昨年、私が寄稿を依頼された本がオーストラリア国立大学出版(Australian National University Press=ANU Press)からIndigenous Efflorescence: Beyond Revitalization in Sapmi and Ainu Mosirと題して出版されました。タイトルは、先住民族の生き方や文化の開花といった意味で、北欧のサーミ民族、アイヌ民族の二つの先住民族の現代の動向などに焦点が当てられています。私はRevival of Salmon Resources and Restoration of a Traditional Ritual of the Ainu, the Indigenous People of Japan (サケの再帰と、日本の先住民族アイヌの伝統儀式の復活)と題して、1982年におよそ100年ぶりにサケを迎えるアイヌ民族の伝統儀式が札幌の豊平川で行われるまでの歴史や、それに取り組んだアイヌ民族の思いなどをつづっています。儀式復活の中心人物である豊川重雄エカシ(長老)は木彫りをしていた方で、よく札幌市内の工房におじゃまさせていただきました。儀式のために自らサケを獲っていたのですが、「参加してくれた人に一本ずつサケを分けてあげたい。そういう儀式にしたい」とおっしゃっていました。獲れた恵みを全員で分配するというのもアイヌ民族の大事な考え方です。そして、札幌市内で儀式が復活した背景には、カムバックサーモン運動という、川の環境を良くして自然資源の再帰を促そうという市民運動があったことにも触れています。札幌という200万都市のど真ん中を流れる川に数千匹のサケが帰ってきて、産卵し、また子孫が海に帰っていく。その傍らでアイヌ民族の伝統儀式が行われる―こうした一連のことが1980年代以降、進んできた。その一端を英文で紹介しました。

 本の電子版はANU PressのHPからインターネットを通じて無料ダウンロードもできます。紙の本の購入は50オーストラリアドルですが、まだアマゾンなどでは扱っていないようです。

 2019年1月15日

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