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支援総額

0

目標金額 1,100,000円

支援者
0人
募集終了日
2021年5月10日

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2021年02月26日 11:02

抜粋。(下)のその2。『独りでは無理。被害届を出す』

 翌日、美子は授業を終えると市役所本庁に向かった。変態の名刺には左上に
札幌市のスマイルロゴが赤く入っていた。一Fの戸籍係を遠くから見渡した。 
結構な人が仕事に励んでいた。変態の姿を見つけられなかった。
 美子は見つけようと首を伸ばしてウロウロ。
 訝られたのか警備員に呼び止められた。
「君は何をしているのかな」
「えっ。私ですか。人を探しているんです」
 美子は変態の名刺を差し出した。
「この人に会いたくて探していました」
 警備員は名刺を受け取ると総合案内に向かった。美子はその後に付いた。
 総合案内の女性が受話器を取った。直ぐに受話器を置いた。
「この名刺の男性は市役所本庁の戸籍係には居りません」
 美子は耳を疑った。
「居ないって。だったらこの名刺はニセモノ」
「そう思います」と総合案内の女性。
 そうか。だからアッサリと名刺を差し出したんだ。その場を逃れるための有
効な手段として変態は名刺を使ったんだ。だったらナニモノ。
 美子は動揺。
 アカナラの樹立ちの陰の闇に光っていた三角の白い眼。三角の白い眼が私を
凝視していた。時折三角が動いた。不気味だった。恐かった。何か企んでいる。コンビニで見た時はそんなに悪い奴とは思えなかった。ツーブロックと爽やか系の顔立ちに惑わされたのだ。痴漢の時の顔と髪形は覚えていない。あの時は耳朶のホクロが精一杯だった。名乗ったのは本当に拙かった。戸籍係で無くとも我が家を調べられる。我が家は住宅地図に載っている。写真を撮らなかったのは大失敗。素直な態度に騙されてしまった。これはかなりヤバイ。これからは背後に注意しよう。変態がタクシーに笑顔で手を振ったのは警察を回避する作戦成功の合図だったのだ。舐められてしまった。許せない。変態の企みとは何だろう。時折女子高校生の拉致監禁が報道される。長い時には一年以上も監禁。靴もスマホも取り上げられ縛られたまま。犯人は中年とは限らない。若者も居た。監禁されている間は四六時中痴漢され続ける。
 …イヤだ…                                 
 美子は警察に行くと決めた。
 もう独りでは手に負えない。花南や大輔の助けを借りる訳にはゆかない。二
人とも大切な毎日が在る。再度、変態を探し出しトッチメルには偶然が必要に
なる。偶然見つけるには膨大なエネルギーが要る。見つけられないかも知れな
い。見つけ出したとしても対峙した時のリスクが大きい。家を発見された時に
はストーカーに追われる日々が続く。独りでは解決できない。変態は嘘つきだ。痴漢の常習犯かも知れない。そして何かを企んでいる悪い奴。
 
 美子は中央警察署の入口に続く半円形の階段を上がった。
 市役所本庁から西に六〇〇メートル。
 受付の窓口で来署の理由を告げた。
 受付は女性だった。それが心の負担を軽くした。
 痴漢されたを男性に言うのは躊躇う。男性の好奇の視線を浴びてしまう。好
奇とはスケベ心だ。痴漢と共通するスケベ心に向き合うのはイヤだ。
 廊下に置かれた長椅子に座っていると制服の女性が現れた。促され後につい
て行くと『取調室』と表記された部屋に通された。
 美子は制服の女性から名前と住所と年齢と高校名を尋ねられた。
 美子は痴漢された日時と詳細を言った。最後に変態の名刺を机に置き「嘘っ
ぱちの名刺だった」と伝えた。
 制服の女性は美子の早口を素早くメモしていた。書き終えると「少し此処で
お待ち下さい」と言い部屋から出て行った。
 美子は今喋ったことに付け加える何かが無いかを反芻していた。
 ふたつ在った。
 ストーカーに付け狙われる。それと拉致監禁。 
 一〇分ほど待っただろうか。
 スーツ姿の男性二人が部屋に入って来た。続いて制服の女性も。
 年配の男性が机の上に写真を三枚置いた。
「この中に君を襲った痴漢は居るかな」  
 居た。置かれた三枚の写真の真ん中にツーブロックの変態が居た。
 美子は変態が写っている写真を指差した。
「コイツです」
「こいつは鳥居一平と云って痴漢の前がある。一年前の時は初犯でもあり本人
の反省の下で起訴猶予で済んだ。性懲りもない奴だ。検察官の前での反省は見
せかけだった。痴漢する奴は捕まったら反省して痴漢を繰り返すんだ」
「ひとつ聞いてもイイですか」
「どうぞ」
「こいつはナニモノなんですか」
「市役所の職員でないことは確か。前回の時にはスマホのアプリ製作の会社に
勤めているとのことだった。今も同じ会社に勤務しているかは不明。IT関連
の者たちは会社の移動が頻繁だ。独立する者も多い。しかし同じ業界で生計を
立てる。見つけ出すのは難しくない」
「捕まえて下さい。お願いします」
「分かった。しかし君がこの鳥居一平から被害を受けてから一ケ月以上も経っ
ている。どうして被害を受けたその時に警察に来なかったんだ」
「自分で見つけて、捕まえて、謝って欲しかったから」
「そうか。随分と勇気があるんだ」
「友人と捕まえる約束しました」
「その友人って女の娘」
「はい。小っちゃい頃からの親友です」
「ひとつ忠告しておく。犯罪者を自力で捕まえるは無茶に繋がるからね」
「はい。分かりました。警察に来て良かったです」
「この偽物の名刺は預かるからね」
「はい。宜しくお願いします」
 美子が名刺に同意すると刑事と思しき二人は部屋から出て行った。
「仲美子さん。これから被害届を作成します。宜しいですか。痴漢退治は親告
罪なので被害届が出されないと警察は捜査も逮捕も任意での取り調べもできな
いのです」と制服の女性が被害届と記入された用紙を机に置いた。
「あの~。書き方が分かりません」
「大丈夫。私の問いに答えて下されば被害届が完成します」
 美子は中央警察署から出た。制服の女性が見送ってくれた。
「三日もあれば警察に連行されます。その知らせを欲しいですか」
「はい。お願いします」
「では私が責任をもって連絡します。スマホの番号を教えて下さい」
 制服の女性は警察手帳を開いた。開くと写真。『細川恵花警部補』。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 





 

リターン

5,000


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『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。

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10,000


10000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせてもらいます。

10000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせてもらいます。

『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』(圧縮ワープロ原稿)を添付メールで送ります。

支援者
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在庫数
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15000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

15000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』をワープロ圧縮原稿を添付メールで送信します。

支援者
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在庫数
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発送完了予定月
2021年7月

20,000


20000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

20000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。次に『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』『』アンダルシアの木洩れ日』のワープロ圧縮原稿を添付メールで送ります。

支援者
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在庫数
200
発送完了予定月
2021年7月

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