プロジェクト概要

 

▼自己紹介

 

北海道生まれの北海道育ち。アイヌ民族博物館の学芸員をへて現在、北海道新聞の編集委員をしています。『アイヌを生きる 文化を継ぐ―母キナフチと娘京子の物語』(東京・大村書店)をはじめ、アイヌ文化や歴史の著書が3冊あります。英国オックスフォード大学での研究を下地にした科学者の倫理にかかわる著書『人がヒトをデザインする—遺伝子改良は許されるか』(京都・ナカニシヤ出版)、『破壊者のトラウマ—原爆科学者とパイロットの数奇な運命』(東京・未來社)もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼プロジェクトを立ち上げたきっかけ

 

 

 はじめまして、小坂洋右と申します。生まれ育った北海道の地元新聞社の記者として長年、アイヌ民族にかかわるさまざまな取材に携わってきました。スキーに最高のパウダースノーやおいしい海・山の幸、美瑛のラベンダー畑や大雪山、知床、摩周湖など厳しくも美しい風景を求めてたくさんの外国人が北海道を訪れるようになりましたが、本来、紹介されるべきアイヌ民族の文化や歴史について英語で紹介する本がほとんど見当たらないのが現状です。とりわけ、北海道の豊かな自然の中で培われてきた精神文化は、国内ばかりでなく、海外の人たちにもきっと感銘を与えるはず―という確信とともに、「誰か」がしてくれるのを待つのではなく、自分がやらないといけない、国内で出版する以上、日本語版と英語版を併せた一冊の出版が一番いいのではと思うに至りました。その思いを、釧路で出版事業も行う藤田印刷の藤田卓也社長が汲んでくださり、「アイヌ文化世界発信プロジェクト」がスタートを切ることになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼プロジェクトの内容

 

 今プロジェクトで出版する本の中身は、おおまかに次の4つになります。

 アイヌ民族の豊かな「物語世界」、山野、海、川でシカやクマなどの野生動物を授かり、山菜を摘み、サケや貝を獲ってきた「伝統生活に根ざした精神文化」、日本人との「歴史」、歌や踊り、語りなどが脚光を浴び、言葉や文化の復興、民族としての復権を目指す「こんにちの姿」です。

 アイヌ民族の物語世界はとっても多彩で、そこでは動物や鳥、貝といった生き物や臼、舟といった人間の道具までが、人と積極的にかかわり、時には人間の女性のお婿(むこ)さんになったりもします。19歳の若さで亡くなった知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』に13編が収められており、今プロジェクトでは幸恵さんの胸の内を日記をひもときながらお伝えする一方、13編以外の伝承、例えばヒグマとシャチの夫婦の間に入った亀裂を人間の男性が修復するといったアイヌ民族ならではのお話も採録しています。

 取り上げるお話には、人間の若い女性とクマ(の神さま)の結婚物語もあります。私は北大在籍中の30年以上前、アラスカで1カ月以上にわたる考古学・人類学調査に参加しましたが、そのアラスカにも同様に人間の娘がクマと結婚する物語があって驚かされました。なぜ、遠い北米にも類似の物語があるのでしょうか。それはどちらも自然が豊かで、伝統的にその恵みで人々が暮らしてきたからです。今回、日本語版と英語版を一冊にして出すのは、世界各地に共通の文化があることを広く内外に知ってもらう意図もあります。アイヌ文化に対しては、かねてから海外の先住民族や研究者から強い関心が持たれてきましたが、それにも応えることになります。

 アラスカの側から先住民族のさまざまな物語や精神文化を発信してくれていたのが動物写真家の星野道夫さんでした。しかし、ワタリガラスの神話のルーツをシベリアに向かって追いかける旅の矢先に事故で亡くなり、私は星野さんのアラスカの友人と共にその死を悼む『星野道夫 永遠のまなざし』(山と渓谷社)という本を出しました。今プロジェクトの原稿を執筆する中で、私の脳裏にあったのは、未完で終わった星野さんの旅の終着点はおそらく北海道だったのだろう、それはアイヌ民族の物語世界そのものだ―という思いです。

 アイヌの文化、特にお話の世界を多くの人に知ってもらいたい―というのは、私が旭川のご自宅に通い、『アイヌを生きる 文化を継ぐ―母キナフチと娘京子の物語』として親子二代の生きざまを一冊にまとめた杉村京子さんが亡くなるまで温めていた構想でもあります。母親のキナラブックさんの口承伝承を仲間と共同で実際に出版もしていますが、「一つでも多くの物語を届けたい」という京子さんの思いもまた、私の念頭にありました。

 自己紹介でも書きましたが、私は京子さんの本も合わせてアイヌ民族にかかわる本を3冊出版しています。最初に出した『流亡―日露に追われた北千島アイヌ』は白老のアイヌ民族博物館に学芸員として勤めていた時代から構想4年で書き上げました。今プロジェクトの日本語原稿は2年がかりで完成させ、同時並行で英語への翻訳に1年余りを要しました。それを下書きに、米国の大学で環境人類学を専攻するレニ・シャルボノさんが半年間の北海道研修の合間に監修を引き受けてくださり、休日や勤務後、二人で机を並べて約60時間にわたる作業を完了したのが2018年12月10日でした。その2日後、レニさんは北海道を離れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼プロジェクトの展望・ビジョン

 今プロジェクトは2018年12月半ばに日本語版、英語版、両方とも原稿が出来上がりました。今後、図表や地図を作成し、写真をそろえて2019年1月中に完成の予定です。すでに装幀家は決まっており、巻頭にグラビアのページも設けたいとの意向です。日本語版が200頁程度、英語版が100頁程度の合わせて300頁ほどの分量になりそうで、2019年5月に初版1000部の刊行を考えています。

 一般の書籍として販売されますので、書店の店頭で手に取っていただけるほか、アイヌ民族関係の博物館や文化施設にも置いていただけるよう、声かけをします。北海道内には札幌市アイヌ文化交流センター(ピリカコタン、南区小金湯)や旭川の川村カ子トアイヌ記念館、日高・平取町の萱野茂二風谷アイヌ資料館並びに平取町立二風谷アイヌ文化博物館、登別市の「知里幸恵 銀のしずく記念館」、釧路市阿寒湖畔の阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」、帯広市の帯広百年記念館アイヌ民族文化情報センター「リウカ」など、拠点拠点に施設があります。2020年春には、苫小牧と室蘭の間の白老町に国立アイヌ民族博物館がオープンし、海外からの見学者が多数見込まれます。また、最近は外国人に人気のゲストハウスも増えていますので、置いてもらえないか打診してみます。

 米国や北欧、オーストラリアには先住民族のリーダーや芸術家、研究者の知り合いがいますので、贈呈してアイヌ民族について理解を深めてもらう考えです。もちろん、お世話になってきたアイヌ民族の伝承者・指導者や市民活動関係者、研究者にも贈呈します。

 日本語版・英語版の合冊なことから、国内ツアーの関係者や一般家庭でも外国人を案内する際や日本の事情について説明する時に役立ててもらえると思います。

 かかる費用は全体で160万円程度とみています。このうち、半額をクラウドファンディングで募り、残りを筆者と藤田印刷の藤田卓也社長で負担する考えです。

 

 英語監修料 900ドル(10万円)

 撮影費用 5万円

 装幀、写真使用料、印刷費 145万円

         合計160万円

 

 2019年5月31日をもって『アイヌ民族、日本人、その世界(仮タイトル)』を1000部(予定)発行したことをもって、プロジェクトの完了とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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