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jean1949paul

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2021年05月02日 08:00

(上)の抜粋。その47。「アジェールも消えてしまった」

    年末にクラスのリーダーに手紙を書いた。アジェールとわたしとの経緯を。優秀な気迫あふれるバスク人の行には力を込めた。

『アジェールが一月八日に羽田に着きます。彼は二年間、留学生として横浜の大学病院で働き学ぶ予定。日本に知り合いなし。彼のサポートをお願いできたなら嬉しく思います』

    彼女とのメールが頻繁になった。

 アジェールの日本での活動が克明に伝わってくる。彼女にお願いして正解だった。それが二ケ月続いた。彼女も活躍していた。県のオーケストラのコンサートマスターに就いていた。オーケストラの給料だけでは足りない。ヴァイオリンはピアノと違い自分が使い続ける楽器が高額。ストラバリウスだと億の資金が要る。それを稼ぎ出さなければならないのが辛い処。先ずはスタジオミュージシャンとしての掛け持ち。拘束時間が短くとも長くともギャラは一緒。三万から五万円が相場。それで拘束が短い仕事は人気。コンサートツアーに同行するとギャラは跳ね上がる。しかし拘束は何日も終日が続く。それを繰り返すのがコンサートツアー。

 リーダーが『高島さち子と十二人のヴァイオリニスト』のオーデションに合格した。メールで知らせてくれた。ネットにリーダーの写真が載っていた。このグループは高島さち子さんのカリスマ性に支えられている。若い女性のヴァイオリニストの羨望の的。それをリーダーが射止めた。年に四回ほどの全国ツアー。こうなるとオーケストラのスケジュールとバッテングする。やはりリーダーはオーケストラを辞めた。スタジオミュージシャンとの兼ね合いなら可能だ。

                     

 彼女からのメールが少しずつ遅れ始めた。わたしからのメールになかなか返信が来ない。遅れ始めの頃は…きっと忙しいんだ…と思いそれほど気にならなかった。リーダーの活躍を嬉しく思った。アジェールも横浜での生活に慣れた頃。そして修行の毎日が続いている。そう思っていた。しかし遅れが一〇日から二週間。一ケ月も続くと『これは只事ではない』と不吉な予感が走った。彼女に何かしらの変化が起こりアジェールとの接触が難しくなったのでは…。

 三月末に業を煮やして『どうしたの』を送った。

 それへの返信も無かった。       

 日本では桜の季節。

 桜が散った四月の下旬に彼女からようやくメールが届いた。           

 

ー私はアジェールが世界の何処に行こうとも付いて行くと決めました。ごめんなさいー

 

    どうして…。

 どうしてこんなことになってしまうのだろう…。

 二年間はアジェールと約束した時間では無かったけれど二人の目標だったはず。わたしの二年間は気泡と化してしまった。一本のメールで気泡が弾け、消えて無くなってしまった。選んだ、選ぼうとした男はわたしの前から姿を消してしまう。

 どうしてなんだろう…。

 でもこんなことにわたしは慣れてしまっている。

 これがわたしの定めなのかも…。

 不吉な予感とはリーダーの『ごめんなさい』だったのだ。それをまったく予知していなかった。そもそもリーダーにアジェールのサポートをお願いしたのが間違いの元。それに気づかず、わたしはアジェールとの二年間を信じていた。やはりわたしは鈍い。                                                                                   わたしの両の掌から男がこぼれ落ちてゆく。掌の隙間から流れ落ちてゆく。

 もうわたしは男を選べない。

 稀であっても男から選ばれると、ときめかず、燃えなかった。もとより男から選ばれる巷の訓練も致していない。これからも訓練しようとは思わない。ならば男を選び掴み取る他に手立てがないのだ。なのに男を選べなくなってしまった。哀しくともわたしはこれを受け入れる他ないのだ。

 

 寂しくてもわたしは生きてゆける。

 

 前を向いて頑張れる。踏ん張れる。踏ん張る他に途は無いのだ。

 スペインに来てからは、悩んだり、不安に襲われたり、怒ったり、泣いたり、笑い、感激したりで、感情の振幅は何時もマキシマム。退屈したことは一度も無かった。不安に陥り途方に暮れても途は在る。元気な身体と途を拓こうとする諦めない情熱があればドキドキワクワクしてしまう興奮がわたしを待っている。                                    

 

 わたしはスペインでそれを学んだ。

 

 鎌倉に居たら体感できなかったのが不安と興奮。

 日本では安心と興奮に終始してしまう。

 アジェールにもニックにもReiにも「わたしは大丈夫。元気です」と伝えたい。彼らはわたしを選ばなかった。選ばれなくともわたしは彼らの記憶から消えていない。それに彼らはわたしを記憶から消そうとしない。例え消そうと試みても記憶から消えないわたし。だって楽しかった時間は彼らの記憶に刻み込まれているから。選ばれなくともそのくらいは自信が在るわたし。

 三人に「わたしは大丈夫。元気です」と知らしめるには書くのが最良。これがこれからのわたしの不安と興奮。『旅の途中』の連載タイトルは決まらなかった。悩んでいると支社長が『Spanish  Dance』と命名した。編集者も納得。そう。わたしは踊るように書けば良いのだ。知的冒険からの発見と喜びを書く。

 先ずはここから…。

 わたしのイメージは言葉を踊らせてくれる。言葉が踊ってくれる。

 喜びと知的冒険を軸に据えるならわたしは書ける。

 わたしは『小説とはどのように創られているのか』を考え始めた。

 これは長い旅になる。

 不安と興奮の長い旅を予見した。

 書けるか、どうかよりも、書いている時のドキドキワクワク感がわたしを待っている。これが在ればわたしは生きて行ける。

 世界中の何処でも生きて行ける。

 わたしは流れ落ちるふた筋の涙を手で拭った。

 

 

                               (続く)

 

■これで『スパニッシュダンス(上)ホタテと瓢箪』が終わりました。明日か

 らは『(下)のゴトビキ岩大権現さま』が始まります。楽しんで頂けるなら

 嬉しい限り。

 


 

(上)『ホタテと瓢箪』の抜粋。その46。「ピロタ」(下)『ゴトビキ岩大権現さま』。その1。「鎌倉七口」
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