高齢猫を看取るための保護猫シェルターの設立にご支援をお願いします！

 

今から遡ること4年ほど前のことです。

 

その当時、私は自宅から少し距離がある場所へ、仕事を終えてから外猫のお世話に出掛けていました。

 

そこは車で30分以上掛かる場所だったため、お世話を終えて家に帰るころには日付が変わってしまうことも珍しくなく、その日も家路についたのは深夜0時を過ぎていたのです。

 

そして、ようやく自宅の近くまで着いた時、近くにあるマンションの陰で何かが動くのが見えました。

 

私はブレーキを踏んで動いた物に注意を払っていたところ、マンションの入口近くに茶白の猫が歩いているのが見えました。

 

茶白の猫が過ぎ去ってから車を発進させようと様子を見ていると、茶白の猫はマンションの脇にあるゴミ捨て場を漁りはじめたのです。

 

次の日がゴミの収集日だったため、マンションの住人が深夜になってゴミを捨てていたのでしょう。

 

茶白の猫はゴミ袋の匂いを嗅ぎまわりながら、所在なく歩き回っていました。

 

私はどうしても気になってしまい、車を降りて茶白の猫に近づいてみました。

 

茶白の猫には向かって右側に耳カットがあり、不妊手術済みのメス猫だと分かりました。

 

誰がTNRしてくれたのかは分かりませんが、地域猫としてTNRするくらいですから、おそらくご飯などのお世話をしている人がいるはずです。

 

それなのに、物欲しげにゴミ捨て場を漁っているということは、もしかすると、その日はご飯にありつけなかったのか、それとも他の強い猫に餌場を追い出されてしまったのか、いずれにしても空腹に耐えきれずにゴミ捨て場へやってきたのでしょう。

 

私は茶白の猫の悲しい姿を見て、大きく心が揺れました。

 

ここでご飯をあげれば、茶白の猫の空腹は満たされるでしょうし、ゴミ捨て場が荒らされる被害を抑止できます。

 

しかし、一時の施しを猫にあげることは、何の解決にもなりません。

 

もしご飯をあげるのなら、毎日きちんとお世話をする覚悟が必要ですが、ここは他所のマンションの敷地内ですし、私が茶白の猫を毎日お世話するのは不可能です。

 

つまり、どんなに茶白の猫が飢えていたとしても、自分が責任を取れないのなら安易にご飯をあげるべきではありません。

 

一時の感情に流されて軽率な行動をしてしまうのは、人のためにも猫のためにもなりませんし、単なる自己満足に終わってしまいます。

 

私は自分に言い聞かせるようにして、車に歩みを戻しました。

 

しかし、ダメでした。

 

どんなに頭の中で理解できていても、心と身体が付いていかないのです。

 

私は外猫用のタッパーにウェットフードやちゅーるをたっぷり入れて、ゴミ捨て場から少し離れた茂みに置いてあげました。

 

私がタッパーを置いて車の方に戻ると、少し離れた場所で様子を見ていた茶白の猫は小走りに茂みにやってきてご飯を食べはじめました。

 

よほどお腹が空いていたのでしょう、茶白の猫は無我夢中で5分ほど食べ続けた後、ゆっくりとした足取りで再びマンションの陰へと姿を消していきました。

 

 

私は綺麗に空になったタッパーを回収して、再び家路を急ぎました。

 

その後、茶白の猫が気になって帰宅が夜遅い時は同じ道を通るようにしていましたが、例のマンションの周りで再び出会うことはありませんでした。

 

そして半年ほどが経ち、茶白の猫のことをすっかり忘れていたある日、私の家の駐車場に右耳にカットのある茶白の猫が姿を現したのです。

 

（つづく）