支援総額
目標金額 750,000円
- 支援者
- 62人
- 募集終了日
- 2018年11月30日
【カウントダウン5】白いカレー
11月22日に投稿した記事の中に、 厚生労働省の児童養護施設入所児童等調査結果(平成25年2月1日) のことを少し紹介しました。
これを読まれた方から、「自分が思っている以上に障害を抱えた子どもがいるのですね」とコメントを頂きました。
一般的に、「障害を抱えている」という言葉を聞いたり見たりすると、体の機能に何らかの障害を抱えているとか、発達の遅れがあるとか、そんなことを想像するかもしれません。
下のグラフを見ても分かるように、児童養護施設に入所する子ども達には、上記のような障害以外に、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、広範性発達障害、その他の心身障害などを抱えた子どもが入所しています。
私がまだ現場で児童指導員として勤務していた頃の話です。
広範性発達障害の疑いのある子どもが入所してきました。
その子は、例えば、「ちょっと待っていてね」の『ちょっと』が一体どれぐらいの時間を意味するのかがよく分からなかったり
自分が決めた段取り通りに物事が進まなければ、イライラしたり時にはパニック状態になったり
共に散歩に行った時「歩き疲れて足が棒のようだ」と私が疲れたという意思表示を示したところ、「えっ?春ちゃんの足って棒なの?」と言葉を額面通りに受け止めてしまったり
何かの刺激に即反応し、注意が疎かになったり集中が続かなかったり
他者との円滑なコミュニケーションを図ることが難しい感じの子どもでした。
小学校2年生ぐらいの時だったかと思いますが、算数の宿題で直角三角形を探しなさいというものが出された時
「春ちゃん、直角三角形が見つかりません」と泣きながら訴えてきたことがありました。
プリントを見ると、上下反転した直角三角形、左右反転した三角形などがいくつか描かれていました。
彼には、上下反転した直角三角形が同じものであると理解できなかったのです。
彼になんとか理解してもらいたいという思いで、考えられる手を尽くしましたが、彼にはどうしても理解できませんでした。
結局、半ば強引に「答えを私の言う通りに書いておきなさい」と言い答えを教え宿題を終わらせました。
彼は私のやり方が受け入れられず、さめざめと泣いていました。
そんな彼も高学年になり、生活の中で様々なことを吸収し、少しずつ成長を感じることもありました。
ある日、私が夕食のカレーライスの仕込みをしているところにやってきて
「ぼくも作る」「最後の仕上げはぼくに任せてほしい」といいました。
私は「君は『ちょっと』がよく分からないけど、料理って『ちょっと』がすごくでてくるけど大丈夫?」と問いかけると、彼は満面の笑みで「カレーぐらい簡単に作れる」と自信ありげでした。
その時偶然、TVからバーモンドカレーのCMが流れ、「リンゴと蜂蜜云々・・・」という言葉を聞きつけた彼は、「カレーにはリンゴと蜂蜜が必要だ」と私に要求してきました。
『自分がこうだ』と思ったことを譲れない性分ですので、私は「厨房に行ってあるかどうか聞いてくるとよい」と彼に促しました。
たまたまですが、厨房にはリンゴと蜂蜜があり、彼はたやすく望みの品をGETすることができました。
さらに、厨房職員から「カレーには牛乳をちょっと入れると味がまろやかになって美味しくなる」とアドバイスをもらいました。
新たな刺激を受けた彼は私に対して「とても良いことを聞いてきた」とニコニコしています。
私は内心『また余計な情報を手に入れて・・・』と思いましたが、彼に牛乳を渡しました。
渡した手渡した牛乳は1リッターのパックでした。
彼は自分なりに考えながら、ちょっとづつ牛乳を鍋に足していきます。
しかしどの程度の量を入れれば良いのかわからないので、結局、1リッターすべて鍋の中に入れてしまいました。
その後、彼はカレーのルウを足していき、「まあこんなものかな」と満足そうにうなづいています。
カレーのにおいがする白い何かが出来上がっていました。
夕食の時間、お腹を空かせた中高生たちがカレーの匂いに釣られて食卓に集まってきました。
カレーの匂いがする白い何かを見た彼らの顔が一瞬にして疑問符だらけの顔に変わります。
私は事の顛末を皆に語り夕食を食べようと促しました。
ほかの子どもたちは、カレーを作った子の特徴をよく理解していました。
ですから、「一生懸命頑張ってくれたんだね」と労いつつ、どうみても美味しそうではないカレーの匂いのする白い何かについて、必要以上に言及することを控えてくれました。
カレーを作った子は、『自分が一生懸命作ったから、みんな大絶賛してくれるに違いない』と、周囲の反応をじっと見て、「美味しい!」という言葉を待っていました。
しかし、彼が期待する言葉を誰一人として口にしません。
みな黙々と、時に首をかしげながらカレーを口に運んでいます。
みんなの様子をじっとを見ていた彼の表情はだんだんと曇っていきました。
その時です。
高校生の男の子が「これは一生の思い出になるカレーだね」と言葉を発しました。
決してカレーが美味しいと評価したわけではなかったのですが、高校生は最大限の賛辞をどう表現するか迷った挙句、このような言葉を使ったようでした。
その言葉を聞いた男の子は、顔をパッと上げ、満面の笑みを浮かべていました。
その様子を見て私は『子どもたちと共に生きるというのは、こういう場面に出会えるということなのか!』と心が強く揺さぶられました。
・・・
・・・
厚生労働省が平成29年12月に報告した「社会的養護の現状について」によると、全国615か所の児童養護施設に、26,449人の子どもが生活しています。
私たち児童養護施設職員は、24時間365日の暮らしの中で、日常のほんの些細な出来事の中に喜びを見つけ、子ども成長を感じ、共に生きています。
今日もどこかで、こんな小さな物語が紡がれているのです。
春田真樹
リターン
3,000円
【3千円応援コース】ご支援のほぼ全額が子ども達のために充てられます
*リターンの経費が少ない分、手数料を除くほぼ全額をプロジェクト実施のために充てさせていただきます。あたたかい応援、ありがとうございます。
・サンクスレター
・事業報告書
- 支援者
- 30人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2019年5月
10,000円
【1万円応援コース】ご支援のほぼ全額が子ども達のために充てられます
*リターンの経費が少ない分、手数料を除くほぼ全額をプロジェクト実施のために充てさせていただきます。あたたかい応援、ありがとうございます。
・サンクスレター
・事業報告書
- 支援者
- 24人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2019年5月
30,000円
【3万円応援コース】ご支援のほぼ全額が子ども達のために充てられます
*リターンの経費が少ない分、手数料を除くほぼ全額をプロジェクト実施のために充てさせていただきます。あたたかい応援、ありがとうございます。
・サンクスレター
・事業報告書
- 支援者
- 5人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2019年5月
50,000円
【5万円応援コース】ご支援のほぼ全額がプロジェクトのために充てられます
*リターンの経費が少ない分、手数料を除くほぼ全額をプロジェクト実施のために充てさせていただきます。あたたかい応援、ありがとうございます。
・サンクスレター
・事業報告書
- 支援者
- 3人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2019年5月
100,000円
【10万円応援コース】ご支援のほぼ全額が子ども達のために充てられます
*リターンの経費が少ない分、手数料を除くほぼ全額をプロジェクト実施のために充てさせていただきます。あたたかい応援、ありがとうございます。
・サンクスレター
・事業報告書
- 支援者
- 1人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2019年5月