メッセージリレー第12弾　浅川満彦先生

日本の獣医学、さらにそれを基盤とする獣医療の教育と研究は、哺乳類のごくごく一部（伝統的な家畜・伴侶動物）の種を対象に発達してきた。

一方、鳥類に関しては、コアカリキュラムという斉一教育ではニワトリの解剖・生理・疾病（公衆衛生・動物衛生面）の項目が見えるが、これを実際には十分教えていない（その余裕がない）。また、この中には臨床はない。そもそも畜産領域で卵や肉の生産装置として見なされてしまうニワトリの個体診療などは、悲しいことにコスパ面で無意味と決めつけられてきた。ましてや、愛玩鳥の生物科学や医科学、医療術など夢のまた夢。

　欧米（豪州含む）の獣医学教育（５，６年制）も、学部教育は、基本的には日本のそれと類似する。が、卒業後の専門医制度がきちんとしており、それを底支えする専門教育・研究も充実している。僕が学んだロンドン大学王立獣医大学大学院・ロンドン動物学会共同開講の野生動物医学専門職修士課程などが、今は、アフリカやアジアにも出来つつある。また、数年前、豪州の野生動物疾病学会オーストレーシア・セクションの学術集会に参加したが、彼の地（オージーとキウイガイたち）では、鳥類専門医が300名以上登録されているという。その影響は、かつての植民地である東南アジアにも波及し、この分野の専門医もアジアにどんどん誕生している。

　日本では旧態依然。獣医学部に関しては、昨年、政争の具として扱われたので、ほんの少し、問題点を明らかにし、改革の機会があった。だが、すでに国民は、もう忘れつつある。アカデミックな部分でも、鳥は、鳥インフルエンザのような感染症の元凶のような捉え方をされ、一方で、エコテロのような愛護が先鋭化し、両者のバランスが取れていない。これを解決するのが鳥類医学であるが、これが、前述のような背景なのでにっちもさっちもいかない。解決の糸口は鳥類臨床研究会の若い先生方や、貴店のような方々のチャレンジである。

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浅川満彦　

酪農学園大学 獣医学群 獣医保健看護学類（2017年4月～2020年3月）

臨床動物看護学（寄生虫病）・野生動物医学　担当　教授

獣医師/野生動物医学修士MScWAH(UK)/博士(獣医学)/日本野生動物医学会認定専門医