創建1300年。宮城県名取市の熊野那智神社の歴史を後世へ

　大して面白い話ではないですし、自分もそうだったと共感しづらいちょっと変わった仕事ですが、支援いただいた方からどうして宮司にまでなったんですか？とご質問ありましたのでつらつらと改めての自己紹介を兼ねて書いてみますね。

　父が岐阜県美濃加茂市という飛騨高山の少し南側の街で小料理屋を母と営んでおりますが、生まれも育ちも愛知県一宮市です。そこで高校生まで生活し、歴史や民俗学など勉強したくて大学進学のため単身上京しました。大学は最近箱根駅伝でも名前を見るようになった國學院大學に通っておりました。宗教史や思想史を勉強しながら神職の資格を取得し大学４年生就職の時期を迎えて、奉職（神社は就職といわず奉職といいます）を目指し面接を受けましたが、一向に合否の連絡をくれない神社がありまして、大学を通じて確認したところ連絡ミスで放置していたことが発覚し、大学の担当者があまりにも不憫でかわいそうだからと紹介してくれた神社が宮城県岩沼市にある金蛇水神社でした。

　大学出たばかりで実践経験のない頭でっかちの私をとりあえずそこそこ使えるように先輩神主のみなさんが手取り足取り教えてくれました。そんななかで地元の女の子と結婚し中古の小さい家を買い、東日本大震災の２年後に子宝に恵まれましたが、１４年目に訳ありまして退職しました（悪いことはしてませんがさすがに言えないので勘弁してくださいねm(_ _)m）

　退職の際に宮城県のえらい宮司さんに熊野那智神社の宮司しませんかと聞かれ、嫁に相談もせず条件も聞かず即諾してしまいました。当時那智神社は震災の年に先代宮司が病気で亡くなり、えらい宮司さんが兼務して御祭の際は職員を派遣している状態で、氏子総代によって管理されている状態でした、ということを返事した後聞いたんですが…

　とりあえず話が決まるまで生活もしないといけないので１年ちょっと仙台中央卸売市場で野菜仲卸の会社で働いておりました、昼夜逆転の生活ではありますがいい人たちばかりで慣れない仕事ではありますがなんとかやっておりました。そのうちに本格的に話が進み宮司就任となるのですが、ふたを開けると市場で一緒に働いていた人たちの中に氏子さんがいたり、役員さんの弟さんがいたりと全く関係ない仕事をしていましたが今に続く人たちと出会いっていたことに大変驚きました。

　宮司就任は紙の上では平成２８年１１月１日ですが、社務所の住居スペースの改修工事の終了が遅れ１２月３１日に引っ越しし、とりあえずの荷物だけでお正月を迎えるという怒涛の宮司ライフが幕を開けました。

　しばらく兼業で仕事をしていましたが、どうしてもお祓いなどは午前中に集中するので早退してお祓いに行くことが増えてきて、大丈夫いなくても平気だと気をかけてもらえてるのかもらえていないのかわからないお言葉をいただきましたが、最終的には仕事仲間に迷惑をかけるので２９年の３月末で退社しました。

　氏子役員さんの手で環境整備が行われ参拝者が以前から比べ増えたとはいえども、心霊スポットとささやかれるほど一時期参拝者が全くいなかった神社に爆発的に参拝者が増えるわけもなくこつこつ社務を行っていました。そんな中でいつもお参りに来る方に誘われて神社境内でマルシェを始め、神社の歴史を掘り下げて講演をしたいなと思ったら神社縁起と関わり深い子孫の方と出会ったり、困ったときに偶然連絡をくれたのが神社の記事を以前見た父親のお店の隣の隣の会社の社長さんだったり、相変わらず元気な総代さんたちにも支えられながら人の縁に助けられながらここまでやってこられました。お金にはいつも困っていますが人に困ったことだけはとりあえずありません（笑）

　私個人の考えではありますが宮司は神社のオーナーではありません。オーナーは神様であり、氏子崇敬者のみなさんだと思っています。神様が住まうのに心地よい環境を整え、参拝者が訪れやすい気兼ねなく訪ねてこれる神社であること、そして、そのなかで神様と氏子さん崇敬者の皆さんの間を取り持つ「仲人」が一番大きな仕事と思って日々神明奉仕に勤しんでおります。

　私はお節介焼きの仲人なので神様に今の名取の姿、震災から粘り強く立ち上がった閖上の姿を見ていただきたい、また神様を昔はどのように考えどのように接していたのか知ってもらい今を生きる人たちに新しい自分たちにあった神祀りを考えてもらいたいと思いから、神輿渡御を復活と懸仏の展示を考え相談し今回の計画となりました。

　と偉そうなこと言いつつも、このここの神様が好きで神社の雰囲気が好きで来てくれる参拝者とのちょっとしたおしゃべりが好きなのが一番根底にあるのは確かですけど…

　いつもは境内からは、名取平野から太平洋まで春夏秋冬人々が生きている証が見えるんですが、１年に１、２度雲海のようなこんな景色のご褒美がもらえるので苦労はあってもやめられないんですよね