【終了報告】南スーダン難民に「心のケア」を届けました!
皆様、こんにちは!SDGs・プロミス・ジャパン(SPJ)です。
多くの方々に応援していただきながら実施していた南スーダン難民の子ども達への「心のケア」プロジェクトが無事終了しました。
ウガンダ北部の現場では様々な苦労がありましたが皆様の応援のおかげで紛争のトラウマを抱える子ども達に何とか支援を届けることが出来ました。
ご支援を頂いた全ての方々に感謝の気持ちを伝えたいと思います。
本当にありがとうございました!!
今回SPJは2019年6月からウガンダ北部にある難民居住区で、南スーダン難民を対象とした心理社会的ケア事業を実施してきました。今までの活動の様子を皆様お伝えしたいと思います。
SPJの活動
私たちが活動するビディビディ難民居住区には約23万人の南スーダンから難民が住んでいるのですが、その大半が20歳以下の子どもです。子ども達は誰もが戦争の辛い記憶を抱えており、それが人によっては後々に精神的な不調となって彼らの人生を苦しめることとなります。私たちの活動はそうした子ども達の苦しみを軽減し、彼らが将来の生活を前向きに築ける手助けをすることが目的です。
一見普通の子ども達でも、それぞれが辛い体験を経てこの場所へたどり着いています。
子ども向けのワークショップ
では、実際にどのような活動を行っているか説明したいと思います。まず柱となる活動として学校の子ども向けのワークショップがあります。今回のプロジェクトでは全10回のワークショップを、Alaba小学校とMengo小学校で各32名ずつを選出して実施しました[1]。ワークショップでは様々な作業を通して子ども達の記憶を形に表現していきます。はじめは絵画(2次元)、次に粘土や針金(3次元)、最後には音楽(4次元)と回を重ねる毎に複雑な表現方法を用いることで、子ども達は様々な感情や記憶と向き合います。初回の絵画セッションでは「失ったもの/こと」をテーマとして絵を書いてもらったのですが、どの子どもも大切な肉親を失った悲しみを絵に表現していました。また「忘れられないあの日」というテーマでは、銃を向けられた光景、親が目の前で殺される様子、など、私たちが想像もつかない世界を体験してきた子どもの心の内を垣間見ることとなりました。
絵画セッションの一コマ。「忘れられないあの日」をテーマにそれぞれの思いを絵にします。
粘土セッションで作成された作品。棺桶の色が印象的です。
針金セッションでは自分の過去を振り返りつつ未来に向けての希望を示します。
ワークショップの後半は過去の記憶から未来にテーマが移ります。ジオラマセッションでは将来に住みたい町というのをグループで作成しました。多くの作品が平和になった南スーダンの未来の様子を表現しており、彼らにとって南スーダンは悲しい記憶の場所であると同時に楽しい思い出の残る故郷であることが強く感じられました。また、今まで前半のセッションではずっと暗い表情をしていた子どもが、初めて子供らしい笑顔でジェット機つきの自分の家を自慢している姿を見る事もできました。
ジオラマセッションでの作品。子ども達の思いが目一杯詰め込まれています。
今回のプロジェクトのクライマックスは終盤の音楽セッションで、子ども達はグループに分かれて「過去」「現在」「未来」の歌詞を作りました。それをメロディーに乗せて1番「過去」、2番「現在」、3番「未来」として歌います。この音楽セッションには日本人専門家である桑山紀彦医師が加わり、子ども達の歌詞づくりをファシリテートし、演奏の場面ではギターで伴奏を行いました。1番の過去では暗い記憶が歌われつつ、3番の未来では美しい南スーダンの故郷や将来の夢が語られ、子ども達の繰り返し歌う大きな歌声に見学に来ていた親や先生たちも引き込まれていました。この音楽セッションの時期にはSPJ理事長・鈴木が活動地を訪問し、子ども達と一緒に歌詞を作ったり演奏を行ったりしました。また、在ウガンダ日本大使館の亀田大使にもプロジェクトをご訪問いただき、子ども達に大きなエールを送っていただきました。
音楽セッションの様子。笑顔で歌っていただきました。
SPJ理事長・鈴木が子どもの歌詞作りに参加している様子
音楽セッションに加わる亀田大使(中央)と日本人専門家桑山氏(右)
先生や保護者向けの活動
また、今回の活動では子ども達の親や学校の先生を対象とした、心理社会的ケアに関するワークショップも実施しました。子ども達にとって学校や家庭生活の大半を過ごす場所で、そこで周囲の大人がいかに子どもの様子に気づいて適切な対処ができるか、ということも子どもの心理状況にとって大きな要素となります。そのため、内容は子ども達に学校や家庭で精神が不安定な子どもにどのようなケアが必要か、という基礎知識が主となったのですが、親や先生達からは多くの質問が寄せられ、約5時間にも及ぶ長時間のワークショップにも関わらず最後まで熱心にメモを取る先生の姿が印象的でした。
教員向けワークショップの様子。先生たちも今まで表に出せなかった様々想いを抱えていたことがわかりました。
今後に向けて
子どもの心理状態には戦争のトラウマの他にも、避難後の生活に基づく様々な要素が含まれており、そう簡単に解決するものではないのですが、少なくとも当初言葉が少なく凍った表情をしていた子どもが、ワークショップ後半になると笑顔を見せてスタッフと作業をするようになっていたことは確かな手ごたえでした。また、親からは「子どもが家で過去の話をするようになった」「学校での出来事はあまり話さないのに、ワークショップでの出来事はよく話している」など家庭での前向きな変化を報告する声が複数聞かれました。
先生対象のセミナーやワークショップでは、「このような支援は今までなかった」「もっと長いセッションでの研修を行って欲しい」「コミュニティリーダーを対象とした活動を行って欲しい」など様々な要望が挙げられ、改めて心理社会的ケアに関する支援のニーズの高さを実感する事となりました。
最後にお父さんやお母さんが目の前で殺された過去を変えることはできません。でも、これからどう生きるかを決めることは出来ます。
ワークショップに参加した子ども達には、トラウマに押しつぶされず前向きな人生を歩んでもらえる事を願っています。
今回の事業(6月15日~9月25日)では、子ども64名、保護者61名、先生202名に対して活動を行うことができました。また、昨年事業対象校の子ども計47名を対象とした特別ワークショップも1日実施しました。昨年度事業を行った子ども達の元気な姿をまた見ることが出来ました。このような活動を実施できたのも、皆さまの温かいご支援のお陰です。改めてこの場をお借りして心より感謝申し上げます。今回の支援の様子は下記URLにてより詳しく映像化されています。ぜひご覧くださいませ。
https://www.youtube.com/watch?v=OpimYwq3Y9g
先生方との一枚。皆様の熱意が本当に印象的でした。
子ども達に「どのセッションが一番楽しかったか」と聞くと声を揃えて「Singing!」と答えました。最後には子供らしい笑顔をたくさん見る事ができました。
【収支報告】
皆さまからいただいたご寄付は、下記のように使用させていただきました。
65,000円 ワークショップ実施のための備品購入費(子ども達への配布分含む)
257,680円 ワークショップのファシリテーター等人件・派遣費
200,000円 難民居住地へ移動するための車両借上げ代
15,000円 リターン作成費用
73,320円 Ready for 使用手数料
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計 611,000円
【事業終了報告書の発送について】
1万円以上寄付してくださった方々に、事業終了報告書を送付させていただきます。
現在作成中ですが、予定通り10月までには送付いたしますので
今しばらくお待ちください。
【今後について】
このプロジェクトは一旦終了しますが、これからもSPJは
ウガンダ北部でトラウマを抱えた南スーダン難民の方々に
支援を届けたいと考えております。
実際に、今回のプロジェクトのような「心のケア」を提供するための
新しい事業を計画しています。SPJの活動の最新情報はホームページで
確認していただけますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。
SDGs・プロミス・ジャパンHP
[1] 選出にあたってはGHQ-12、バウムテスト、IER-Sの3つの精神状況を計測するテストを実施し、その結果と先生との協議に基づいて特に精神的不安定さを抱えると思われる子どもを対象としました。