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支援総額

0

目標金額 1,100,000円

支援者
0人
募集終了日
2021年5月10日

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2021年03月19日 06:43

(上)。ホタテと瓢箪。その3。『もの書き』

「サッポロに行ったらわたしだけを見つめて欲しい」
 わたしは意を決して言った。
 Reiはわたしを見据え次に何を発したら良いのかを考えている。
「大丈夫。付き合っている女がいる訳じゃない。優花とは別れた」
 この瞬間Reiの眼球が泳いだ。      
 … 嘘つき。他に女がいる…
 Reiの情熱は捨てがたい。彼の情熱からの緊張がわたしのこれからを拓くと予感する。油断できないのが彼の饒舌に見え隠れする嘘とホント。これを見分けようとすると思わず身構えてしまう。嘘の時には一瞬の躊躇が浮かぶ。楽しかったのは『薪能』まで。でも走り始めたわたしは止めようがない。
「優花ちゃんと、もう逢わないと言われても嬉しくない。彼女は専業主婦を望んでいる。Reiは結婚をまったく考えていない。だから長くは続かないと思っていた。だってReiを紹介したのは優花ちゃん。『劇団四季』のサマーキャンプで知り合った。彼女は結婚相手を見つけたみたい」
「…」                                                                                                        
「わたしがサッポロに移り住むと重荷なんだ」                                                                                             
「そうじゃない。近くに君が居ると嬉しい。元気になる。君に相応しい男になりたいと思っている」
「何んかヘン。相応しいってナニ…」
「これからの俺は敗け戦さを承知で挑み敗れてゆくんだ。君を巻き込めない」
「誤魔化していない…」
「君から言い寄られても応えられない自分が不甲斐ないだけなんだ」
 何時と違うRei。頭を垂れ、肩を落とし、うなだれていた。

 Reiはサッポロから離れられない職業に就いている。ならば教師を辞めたならわたしは何処にでも行ける。こう思ったら居ても立ってもいられなくなり手紙を書いた。サッポロでReiと暮らしそう遠くないうちにReiの子供を授かる。これは悪くない。
 わたしの手紙へのReiの返事は曖昧。
『バイトでもサッポロで暮らしていける。家賃が首都圏とは比較にならない。そうしている間に仕事が見つかると思う』。まるで他人への行。
 …自分の生業は自分で始末しろ…。
    こんな返事が欲しくて手紙を書いたのではない。わたしはただReiの傍らに居たいと伝えただけなのに…。あの時Reiの返事を無視してサッポロに突撃してReiの胸に飛び込んで思い切り泣いたら今頃はサッポロで二人暮らして居たかも知れない。
 わたしは諦めが悪い女。

 思いもかけない返事に戸惑い逡巡してしまったわたしはサッポロに行かなかった。行けなかった。Reiはわたしをどう想っているのだろう。そればかりが行ったり来たり。浮かんで来たのが『湘南のお嬢さん』。一度言われたことが在った。その時は「なに馬鹿言っているの…」と笑い飛ばした。けれど引っ掛かりも残った。Reiはそう思っているのか…と。「お嬢さんを俺の仕事に巻き込めない」とハッキリと言わなかったけれど『お嬢さん』ならば巻き込めないに帰結する。劇団四季のサマーキャンプの門を叩いたりフルートのレッスンを受けたり声優教室に通っているとReiが知った後の言葉だった。わたし
にしてみれば教師を辞めた後に何が出来るのかを模索する一環だった。自分の可能性を試してみたかった。
 Reiには『お嬢さんの習い事』に映ったのだろう。その時に「君の可能性はもの書き」と言われた。言われたけれど実感なし。Reiが可笑しなコトを言ったとしか思わなかった。小中高と作文の点数は芳しいものではなかった。
 卒論の時も苦労して苦労して書いて単位を頂戴して何とか卒業した。たぶん担当教官のお情けによる『可』。神奈川県の教員採用試験に合格していたが故のお情け。それなのにもの書き。わたし的には最も実現性が低い『もの書き

』。余りにも実感が伴わない示唆に面喰らってしまい追及しなかったわたし。Reiはそれを見越してか諭すように言った。眼が愉快そうに笑っていた。「お嬢さんといささか失礼を言ってしまった。失礼だったと思うのはのぞみさんの可能性を感知しているのにそれを台無しにする呼称を使ってしまった。ごめん。のぞみさんの好奇心は類稀。のぞみさんの強い好奇心が俺に向けられ興味を持ってくれた。お陰で俺はシアワセな時間を過ごしている。かしこまらず、普段通りの何時もの調子で、好奇心を全開にして、赤くなったり、青くなったりする文体は新鮮に写る。手紙を読んでいるうちにそう思うようになった。これは確信に近い」。

 

 こう言われてしまうと何が何だか分からずともつい嬉しくなってしまう単純なわたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

リターン

5,000


応援してくれた方には直ちに感謝のメールを送らせてもらいます。

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『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。

支援者
0人
在庫数
200
発送完了予定月
2021年7月

10,000


10000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせてもらいます。

10000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせてもらいます。

『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』(圧縮ワープロ原稿)を添付メールで送ります。

支援者
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在庫数
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発送完了予定月
2021年7月

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15000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

15000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』をワープロ圧縮原稿を添付メールで送信します。

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在庫数
200
発送完了予定月
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20,000


20000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

20000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。次に『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』『』アンダルシアの木洩れ日』のワープロ圧縮原稿を添付メールで送ります。

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在庫数
200
発送完了予定月
2021年7月

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