【わが子、琢磨の紹介】
久し振りにおなかに宿った待望の第2子の病気が分かったのは、まだ梅雨も明けきらぬ去年の7月のことでした。それまで、軽い妊娠糖尿病にはなっていたものの、妊娠経過は至って順調。ところが、ある日の妊婦健診で若干羊水が多いとの指摘があり、市内の大学病院で精密検査を行うことになったのです。「基準より少し、多いというだけですから。異常が見つからずにそのまま戻ってこられる人も多いんですよ」という、当時の主治医の言葉通りに行くものだと、何の疑いもなく思っていました。

検査結果は思いもよらないものでした。耳が小さく通常より下についている、揺り椅子型の足、オーバーラッピングフィンガー、そして心室中隔欠損…。これらの特徴から、おなかの子は18トリソミーの可能性が高いとのことでした。ドラマにもなった漫画「コウノドリ」の読者であった私は、おおよそではありますが、この後おなかの子がどんな運命をたどるのかを思い、絶望しました。
 
そして、第2子の誕生を誰よりも喜び、お姉ちゃんになる日を指折り数えて待っていた長女を思いました。翌年には小学生になる大事な時期に、一生消えない心の傷を負わせてしまうかもしれない。それらの思いが頭をぐるぐるして、何の言葉も発せられず、動けず…。診察室では文字通り、目の前が真っ暗になったような、永遠とも感じられる長い苦しみを感じました。怒涛のようにあふれかえった悲しみがかえって涙腺に蓋をしたようで、涙は一滴も出ませんでした。
 
しかし出産予定日は9月中旬に迫っており、私たちには無事に出産するために全力を尽くす以外に、道はありませんでした。幸い、検査を受けた大学病院は県内有数の周産期医療センターで、週数問わずハイリスク妊婦を受け入れていたので、そのまま転院して出産後も見ていただくことになりました。そこから毎週のように、妊婦健診や検査を受ける日々が始まりました。羊水過多で週数相当以上に大きくなったおなかを抱えて、病院まで電車やバスを乗り継いでいくのは苦しかったです。ただただ、おなかの子を無事にこの世に送り出してあげたいという気持ちがあればこそ、どうにかやってこられたのでした。
出産を前に、両親からの最初の贈り物として名前を考えました。性別は転院前から男の子だと言われておりましたので、悩みに悩んだ結果「琢磨(たくま)」と名づけることにしました。四字熟語の「切磋琢磨」からとりました。生きていく中で大事だと思える人に沢山出会い、お互いに磨きあえるように。また、たとえ短くとも自分の人生を「たくま」しく生き抜いて欲しい、という2つの願いを込めています。

検査により、先天性横隔膜ヘルニアであることもわかりました。出産後呼吸が不安定になる可能性が高く、無事に産まれてきてもすぐに亡くなってしまうかもしれないとのことでした。そのため、産科とNICUの担当医がそろっている平日に誘発分娩することが決まりました。当時は週末ごとに台風が日本列島に上陸しているような気候で、台風が近づくたびにどうかまだ産気づいてくれるなとひたすらに願っていました。誘発分娩予定日の9月20日の直前、3連休に台風が来たときは本当にヒヤヒヤしました。それでも琢磨は、おなかの中で待っていてくれました。体重も、推定体重2,500gを超えるほど大きくなりました。生まれる前から病気と闘いながらも、家族思いの優しくて強い子なのだと既に誇らしくさえありました。

予定通り9月20日に、約4時間という安産で琢磨は産まれました。産声は聞かせてくれましたが、自発呼吸が弱くすぐにNICUへ。私の入院中は、24時間NICUでの面会が可能でした。幸い、安産だったからか産んだ当日から一人で歩くことができ、搾った母乳を持ってせっせと通いました。琢磨は一度は挿管されたものの抜管でき、点滴も取れて、私の入院中に初めてだっこをしました。ずっしりと重く温かく、ふわふわですべすべで…いつまでも抱っこしたくなるかわいらしい男の子でした。ずっと会いたかった宝物でした。

琢磨は生後3か月を過ぎた今も、NICUで頑張っています。とても頑張り屋なので、逆に私たちが励まされることがあるくらいです。お風呂が大好きで、沐浴中は生き生きとした表情を見せてくれます。いつか家族4人で暮らせる日が来るのを信じて、応援しに行っています。
 
【みんなへ】
両祖父母、長女の保育園の先生方、琢磨を受け入れてくださった病院の先生、担当看護師の皆さん、話を聞いてくださった区の保健師さん、両親の会社の同僚、SNSで琢磨の心配をしてくださっている皆さん…たくさんの人の手助けがあって、琢磨は今日も生きています。琢磨の病気が分かってからというもの、人とのつながりのありがたみを身に染みて感じています。少しずつでも返していきたいです。
 
【18トリソミーの仲間へ】
琢磨が生まれる前から、藁をもすがる思いでネットの海を検索し、18トリソミーの情報を探していました。元気で暮らしていらっしゃるかわいい18っこのお兄ちゃん、お姉ちゃんのお写真、そしてご両親が書かれる愛情たっぷりのウェブログやInstagramの文章に、どれだけ救われたか知りません。これからも一定の確率で18っこは生まれるのでしょうが、皆さんがただそこにいるだけで、生きていてくれるだけで、勇気や希望が湧いてくる人はこれからもきっといます。18っこのお子さんが一日でも長く心穏やかに過ごされ、ご家族との思い出を胸に刻めるよう願っております。
 
【写真について】
家族が一番大好きな、お風呂に入っているときの琢磨です。どんなに不機嫌でも、ベビーバスの中ではおめめぱっちりで穏やかな顔を見せてくれます。

 

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