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奨励賞を受賞した長編小説「華麗なる孤独」を出版したい

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支援総額

95,000

目標金額 800,000円

支援者
18人
募集終了日
2018年7月26日

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2018年07月10日 03:52

連載小説「最期の微笑み」第一章①

                 1

 

  柔らかな春の陽射しに背を向け、ガーソン・ストーンはテーブルに寄りかかるように座り、あらぬほうを見て祈りをささげていた。

 組まれた手の中には毒の入った小瓶が汗で濡れている。これから自分がしようとしていることを思うと、罪悪感と緊張で胸がはちきれそうに興奮していた。

 ガーソンは暴力をふるうことすらできない温厚な性格だった。貧しい生活を強いられてはきたが、持ち前の明るさとユーモアで自分を不幸とも思わなかった。

 両親のいない彼は幼いころから働き、時にはテムズ川を渡り歩いてポーカーをし、その賭金で食べ物にありつくことも珍しくはなかった。

 だがどうしてもそれでは暮らしていかれなくなったある日、彼はスリを試みた。

 財布を奪ったまでは良かったが、あえなくその財布の持ち主の側近に捕まった。絶対に警察に突き出されると覚悟を決めた時、相手は優しく微笑んで言った。

「うちへ来ないかね」

 その老紳士はアルセイド・ホイックリ―。上流階級の貴族だった。

 彼はガーソンを迎え入れると教養を身につけさせた。字の読めないガーソンは新聞を読むこともできず、20世紀に入りこのイギリスが産業で世界を驚かせ、軍事力によって数々の国を手中に収めていることも知らなかった。

 毎日が新鮮でガーソンはアルセイドに言葉では言い表せないほどの感謝を覚えた。厳しい労働をしなくても飢えに苦しまずに済むことは、彼にとってまさに天国だったのだ。

 アルセイドがどんなに自分に冷たく当たっても、ガーソンは懸命に彼に尽くした。その甲斐があってか、アルセイドもガーソンに対して無下な態度をとることはなくなっていった。

 やがてふたりは親子のように会話を楽しむようになっていった。親のないガーソンはアルセイドとの出会いに幸福を感じていた。

 その矢先の出来事だった。

「ガーソン、おまえが来てからだいぶ経った。だが元はと言えば私達は赤の他人だ。いざという時におまえは私に忠誠を誓えるか」

 突然のアルセイドの言葉にガーソンは困惑した。自分の彼に対する感謝と愛情が伝わっていなかったのだと悲しみが胸中を支配した。

「ええ。もちろんです」

 ガーソンの視線はまっすぐにアルセイドに届いた。だがアルセイドはガーソンに背を向け、窓の外を見やった。

「私は人間嫌いになって久しい。おまえをうちに連れてきたのはある仕事をしてもらいたかったからだ。そのためだけに拾ってきた」

 心無い言葉にガーソンは動揺した。震える胸を抑えようとシャツを握りしめた。

「だがガーソン、おまえは私によく尽くしてくれている。本当に私に忠誠を誓えるなら、この仕事をやり遂げた後も私と生涯を一緒に暮らしてほしいと思っている」

「どのような仕事でも大丈夫です。僕はずっと過酷な労働に耐えてきたんですから」

「それならガーソン・・」

 アルセイドは振り返ると不気味に瞳を光らせ、ガーソンの顔を覗き込んだ。

「お前は私のために人を殺せるか」

 ガーソンは絶句してただ相手の顔をまじまじと見た。エメラルドグリーンの瞳は凄みに満ちていて、とても冗談を言っているとは思えない。

「なぜ、そんな恐ろしいことを」

 震える相手を一瞥して、アルセイドはふっと微笑を浮かべた。

「一族のためだ。理由はそれで十分だろう」

 ガーソンは悲しみと恐怖でめまいを覚えた。今まで慕ってきた恩人がまさかこんなに冷徹な人間だとは思わなかったのだ。

 しかもこのような話を聞いたからにはただでは済まないだろう。彼に選択の余地はなかった。

 自分の運命を悟ったガーソンは震える唇を動かした。

「僕は・・旦那様に忠誠を誓います」

「よく言ってくれた」

 アルセイドは相手の手をとり、両手で固い握手をした。

「なに、危険は伴うが決して難しい仕事ではない。実は今日呼んでいる殺し屋をこの毒で殺してほしいのだ」

「殺し屋を殺すなんて、簡単なことではないと思いますが」

 ガーソンは毒の入った小瓶を受け取りながらうつむいて言った。

「確かに彼は凄腕の殺し屋だ。何度か依頼をしたが失敗をしたことがない。証拠も残さずに自分の影すらも消してしまう男だ。だがまさか依頼主の見届け役に自分が殺されるとは思ってはいまい。そばにいれば毒など簡単に盛ることができるだろう」

「わかりました。僕は見届け役としてその彼と同行をすればいいんですね」

「そうだ。彼に任せた依頼が終了した直後に実行に移ってほしい。何も心配することはない。万事がうまくいくように手配もしてある。おまえは毒を飲ませるだけでいい。飲ませたら何も考えずにそこから逃げるんだ」

 アルセイドはガーソンの両肩を強く握った。

「任せたぞ。これはわがホイックリ―家の命運がかかっている。忠誠を誓ったおまえにしか頼めない」

 その言葉にガーソンは微かに笑んで見せた。今までの感謝を返す時がやってきたのだ。

 だがその方法はあまりにも惨いものだった。

 殺さなければならない殺し屋は、もうすでに隣の部屋に通されてアルセイドから依頼を受けている最中だ。もはやガーソンに逃げ道は残されてはいなかった。

 なぜ人を殺すことなど引き受けてしまったのだろう。

 ガーソンの胸中は後悔でいっぱいだった。汗ばんだ手を開くと手渡された毒がしっかりとそこにある。それはこれから自分が人殺しの仲間入りをするという証でもあった。

 唯一彼の救いは相手がその人殺しだということだった。善人を殺すよりはいくらか良心は痛まないかもしれない。だが何にせよ、自分が人としての価値をなくすことに変わりはなかった。

 ガーソンは再び手を組み、何かの間違いであってほしいと願った。

 

リターン

3,000


ありがとう付箋+コラボしおり

ありがとう付箋+コラボしおり

・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!

以上2点をお届けします。

支援者
5人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

5,000


発売前の本+付箋+ブックカバー+コラボしおり+コラボブックカバー

発売前の本+付箋+ブックカバー+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー1枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上5点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
12人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

10,000


発売前の本+付箋+ブックカバー+本編特別編+コラボしおり+コラボブックカバー

発売前の本+付箋+ブックカバー+本編特別編+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・違うラストシーンを描いた本編のアナザーストーリー
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー2枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上6点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
0人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

10,000


発売前の本+付箋+ブックカバー+中編小説+コラボしおり+コラボブックカバー

発売前の本+付箋+ブックカバー+中編小説+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・出版前の中編小説
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー2枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上6点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
0人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

20,000


発売前の本+付箋+ブックカバー+本編特別編+スペシャルサンクス+コラボしおり+コラボブックカバー

発売前の本+付箋+ブックカバー+本編特別編+スペシャルサンクス+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・違うラストシーンを描いた本編のアナザーストーリー
・本に支援者の方のお名前を記名
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー3枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上7点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
1人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

20,000


発売前の本+付箋+ブックカバー+中編小説+スペシャルサンクス+コラボしおり+コラボブックカバー

発売前の本+付箋+ブックカバー+中編小説+スペシャルサンクス+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・違うラストシーンを描いた本編のアナザーストーリー
・出版前の中編小説をお届けします
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー3枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上7点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
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在庫数
制限なし
発送完了予定月
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30,000


付箋+発売前の本+ブックカバー+本編特別編+中編小説+コラボしおり+コラボブックカバー

付箋+発売前の本+ブックカバー+本編特別編+中編小説+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・違うラストシーンを描いた本編のアナザーストーリー
・出版前の中編小説をお届けします
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー3枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上7点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
0人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

50,000


付箋+発売前の本+ブックカバー+本編特別編+中編小説+お名前記載+コラボしおり+コラボブックカバー

付箋+発売前の本+ブックカバー+本編特別編+中編小説+お名前記載+コラボしおり+コラボブックカバー

・発売2か月前の本
・感謝の気持ちを込めた「ありがとう」付箋
・コットン地のブックカバー(ミッドナイトブルー)
・違うラストシーンを描いた本編のアナザーストーリー
・出版前の中編小説
・本に支援者の方のお名前を記名
・New!! niccoaccoさんとのコラボしおりをお送りします!
・New!! niccoaccoのコラボブックカバー3枚
※コラボブックカバーは、ご注文の際に①しずくちゃん柄②シルクハット柄③マスク柄からお好きな柄をご記入ください。

以上8点をお届けします。
※サインをご希望の際は購入時にご記入ください

支援者
0人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年12月

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