【親骨完成!いよいよラストスパートです!】

 

皆さま、こんにちは!
いつも世界初の左右非対称親骨を持つコラーニデザイン京扇子「かはほりあふぎ」の開発プロジェクトにお付き合い頂きまして、本当に有難うございます。

日増しに寒くなって参りますが、いかがお過ごしでしょうか?
もう今年も残すところあと僅か!というところまで来てしまいました。

大変お待たせしておりました、この度の扇子の最大の特徴である親骨のその後を、ついに、ついにご報告できる日がやってまいりました!

以前よりお伝えしておりましたように、複雑な形状の親骨の成型には沢山の課題が巨大な壁の如く立ちふさがっておりまして、胃が痛くなる程に非常に難航しておりましたが、本間金型製作所さまの多大なご尽力により、それらの原因を特定し(というより想定し)、手探りで一つ一つ潰していくことで、どうにかこうにか少しずつ前進して参りました。

お陰さまで、その甲斐あってようやく納得できる品質のものを成型することに成功いたしました!

 

私のような面倒な発注者の要望に、丁寧に最後までお付き合い頂きました同社社長本間さまとご担当者の皆さまには大変感謝しております。本当に有難うございました。心より感謝申し上げます。

一方で、想定しておりました以上に多くの時間を成型に費やしてしまい、支援者の皆さまには大変ご心配をおかけいたしまして、誠に申し訳ございませんでした。併せて、あたたかく見守って下さいまして、本当に有難うございます。

 当初見込んでおりましたスケジュールイメージにつきましては、誠に心苦しく大変申し訳ございませんが、少し後ろ倒しにさせていただけませんでしょうか?妥協なきかはほりあふぎを実現する為に、何卒ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

改めて今回の記事の最後で今後のスケジュールイメージをお伝えして参ります。

それでは、最後まで苦労した親骨の成型上の課題と、どうやってそれらを本間金型製作所さまと共に乗り越えたかについて、下記で共有させていただきます!



【思った以上に手ごわい親骨の形状】


先ずは、今回の金型をご覧ください!中央やや下に黒い棒状のものが見えておりますのが、これが正常に射出成形された、中指~小指が当たる側の親骨(私は親骨Bと呼んでいます)です。「スプルー」「ランナー」と呼ばれる親骨以外の余分な部分が付いた状態の写真です。射出成形の仕組みやそれらがどれのことを指すのかにつきましては、こちらをご参照ください。

 


今回、当初から親指を当てる肉厚部分にできるへこみである「ヒケ」、要穴周辺で温度の異なる樹脂が合流するポイントで発生する「ウェルド」などの不具合が想定されておりましたが、その対処方法も事前にシミュレーションして入念に準備していたので、なんとか対処できていました。具体的には、樹脂の入口であるゲートを拡張して圧力を高くし、さらに温度も上げることで、これらはクリアすることができました。

しかし、全く想定していなかった不具合が生じます。親骨Bで発生した次の2点でした。

①親骨の表側が起伏に富んだ複雑な形状なので、金型に吸着して上手に抜けない
②金型から抜く際に、要穴付近が金型に引っ掛かり、表側の本体を削いでしまう

 

(ウェルド&要穴の一部がえぐれているのがおわかりになりますでしょうか?)


以前、本間社長が「やってみなければわからない」と仰っていた言葉通りとなりまして、これらは私たちにとって如何ともし難い、重篤な事象でした。

本間社長と私は何度も何度も電話でやり取りをし、解決策を検討します。
そして、私たちはアイデアを捻り出し、次の金型修正の方法を導き出しました。

①要穴の裏側をすぼめる(=金型の要穴部分の一部を削る):本間さんアイデア

②親骨の裏側に粗いシボ加工を施し表側に引っ張られる力を削ぐ:乙井アイデア


①は、金型から抜く際に要穴部分の摩擦力を少しでも増すことで、表面と金型を引き離しやすくする意図、②も同様で、元々シボ加工を施す予定でしたがより粗めにすることで、親骨の裏面側が金型に付きやすいようにする意図で計画しました。

その結果、思惑通りに進み、親骨の成形が無事に成功したのでした!
しかも、裏面の粗めのシボ加工は表面の質感とのコントラストがとても美しく、思わぬ善い効果を生み出すことになりました。これは是非実物でご確認ください!

実は、上記のようなアイデアが奏功して成形はうまくいったものの、通常と同様の抜き方ではやはり不具合が生じやすいので、ご担当者が親骨のボディに傷が付かないように、1つ1つ丁寧に金型から優しく外すようにして対応してくださったそうです。

さらに、今回は大量生産用の質の高い金型での制作をお願いしたのですが、成形効率はあまりよくなくて1割ほどの不良品が発生してしまうそうでして、本間社長曰く「とても生産性の良くない金型」となりました(苦笑)。

(余談ではありますが、一般的な工業製品とは設計思想が少々異なるコラーニ製品では、しばしばこの様な製造上の苦労話や裏話を耳にしていましたが、自分が関わる製品でも同様のことが生じたので本当に驚きました。)

本間金型製作所さまのお陰で、この難しい工程をなんとか進めることができました。本間社長には、今回のような面倒なお仕事をお請け頂き、品質向上という共通の目的に向かって真摯に丁寧に対応いただき、無事に完成に導いて下さったことに心から感謝しております。

本間さんと難題に取り組んで下さった素晴らしいスタッフの皆様と、とても製作が難しい親骨を一緒に創ることができて、本当によかったと思っております。ありがとうございました!

 



こうして出来上がった親骨のサンプルを、早速京都の扇子職人、なかにしや京扇中西さんにお届けして、先ずは一本だけ「柿渋の扇面」で仕立てて頂くことになりました。

 私たちは、いよいよ最後にして最大の関門である「仕立て」に進みます。

 何故、最後にして「最大の」関門と私は感じているか…。

 

それは、これまで「危機」として扇子職人中西さんの言葉をお借りして私が訴えてきた、扇子産業が抱える大きな課題に直接対峙することになるからかもしれません。

この10日ほどの間に自身が経験している「今」をどのように皆さまにお伝えするべきか、とても悩みますが、これからの投稿で少しずつお伝えすることを始めていきたいと思います。

 

 

【『写真撮らんといてください!』】


2015年11月下旬の連休最終日の夕方。


私は2日前に送られてきた「かはほりあふぎ」のサンプルを手に、観光客で賑わう京都国立博物館の前を足早に歩いていました。琳派誕生400年記念の催しが最終日を迎えるそうで、多くの人が満足した表情で帰途に就かれている様子が窺えました。

私の目的は、その先にある、なかにしや京扇さまの工房。
当日の朝、私は無理をお願して急遽本プロジェクトではお馴染の中西潤吉さんにアポを取り、「一刻も早く次の手を打たなければ」との思いから、中西さんと直談判をするために工房を訪ねたのでした。

約束の16時にちょうど中西さんがお店から表に出てくるのが見えましたので、「中西さん!」とお声掛けをすると、いつものように「どうも」と一言。

今回は工房ではなく、はす向かいのお店でお話をすることになりました。
お店にお邪魔するのは2年ぶりくらいでしょうか。

お店に入ってから、インターネットをご覧になられない中西さんに、改めて今回のプロジェクトの経緯をご説明しながら思いをお伝えし、一日だけ試用してみた「かはほりあふぎ」のサンプルを手渡して、私はいつものようにカメラを構えながら話を切り出しました。

 

 

私がお伝えするその話の途中で、

 「今日は写真撮らんといて下さい!」

手渡した扇子を眺めながら、中西さんから苛立ちを隠さない声が発せられました。

 

そして、「乙井さんの言われることは、ようわかります。けど、はっきり言うて、それは無理ですわ!」

 

その後は中西さんと「扇面」と「仕立て」についての度重なる重苦しいやり取りが続いていきました…

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

お話は途中ですが、一度ここで一区切りとさせて頂きます。

いよいよ私は、扇子産業の深部に辿り着いたのだという感覚を持ちました。

 

実は、中西さんとのこういったやり取りは初めてではありません。また、真剣に取り組めば取り組むほど衝突はつきものですので、特に驚くようなことでもないですし、当然のことだと思っています。

 

一方で、私は扇子産業と6年間という年月をかけて向き合いながらも、理解が足りない部分がまだまだ沢山あり、当事者に成りきることができない立ち位置が、この業界のもう一歩先に進むことができていない原因だと認識しています。『我々は自分たちで言うのもなんですが、閉鎖的ですわ』と仰る中西さんのお言葉を借りますと心が少し楽になりますが、今この瞬間にその言葉に甘えてしまって今の状況を「仕方がない」と思ってしまってはいけないと、自分に言い聞かせました。

 

元々、永年取り組んできた仕事の内容が大きく違えば、進め方も大きく異なる職人とサラリーマンですし、そしてちょうど親と子ほど歳の離れた二人ですので、ぶつかることは不可避であり、私は普段からこのような局面を乗りこえることを一緒に楽しむしかないという心構えでおります。でもこの瞬間は、中西さんも私自身も、お互いに何かをじりじりと消耗していることは確かでした(苦笑)。

 

今回の記事では、あまり多くを語らず、至る所で曖昧な表現に留めさせていただきましたが、近いうちにこの続きを皆さまにお伝えしようと思います。

 

扇子産業の危機を訴えて、共鳴いただける多くの方々の知恵と行動力を結集して、どうにかして現状を打破し、日本の扇子産業を未来につないでいくという私たちの構想でしたが、ようやく今、その入り口に立つことができたところなのかもしれません。

 

 

【誠に申し訳ございません…今後のスケジュールです】

 

以前より想定しておりましたスケジュールが、今回大きく動きますのでご報告させていただくと共に、「かはほりあふぎ」のお届けが少し遅れますことが確定いたしましたので、この場をお借りいたしまして、深くお詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。

 

明確なスケジュールは誠に恐れ入りますが、まだお伝えできませんので、詳しくは次回投稿でご説明・ご報告いたします。

 

皆さまからご支援いただきました「かはほりあふぎ」を、近いうちに必ずお手元にお届けすることを約束させていただきますので、次回の投稿をお待ちいただけましたら幸甚です。大変お待たせして、またご心配をおかけいたしまして申し訳ありませんが、何卒ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

 

今想定しておりますのは、12月中旬より、一部の方から完成次第、発送させて頂くというものです。

 

プロジェクトの途中で仕様変更した柿渋の扇面の反発力の課題と、扇子産業の奥深いところでずっと続いてきた大きな課題と向き合い、現在も私たちなりの解を求めて奔走しております。

 

本日の時点で一つだけお伝えできること…。

中西さんのくだりで、散々「ピンチ」っぽくお伝えしましたが…

ご安心ください。

 

「無理です」と仰っていた中西さんは、その後「ひとつずつ(課題を)潰していくしかないですわな」とマインドを変化させて頂きまして、私が願う方向に少し歩み寄ってくださっております。

 

 

この度もお読みいただきまして、誠に有難うございました。次回投稿は、近いうちにお送りさせて頂きます。

 

いよいよ佳境を迎える本プロジェクトでございますが、引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

 

 

 

 

新着情報一覧へ