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2021年04月02日 07:36

(上)『ホタテと瓢箪』。その17。「不安」

 マドリッドのスペイン広場の噴水を囲う縁に座り膝に頬杖をついて繰り返される水の演舞を眺めていると突如不安に襲われた。今までに味わったことのない不安だった。だいたいわたしは楽観的。何とかなるさと思い何とかなってきた苦労知らずの女子。考えてみれば不安は初めてだった。不安はわたしと云う存在を根底から揺さぶっていた。

「お前は此処で何をしているのだ」

「これからどうするのだ」

「何をやるのか」

 答えられたのは最初の問いかけだけ。残りのふたつには黙すのみ。
 スペインに着いてから五ケ月を過ぎた昼下がりだった。
 そう云えば今日の宿を決めていなかった。今から間に合うのだろうか。こんなのは不安ではない。心配のひとつ。それも重くない。速攻で動くなら何とかなる。わたしの背中から突き上げてくるザワザワ感と胸苦しさはまさしく不安。初めての不安に戸惑った。
 わたしのモラトリアムもそろそろ終わりと知らせてきたのが不安だったのだ。そうと分かれば進むしかない。前進あるのみ。わたしのスペイン旅の目的は達していた。なのにスペイン広場でボ~ッとして頬杖をついているわたしはわたしに諫められたのだ。進む他なしと云っても何処に向かって進めば良いのかが見えて来ない。それはボンヤリと想い始めた問いに答えを出さねばならないからだ。スペインで暮らすのか。鎌倉に戻るのかを決めなければならないのだ。今のままでは根無し草。不安は消えてくれない。

 本心はスペインで暮らしてみたい。わたしはスペインに恋していた。巨大な太陽にも。激辛のパエリアにも。身体をひねり右手を掲げて「オレィ」と叫び見得を切り「わたしって素敵でしょう」の情熱の十二拍子にも。
 居場所を定めなければ次が見えない。

 居場所は職が決めてくれる。

 わたしが得意の何でも見てやろうは見た後に見てきたモロモロをどう活かすのかなのだ。鎌倉よりもスペインが活かせる。そんな漠然とした予感がわたしに宿っていた。それが不安の種だった。

 

 わたしの前にこの縁に座っていた人が敷いていたのか、新聞が横に在った。風に吹かれて捲れていた。手に取った。このまま放置していると風で飛んで行ってしまいそう。今日の日付だった。新聞には求人広告が載っていた。数は多くない。『ハポンオンリー』が眼に止まった。日本でも名の知れた旅行代理店だった。今回のスペイン旅でも世話になった。
 善は急げ。電話した。日本語で名乗り用件を伝えると電話の男性から事務的に顔写真付きの履歴書持参。場所と時間を告げられた。面接会場はマドリッドのスペイン本社。ここから近い。採用は一名。駄目元。トライするのみ。スーパーで履歴書を探した。無い。レポート用紙を買った。写真はパスポート用の残りがキャリーバックの何処かに在るはず。
 背中を覆い尽くしているザワザワと胸の圧迫感が少し薄らいだ。『JTC(Japan Travelers Company)』のスペイン本社が入っているビルを探した。指定日と時間は明日の午前一〇時。探していると遅れてしまう。在った。スペイン広場から歩いて七分の処。会社の所在を示すビルのプレートには二階と記されていた。スペインでは貸しビルの看板が目立たない。日本では入居者を現わす看板がビルの側面に、これでもかと、ありったけが掲げられている。プレートだけのさりげない表示だけでは見逃してしまいそう。
 下見に来て良かった。
 八階建てのビルに入った。階段が無い。エレベーターの位置を確かめた。確認。二階で降りた。『JTC』の表示の中をさりげなく怪しさを消して覗くと入口には案内が置かれている。これで準備完了。後は此処から近いホテルを探すだけ。TシャツとGパンとスニーカーでは余りにもラフ。化粧は眉毛と口紅だけ。髪はボサボサ。そう云えば長い間湯に浸かっていない。シャワーだけ。

 そうだ。

 ハマム(アラブ式公衆浴場)に行こう。ここでのんびりと身体を伸ばして休めて明朝に備えよう。エレベーターに引き返そうとした時にドアが開いた。一人の中年男性が出て来た。眼が合った。
「今しがた電話を頂戴した細川さんでは…」
「はい。細川です。どうして分かったんですか…」
「勘です。明朝の面接に向けて下見に来たのではと思った次第。スペインの人たちは下見には来ません。来るとすれば日本人。『ハポンオンリー』と求人広告に載せたのですが本当は『Japanese Only』と載せたかった。しかしスペインで事業を展開する上で『Japaanese Only』では支障が出る。スペインの失業率は二〇%。当局の眼を気にしたのです。求人広告がスペインに滞在している日本人の眼に止まれば良いと…。止まって良かった」
「そうですか。私は土地勘が無いので面接に遅れてしまわないように下見に来ました」
「これが日本人。スペインの人たちは少々の遅れはまったく気に留めません。それが面接で在ってもです。国民性の違いって言うヤツ。良かったら中でコーヒーでも飲みませんか。予定が入っているなら致し方ありませんが…」
「構いません。これからに必要なのは今夜のホテルだけです」
「それは好都合。私どものシステムを使って下さい」
「ホントですか。助かります」
 オフィスに入った。社員たちから「いらっしゃいませ」と出迎えられた。何かしら日本に居る感じ。日本人は女性が五名。スペイン人と思しき人は女性二名に男性一名だった。接客用のブースに通され座ると直ぐに日本人の女性が紙コップコーヒーを持って来た。
「細川さん。日本の履歴書を持って来ました。スペインにはこうした書式が在りません。みんなレポート用紙に想い思いを書いてくる。日本人は履歴書に嘘は書かない。スペインの人たちは自分にアピールポイントを力一杯に書いてくる。読んでも本当かどうかは分からない。一人一人の裏を取るのは大変。そう云うことも在っての『Japanese Only』だったのです。少しの間席を外すので履歴書への記入をお願いします」と言って男性はブースを出た。

 

 

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(上)『ホタテと瓢箪』。その16。「鎌倉七口」(上)ホタテと瓢箪。その18。『面接』
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