、最後に母が暮らした横須賀の三年間の、その直前まで、三十年間実家があった。

金沢文庫、横須賀中央、三浦海岸と結ぶ京浜急行線の点と線のうち、二つの点が失われた。公私にわたって世話になった仲介業者さんの営業所も廃止されており、また戻って来る場所をひとつ失った気がした。
 

金沢文庫も横須賀中央も、これで下車する理由がなくなってしまった。

思えば2007年十一月二十六日に母を横須賀の病院から小樽の施設まで移送した、その前夜も酉の市だった。

 


病の母が長旅でパニックを起こさないようにと、そんなことをその神様にお願いしてもいいかわからなかったけれど、僕は酉の市で小さな小さな熊手を手に入れて旅のお守りにした。

あれから八年になる。

 

 

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リターン

3,000円(税込)

お手軽支援コース

・サンクスレター

支援者
11人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年2月

10,000円(税込)

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<自宅で風の色コース>

・サンクスレター
・お店に支援者のお名前を記載させていただきます。
・オリジナル吟醸酒 風の色の贈呈(※ 富良野の名店「くまげら」の森本店主との三十年のご縁で生まれた、店主の醸造プロデュースによる、弊店のみで賞味いただける稀少な吟醸酒です)

支援者
29人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年2月

10,000円(税込)

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<風の色満喫コース>

・サンクスレター
・お店に支援者のお名前を記載させていただきます。
・お店でのご飲食券4,000円分

支援者
19人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年2月

30,000円(税込)

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・サンクスレター
・お店に支援者のお名前を記載させていただきます。
・オリジナル吟醸酒 風の色の2本贈呈(※ 富良野の名店「くまげら」の森本店主との三十年のご縁で生まれた、店主の醸造プロデュースによる、弊店のみで賞味いただける稀少な吟醸酒です)

支援者
15人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年2月

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