1月27日　南極生態系を支える海氷の話

風は13～15メートルが続いています．そんな海況でしたが，海氷のサンプリングが完了しました．南極の生物にとって，海氷は大きな意味を持ちます．海氷は，真冬の9月ごろには南緯60度付近まで海氷がびっしり張り出します．それが夏真っ盛りの今頃は、見る影もないくらいとけて無くなってしまいます．この海氷のなかは有機物の宝庫です．かんたんにいうと，海氷には小さな生き物がたくさん入っています．珪藻（けいそう）という植物のほかにカイアシ類や有孔虫（ゆうこうちゅう）といった動物も中で生きています．このような小さな生き物は食物連鎖の起点に近い部分を担います．春から夏にかけて大量の海氷がとけるのにともなってこれらの微小生物も海の中に出て行き，食物連鎖に取り込まれていくことになります．こういった意味で海氷は南極海の生態系のなかで重要な要素となり，私たちの研究対象となります．

やや年配の方のなかには銀座のバーで，水割りに南極の氷を浮かべた記憶がある方もおいでかもしれません．こちらの氷は海氷ではなく氷山の氷です．海氷は大陸近くのポリニヤとよばれる場所の海面が凍って，これが風で北へ流されていくことで海をおおいます．つまり海水が凍ってできる氷です．それに対して，氷山は大陸に積もった雪が何千年，何万年もかけて押し固まってできた氷が氷河を伝って海に流れ出たもの．ちりのほとんどない空から降ってきた雪からなる氷なので不純物がほとんど入っていません．水割りに入れるのはこちらです．まちがって海氷を水割りに入れてしまったことを想像してみてください．寝られなくなります．

寝られるような写真でしめましょう．写真はユキドリ．英語でもSnow petrelといいます．南極海でも高緯度地帯に来ないとみることができません．南極大陸に巣をつくって子育てをします．このトリは単独で飛んでいることが多いのですが，全身まっ白なので飛んでいればすぐにそれと分かります．きょうは専攻科の学生がみつけて教えてくれました．

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