旅する茶白猫のお話（その2）

 

近所のマンションのゴミ捨て場でお腹を空かせていた茶白猫に、私は一度だけご飯をあげてしまいました。

 

そんな出来事から半年ほどが過ぎ去ったある日、私の自宅の駐車場に例の茶白猫が姿を現したのです。

 

この頃の私は自宅の駐車場に住みついてしまった「水玉」という白黒猫のお世話をしていました。

 

⇒水玉のお話はこちら

 

 

そのため、駐車場で足元に現れた猫影はてっきり水玉だと思っていたのですが、いざ覗き込んでみたら茶白猫がいて驚いた記憶があります。

 

しかも、右耳にカットがあることを考えると、半年前に近所のマンションでご飯をあげてしまった例の茶白猫に間違いありません。

 

しかし、私の家からあの時ご飯をあげたマンションまでは、700mくらいはあるはずです。

 

700mは人間の足なら容易い移動距離ですが、猫にとってはそれなりに厳しい道のりだと思えます。

 

さらに、車通りの多い道をいくつか越えなくてはならないので、猫が無事に辿り着くとは考えにくいのです。

 

こう考えると、たまたま同じ右耳にカットがあり、似たような大きさと毛色をしているだけの別の猫がやってきた可能性の方が高いかもしれない、と思いながらしばらく茶白猫の様子を窺っていました。

 

 

すると、茶白猫は私の顔を見て、ひと言「ニャア」と鳴きました。

 

少し甲高く響くその声は、あの日ゴミ捨て場で聞いた声と寸分違わぬ声だったのです。

 

やはり、私の元にやってきた茶白猫は、例の彼女で間違いないでしょう。

 

どういう経緯でここまで来たのかは分かりませんが、無事でいてくれたことは嬉しいことです。

 

私はタッパーにご飯を入れて、車の下で食べさせてあげました。

 

 

茶白猫はご飯を済ませると、足早に私の家の裏手にある茂みの方へ消えていきました。

 

その日を境にして、茶白猫は頻繁に私のところへご飯を食べに来るようになりました。

 

ご飯を食べに来るのは良いのですが、先住猫である水玉と顔を合わせるたびに威嚇し合っているのには、本当に手を焼かされました。

 

同じメス同士のせいで相性が悪いのか、近くで一緒にご飯を食べてくれないので、2匹同時にやってきてしまうとお世話の手間が2倍になってしまいます。

 

仕方ないので、1匹を食べさせ終えたら1匹を裏の茂みに帰して、その後残りの1匹に食べさせる、という余計な手順が必要になりました。

 

 

こうして私の家の駐車場に住みついた茶白猫ですが、レギュラーメンバーになったからには、名前を付けてあげなくてはいけません。

 

いろいろと考えてみたのですが、茶白猫の胸元がスカーフを巻いているような柄に見えたため、

「スカーフ」→「襟巻き」→「えりまき」→「えり」

 

という流れから、「エリ」ちゃんという名前に決めました。

 

 

女の子らしい響きで呼びやすいですし、なかなか良い名前を付けてあげられたと思っています。

 

出会いから再開まで全てが偶然の産物ではありましたが、こうして私はエリちゃんと関わりを深めることになったのでした。

 

（つづく）