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jean1949paul

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2021年5月10日
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2021年04月19日 08:00

(上)『ホタテと瓢箪』の抜粋。その34。「未熟者」

 部屋に戻った。シャワーを浴び、身体を暖めても眠れない。二人が今、何を想い、何処に行こうとしているのか。答えがでない反芻を繰り返してしまう。キャサリンは生命の胎動を感じているに違いない。女はそんな時に死ねない。わたしなら絶対に死なない。そう想っても堂々巡り。負の循環にはまってしまった。こんな時は頭の芯を緩めなければ更に深みにはまる。赤ワインをオーダーした。ワインなら少し飲める。一杯でポワ~ン。身体が揺れ動いてきた。
 絶対に二人を死なせてはならない。でも手立てが心細い。心細くて眠れそうにない。必ず眠れない朝を迎える。独りで居たなら心細さに挫けてしまいそう。何処かに心細さを逃がさなければわたしは自分を保てそうにない。いま大切なのは眠ることなのに…。
 わたしは赤ワインを携えてニックの部屋を叩いた。ニックは驚きもせず無言でわたしを抱き止めてくれた。ベットに招き入れ「明朝は早い。眠ろう」と右手をわたしの枕に。
 ニックはわたしの今を想ってくれた。
 わたしはニックとひとつ部屋で朝を迎えた。眠れた。時間を逆針させたのが携帯。部屋に置き忘れてしまった。急いで戻った。夜中に支社長から連絡があった時の言い訳を考えた。携帯を手に取ると支社長からの着信がない。誰からも連絡がなかった。
 …ホッ…
   大聖堂が開くのは八時。時計を見ると急いで朝食を済ませ身支度しなければならない七時過ぎ。ニックは「今日もお遍路姿で待ち受ける」と言った。今はTシャツにジーンズ。頭陀袋には沢山入るらしい。入らなくなるとコインロッカーに置き身軽に。
 好き嫌いがなく何でも食べるわたしも今朝は食欲がない。今日は体力勝負。分かっていても喉が塞がっている。

 

 携帯が鳴った。

 支社長からだった。
「見つかったぞ。マドリッドの大使館から連絡があった。二人の身柄を確保した。朝の六時四五分にだ。マドリッド空港からリスボン行きに乗ろうとしていたところを入管職員に発見された。昨日君から報告を受け直ちに大使館と領事館に手配した。そこから入管に行方不明者としての捜索を依頼してもらった。二人とも無事だ。詳しくは後で。君は今日身体を休めなさい。ホテルで待機するように」
 池脇氏はズーッとわたしに嘘をついていた。見つかったからと云って素直に喜べない。毎朝夕の連絡の時に「何時も予定通り」と答えていた。今朝マドリッド空港に現れるには昨夜には着いていなければならない。池脇氏にとっては予定通りの失踪。腹立たしく、許せない。落ち着こうとしても、感情の昂ぶりを押さえられなかった。身体が震えてきた。
 わたしはニックに思いの丈をぶつけた。
「気持ちは分かる。でも今は最悪にならず無事の発見を喜ぼうじゃないか。人を騒がせたツケは最後の最後、二人に巡るのだから。俺は君のお手伝いが出来て嬉しかった。今日の張り込みも一緒に居られるから楽しみだった。これで業務に戻る。俺の参入は内緒だよ」
 

 未熟なわたし。

 

 支社長はマドリッドで入管に拘束されている二人に面会。それから二人の身柄を解放する手続きに奔走していた。それが終わってのサンチャゴだった。彼は先にキャサリンから事情を聞いていた。
「彼女は入管に拘束され、大騒ぎになっている事態を理解できていなかった。『消えます。探さないで下さい』と池脇氏がガイドにメールをしたのを知らなかった。知った彼女は愕然。私たちが憂慮したのは失踪後の心中と伝えると、彼女は心中の意味を理解していて深く溜息。そして、うなだれてしまった。その落胆は見ていられないほどだった。これからを決めないと拘束が解かれないと伝えた」
「ロンドンの実家に帰る」
「『拘束を解くにはロンドン行きの旅券が必要』と知らせると彼女は直ぐにチケットを購入。私は『聖大ヤコブに受胎を告知したのか』と尋ねた。彼女は、どうして私が知っているのかと、怪訝そうだったけれどハッキリとしたイエスだった。『次に告げるのは御両親だね』と言うと、大きく頷いた。彼女はもう大丈夫。厄介だったのは男の方だった。拘束されキャサリンと別々に置かれ自失呆然状態。リスボンまで飛ばれたら大事件になっていたと思った。日本男子が、こんな奴とは思いたくもない。坊さんは背筋がピシッと伸びているものだ。全然ダメ。ウンザリして日本への強制送還をお願いした。すべて良しと言う訳ではないが、ホタテと瓢箪にミソを付けずに済んだ。ツアーの今後だけでなく、無理心中となれば、国際問題にもなりかねない。この仕事に就いて二〇年。ツアーで失踪者が出たのは初めてだ。私も焦った。しかしこれで何とか切り抜けた」

(上)『ホタテと瓢箪』の抜粋。その33。「大聖堂」(上)『ホタテと瓢箪』の抜粋。その35。「三日の休暇」
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リターン

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応援してくれた方には直ちに感謝のメールを送らせてもらいます。

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『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』(圧縮ワープロ原稿)を添付メールで送ります。

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15000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

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『どうせ死ぬなら恋してから』の書籍を郵送します。それと拙著の『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』をワープロ圧縮原稿を添付メールで送信します。

支援者
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20000円の方へ。御礼と感謝のメールを直ちに送らせて頂きます。

『どうせ死ぬなら恋してから(上)(下)』の書籍を郵送します。次に『未来探検隊』『スパニッシュダンス(上)(下)』『』アンダルシアの木洩れ日』のワープロ圧縮原稿を添付メールで送ります。

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