先週末、伝統サバニ大工・嶺井さんと海人丸二号設計のミーティングを行いました。嶺井さんは沖縄本島、南端の奥武島(おうじま)に住んでおり僕が暮らす名護市安部(あぶ)からは車で2時間かかりますが、嶺井一家でわざわざ海人丸一号が保管されている安部の砂浜まで視察に来てくれたり、逆に僕が2時間車を飛ばして奥武島に足を運びながらこれまでに3度話し合いを重ね、僕がイメージする構想を図面に落とす作業をしてきました。飫肥杉製材を前にいよいよ具体的な寸法を決めました。
 
嶺井さんは伝統ハーレー船といって沖縄ではほぼ毎週末、どこかの港で開催されている夏の祭典”船漕ぎ競争”のサバニ船をこれまでに何百隻と造った方で、僕が以前所属していたチーム匠も、そしてそれ以外の有名ハーレーチームも多くのパドラーから絶対的信頼を受けている伝統大工さんです。僕もこれまでオーシャンアスリートとしてサーフスキーやアウトリガーカヌー、セーリングカヌー、カイトサーフィン、帆かけサバニ、そしてハワイ伝統航海カヌー”ホクレア号”と、その他本当に沢山の海遊びを経験してきました。
でも、海人丸二号の図面をつくる作業となると、簡単にはいきません。目的は競争ではなく、乗組員と食料、水を安全に島から島に運ぶこと。航海カヌーだからです。
誰かが何かを教えてくれるわけでもなく、参考書があるわけでもありません。全てこれまで海を渡った経験から想像力を働かせるしかないのです。造る嶺井さんと、使う僕の間で意見交換していくと色んなアイディアがどんどん出てきます。何が正しくて間違っているのかは誰にもわかりません。とにかく安全に海を渡る為には一程度のスピードも必要ですし、安定性、操作性、そして耐久性も必要です。
 
海域のコンディションは?そして海に出る季節は?将来的に沖縄から中国への大航海プロジェクトに繋げていきたいと思っている僕ですが、まずはクルーが安全に沖縄から九州までの航海トレーニングができることを優先して建造を進めています。サバニ本体が出来上がり進水式を行った次は、二隻の本体を組み合わせる手作業が待っています。それも同じように経験からのアイディアを形にしていく作業です。
 
 
おそらく祖先たちが人力で海を渡った時代は今のようにインターネットで何でも検索できる便利な世の中ではありませんでした。すなわち誰かが打ち出した指針に対して共感する人たちがそれぞれの経験からアイディアを出し合って、ああでもない、こうでもない、と言いながら想いを形にしていったはずです。つい先月、クラウドファンド”Readyfor”で多くの方から共感をいただき目標金額を達成した途端、予定していた大城大工さんが協力できないという事態が発生しましたが、チーム匠の島袋さん他新たな協力者のお陰で今の嶺井さんに繋がりました。
大きなスポンサーやマスメディアに頼らないこの海人丸プロジェクトは確かに時間と労力がかかって苦労は計り知れませんけど、そういう人と人とのやり取りが僕は楽しくて仕方ありません。嶺井家も、僕の義父、玉城家も海人(漁師)一家です。いつも打ち合わせの時にはマグロの刺身を食べさせてくれますが、モロカイ世界大会に向けてハードなトレーニングを繰り返す僕にとってはまさに最高のアスリート食です(笑) そうやってなんとか手探りしながら図面は(ほぼ)出来上がりました。
 
 
そして上の映像をご覧になればよく分かるとおり、一昨日製材所で飫肥杉を切り出す作業を行っている間、僕は色んな思い出が脳裏を駆け巡りました。
 
沖縄から宮崎まで1000キロの海の道を伴走船なしで渡って杉を探しに行ったこと。そして3年前、宮崎日南の井上さんから寄付を受けて地元中学生たちと一緒に伐採したこと。沖縄に運搬後、大型の台風によって浸水し腐食が進んでしまって途方に暮れたこと。蛇行しながらも全てが今に繋がっています。外側の”白身部分”はかなり腐食されていましたが、造船に必要な”赤身部分”はまだまだ健康そのものでした。井上さんのおじいさんの代から3世代に渡って大切に育てられてきた大樹は、やはり「芯が強い。」です。僕も自ら、そして背中を追いかけてくれる子供達にいつも強靭な心の軸を鍛えるよう日々努力を重ねたいと思います。
 
今回、サバニの底板となる部分の製材が終わったことで、これまでずっと懸念してきた飫肥杉の腐食問題はクリアになりましたこと改めてご報告いたします。いよいよ来8月からサバニの横部分(そば板)の加工作業が開始されます。今月末は僕は自己30回目の世界大会でハワイに旅立ちますが、帰国後は奥武島の嶺井さんと二人三脚で建造作業に取り組みます。海人丸二号建造&海人体験・海遊びワークショップに参加される方はどうぞお楽しみにしてください!!参加されない方もできる限り進行状況を共有できますよう動画や写真をアップしていきますので今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
Keep paddling. Taku
 
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