斬新な『心のケア』の方法を開発・啓蒙して個々の命に向き合う

『富士山「心のケア合宿」プロジェクトによせて』

　私は、30代前半に、かなり深刻なうつ症状を経験しています。当時、通勤に片道2時間半を要していた時期だったことに加えて、仕事もタイトでかなりストレスも掛かり、体調があまり良くない状態が続いていました。仕事そのものは意気に感じて頑張っていましたが、あるとき職場で、自分が自分でなくなってしまったような感覚に陥りました。血の気が無くなり身体に力が入れられず、めまいや震えが出て、考えることが億劫でできなくなり、不安だけが大きくなっていきました。内科医院や大学病院で整形外科的な検査をしたのですが、原因はわからず、気分の問題だと言われ、自分に何が起きているのか分からないことで、さらに不安が大きく膨らんでいきました。

　家族に心配を掛けてはいけないという思いも強く、なんとか早く治ろうと表面上は元気をよそおい努力すればするほど空回りして、余計に症状は悪化していきました。しばらく病気休暇を取り休んでいたのですが、あるとき、手足にしびれがきて舌がもつれるように感じ、恐怖と不安で少しパニック状態になってしまい救急車で運ばれ、そのまま入院。仕事から離れて4週間の入院が良い静養になってか、心身共にだいぶ回復することができ退院しましたが、職場への復帰には至りませんでした。自分の力で何とかしようという気持ちは戻ってきて、呼吸法やウォーキングをするようになり、どうにか２カ月後に職場復帰することできました。勤務先も近くなり、何とか表面的には普通に過ごせるようになりました。

　しかし、さらに1年後、心身共に極度に落ち込む体験をしました。このときの方が状態は深刻で、頭の中の歯車が外れてしまったかのように、心も身体も思いどおりに動いてくれません。何かしなくてはいけないという思いは湧くのですがやる気になれず、手や足に力が入らないという奇妙な状態でした。気分の落ち込みが激しく、仕事のことや将来への不安で押しつぶされそうになっていきました。病気休暇をとるために内科医院で受診。診断書に「自律神経失調」「心神喪失」という文字があり、精神安定剤を処方されました。そのときは、症状から逃れたいわけではなく、治りたいという気持ちが優っていたので、頑なに「飲んだら負け」と処方された薬には一切手を付けませんでした。日に日に、顔がやつれ表情が暗くなり、精気が失われていきました。鏡で自分の顔を直視することが恐くてできなくなるほどでした。

　そんなとき偶然、「瞑想法の本」と出合いました。何をやっても無駄とあきらめかけていた私でしたが、わずかな光明が見えたような気がして、瞑想をしてみることにしました。それは自分自身と向き合う作業でした。「考えごとから離れて、無条件に今の自分を受け容れる」というシンプルな瞑想を毎日続けてみると、すぐに気持ちが楽になりました。２週間ほどで「治れる」という確信を得ることになり、３カ月たったときには病む前よりももっと健康になれそうな気になっていました。そして半年たったときには、心も身体も癒えて、ストレスから解放された自由な自分になっていました。

　以来３０年。そのときの心と身体の不思議な体験が、私を臨床心理学や心理療法、心理カウンセリングの奥深い世界へ導いてくれました。

　「心のケア合宿」で心理カウンセリングを担当させていただきます。どのような効果が期待できるか、どんな受け方が良いのか、アフターフォロー等についてアドバイスもさせていただこうと考えています。

徳ドクターと宗鳳和尚、お二人が始められたこの試みが、新たな流れとして浸透していくためにお手伝いをさせていただけることに、深く感謝しております。

　皆様のお力添えとともに、「利他の魂」のサポートに徹するつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。

一般社団法人「家族と心の研究所」所長

ココロホット・コンサルティング　

チーフコンサルタント　　大髙直樹