寄付総額
目標金額 1,800,000円
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- 243人
- 募集終了日
- 2018年12月25日
犬山紙子さん・眞鍋かをりさん 取材レポート【後編】
5人の女性タレントが、2018年に目黒区で発生した5歳児の虐待死事件を受けて立ち上げた社会的養護啓発キャンペーン「こどもギフト」。
前編では、「こどもギフト」発起人である犬山紙子さん、眞鍋かをりさんが、キャンペーン参加団体の一つである、特定非営利活動法人Living in Peace代表中里晋三、その支援先である一般社団法人MY TREEペアレンツ・プログラム代表森田ゆり氏と、社会的養護における親支援の重要性について意見を交換した。
続く後編では同メンバーが、日本から虐待を減らすためにできること、整えるべき法制度について熱く議論を交わした。
構成・編集:大沼 楽(Living in Peace)
■「体罰」は深刻な虐待への入り口
犬山 社会から虐待をなくしていくためにできることには、何があるのでしょうか。
森田 ひとことに「虐待」といっても、その種類や背景は様々です。虐待は身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの4種類に分類されています。昨年(2017年)発生した虐待事件133,778件のうち、約半数は心理的虐待(72,197件)、次に多いのが身体的虐待(33,223件)です(*1)。
MY TREEペアレンツ・プログラム(以下、MTプログラム)は、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクトにいたってしまった親を対象にしています。
眞鍋 虐待の種類によって、発生の経緯や対応策が異なってくるということですね。たとえば、身体的虐待はどういった経緯で発生することが多いのでしょう。
森田 深刻な身体的虐待は、3つの条件が揃った時に発生します。体罰、重層的なストレス、孤立の3つです。今回は体罰について、少しお話しさせてください。
今年2月、非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が国内2万人を対象に行った意識調査によって、日本人の約6割が、時には体罰も必要だと考えていることが明らかになりました。
犬山 え!? これだけ色々と騒がれているのに、いまだにそんな数の人が体罰を容認しているんですか……。
森田 そうなのです。体罰は深刻な身体的虐待が発生する第一の要因です(*2)。そして、それを支えているのは、実は日本人の6割の大人たちなのです。
MTプログラム修了生の中にも、義父に「(子どもが)悪いことをしたときには、叩いて教えなければならない」と言われて手を上げてしまったことをきっかけに、体罰が止まらなくなり、深刻な身体的虐待へとエスカレートしてしまった方がいました(*3)。
世界では現在54ヵ国で体罰が法律により禁止され、変わり始めています。世界で初めてあらゆる場での体罰を法律で禁止したスウェーデンでは、体罰を認める人が30年間で1割程度まで減りました。
日本でも学校、家庭、スポーツクラブなど、あらゆるところで「体罰は時には必要」から「体罰が必要な時はない」へと意識を変えていく必要があります。そうした小さな努力を展開していくことが、身体的虐待の予防になるのです。
眞鍋 法制化はされていませんが、厚労省も「愛の鞭ゼロ作戦」という啓発リーフレットを配布するなど、体罰禁止を訴える活動を行っていますよね。
『愛の鞭ゼロ作戦』リーフレット(平成28年度 厚生労働科学研究)
犬山 体罰禁止法、作ってほしいですよね。体罰を肯定している人には、「自分も体罰を受けて育ってきたけれども、そのおかげで立派に育つことができた」と考えている人もいます。でも、「自分が大丈夫だったから大丈夫」というのは、それ自体が暴力的な発言だといえるのではないでしょうか。
眞鍋 そういう人たちの意識を変えるためにできることを考えていきたいですね。
中里 そうですね。また、法制化には、その強制力を抜きにしても、法制化自体に「今の時流はこうなんだぞ」と伝える効果があります。体罰禁止を定める法律が出来れば、それによってさらに社会の意識が変わっていくのではないでしょうか。
■「指導」から「支援」へ
森田 前半でも述べた通り、今年厚労省が出した「児童相談所運営指針」にて、児童相談所が相談援助活動を行う際には、まずは家庭復帰に向けた努力を最大限に行わなければならないという方針が打ち出されました。
しかし、子どもの家庭復帰を優先させることが決まったにもかかわらず、親を回復につなげるプログラムの活用は広がっていません。
親への対応が不十分なまま子どもを家庭に返しても、また虐待が繰り返されてしまう。目黒区の事件が、まさにそうだったといえます。
犬山 親のケアが重要であるとことを、国はまだ認識していないのでしょうか。
森田 まだまだ認識が弱いですね。たとえば厚労省や児童相談所では、いまだに「児童福祉司親指導」といったような表現が使われています。
眞鍋 「親支援」ではなく、「親指導」なんですね。
森田 そうです。では、実際に現場ではどのような「指導」が行われているのか。たとえば目黒区の事件では、虐待した父親が娘に「もうしない」と謝ったという理由で一時保護が解除されていました。
しかし、「もうしません」といったからといって、二度も警察沙汰になったような深刻な虐待が止められるはずがありません。ここには「親の回復」という視点がない。
また、目黒事件の母親は、夫から暴力を受けているDV被害者だった可能性が極めて高いです。しかし、「指導」という目線でいるかぎり、こういった可能性は見過ごされてしまう。
「支援」に一番必要なのは、その人のニーズを知ることです。あの母親のニーズは何なのかを知ろうとして面談をしていれば、言葉にはしなくても、彼女が助けを求めていたことが分かったはずです。
中里 大切なのは、「目の前にいる人と同じ目線に立つ」ということだと思います。この目線は、福祉に携わる一部の人だけが持てばよいというものではありません。虐待報道を目にした際に、「酷い親だ」と上から目線で終わらせない。「加害者も何か大変な背景を抱えていたのかもしれない」と想像してみる。
そういう目線を持てば、きっと見えてくる物も変わってきますし、今回のプロジェクトの意義も理解できるはずです。裏を返せば、今回の133人という支援者の数(対談時点)は、同じ目線に立てる人がそれだけいたということのあらわれだといえるかもしれませんね。
■子どもたちを一人で歩ませないために
森田 今回の133人の方によるご支援は、本当にありがたく思っています。支援くださった方からのコメントも興味深く拝見させていただいています。
もちろん、寄付が集まったこともうれしいですが、これをキッカケに親の回復支援が大切だという認識が広まりつつあることが、寄付が集まっていることと同じくらい嬉しいです。
中里 社会的養護を必要としている子どもたちは、「この親のもとに生まれてきた」という事実と向き合って生きていかなければなりません。
そして、社会が親の問題に目を背け続けるなら、子どもたちは、そのことを一人で背負わなければいけなくなる。これは、社会による子どもへの暴力であるとすらいえるのではないでしょうか。
MTプログラムのような、子どもが自分の生まれや育ちを受け止められるようになるための支援は、そういった意味で、社会的養護の中心にあるといえる。それを多くの人に知ってもらいたいし、こうしたプログラムをより多くの人に届けたいなと、切に思います。
眞鍋 社会の感覚を変えていきたいですよね。世の中にはLiving in Peaceさんのような素晴らしい団体さんもいらっしゃいますし、MTプログラムのような効果的なプログラムも存在する。なにより、こんなに多くの方が今回のキャンペーンを支持してくださっています。
こうした事実を、より多くの人に知ってもらいたい。そこから、社会の風潮を変えていきたい。私たちも、微力ながら協力させていただきたいと思います。
犬山 そうですね。私はやっぱり、森田先生のような、虐待をなくすための活動している人に、しっかりとした資金が集まる社会になって欲しいなと思います。今回のキャンペーンだけで終わりになってしまったらイヤだなって。
こうした活動は、継続していくことが大事なんだと思います。続けていくことで、情報がドンドン拡散していく。そうして、社会的養護に関心が高い人以外にも情報が届くようになってほしい!
そのために、私たちができることは何でもやりますし、みなさんにも、ガンガン私たちを利用してほしいと思います。
森田 みなさん、ありがとうございます。今回のクラウドファンディングは、12月25日の23時まで続きます。引き続きお力添えいただけると幸いです。
(*1)
心理的虐待の件数がとりわけ多い背景には、子どもの前で親が配偶者に暴力を振るう「面前DV」を警察が心理的虐待と位置づけ、児童相談所に通告する例が増えていることなどが影響している。
(*2)
MTプログラムには『しつけと体罰」(森田ゆり著 童話館)をテキストとし、体罰の問題性と、体罰に頼らないしつけの方法を学ぶプログラムが組み込まれている。
(*3)
彼女はMTプログラムを通じて回復し、今は幸せな家庭を築いています。『虐待・親にもケアを』(森田ゆり編著 築地書館)に、その体験を綴った彼女の手記を掲載しています。感動的な内容になっているので、ぜひお読みください(森田氏談)
ギフト
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30,000円
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