プロジェクト概要

 今、世界各地で地震や豪雨、火山の噴火やハリケーンの発生など、大規模な災害が多発しております。日本も例外にありませんが、特に開発途上国では、伝統的な石積みやレンガ積みといった脆弱な建物が多いため、地震の崩壊による人的被害が多発する傾向にあります。2015年のネパール地震における人的被害の大半は、山間部の自分で建設した石積の伝統的な家に集中しており、建設資材の搬入が困難である山間部では、地震から約3年半が経過した今でも、壊れた壁はそのままに、危険な住居で生活されている方も多くいらっしゃいます。

 

こうした状況を減らすため、まずは、現地の住民の方々が理解し、自立し、加えてお金をあまりかけずに実施し得る補強方法を確立し、現地に伝えていく必要があると考えます。

 

そのため、産官学の共同体制(防災科学技術研究所・千葉大学建築学科 鈴木弘樹研究室・毛利建築設計事務所)で補強方法を提案し、実大実験を実施することにより効果の検証を行うことにしました。

 

 

 

蛇籠(じゃかご)を用いた耐震補強技術を確立し、

伝統的な石積の家と、人々の命を守りたい。


ページをご覧いただきましてありがとうございます。国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門 主幹研究員の中澤博志です。私はこれまで、地盤防災に関する研究をして参りました。2015年4月に起こったネパール・ゴルカ地震以降、数回に渡るネパール国内での被災調査を通じ、蛇籠(じゃかご)擁壁の耐震性に関する研究を行っています。

 

今回、蛇籠を用いた耐震補強技術の実証実験に必要な費用のうち、石積み組積造の住宅建設費実験データ計測費を募るべく、クラウドファンディングに挑戦するに至りました。皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

 

▲国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門 主幹研究員の中澤博志です。

 

 

世界中で地震の度に、甚大な被害が生じています。

 

昨今、地震の度に、世界中で甚大な被害が生じていますが、とりわけ開発途上国での人的被害は、建物の倒壊によるものが多数を占めています。特に被害拡大の原因として、庶民住宅の一般的な建設工法である組積造の脆弱性が挙げられますが、これら組積造住宅の多くは地域の職人あるいは住民自身によって建設された技術者が関与していない物件(ノンエンジニアド建設)です。

 

▲石積みの壁

写真に示すとおり、石積み組積造は、石を積み上げ空隙を泥モルタルで充填する、または空積みからなる構造であり、その安定性は、石の形状によるところが大きいと考えられます。いずれにしても、脆弱であることはイメージできるかと思います。

 

どうして、被害が繰り返されながらもこのような住居に住むのでしょうか。

 

それは、経済的な面であったり、そもそも山間部では、建築資材の運搬・搬入が困難であるなど、様々な背景があります。国際的に見ても、構造研究が進んでいない分野でもあり、現地で調達できる資材で、現地の方々が理解しやすくお金をあまりかけずに実施できる補強方法の確立が急務な状況です。

 

▲崩れた家屋

 


2015年のネパール地震でも、建物被害の大半はノンエンジニアド組積造住宅の被害であり、特に山間部の石積み組積造が全体の被害数の8割を超えました。

 

山間部の集落までは、山を切り開いた一本道がほとんどで、アクセスも悪くセメント等の建設資材の搬入も困難である地域が多いため、耐震性不適合の新築住宅や既存住宅が多いのが現状です。

 

▲山間部の集落までの道は悪路が続き、必要な資材を届けるのも困難な地域があります。

 

 

蛇籠(じゃかご)を用いた耐震補強技術

 

この課題に対し、現地で入手可能な材料によるローコストな耐震補強工法の共同開発を開始したところです。その工法は、石積み組積造を対象とした蛇籠を用いたジャケッティング工法による耐震補強技術です。金網で建物を巻いて蛇籠状の補強を行う技術であり、防災科学技術研究所の大型耐震実験施設で効果を検証したいと考えています。

 

 

 

ここで扱われている『蛇籠(じゃかご)』とは何だろう、と思われる方は多いのではないでしょうか。蛇籠の起源は紀元前361年~251年頃、中国四川省の都江堰の築堤にあたり、竹を材料に亀甲型網目の円筒形の籠を編み、内部に玉石、割石などを充填して河川工事に使用したことから始まります。

 

世界各国に伝わった今日では金網が使用されていますが、その特徴は、高い屈撓性、籠材の運搬や石等の材料の収集が比較的容易で工期が短いこと、そして自然材料を使用した場合の環境面への配慮等が挙げられます。提案するジャケッティングによる補強は、『高い屈撓性』に期待するものです。

 

▲蛇籠壁の変形の様子

写真をご覧ください。3mの蛇籠壁を振動させた後の様子です。一辺1m直方体の金網に石を積めて積んだだけの簡易な構造ですが、著しい変形と傾斜が生じている様子が分かります。写真は解体前で安全確保のため、倒壊防止用ロープが張られていますが、振動時、振動後に崩壊することなく自立しておりました。これが、蛇籠による鉄筋の拘束効果であり、期待する『高い屈撓性』です。

 

蛇籠ジャケッティングで使用するワイヤー(針金)はロール状でポータブルなため、山間部への人力による搬入が可能であり、既存住宅の耐震化はもとより、震災後の復興にも資することができます。

 

私たちは、2015年の震災以降、カトマンズ市内やアラニコ・ハイウェイ(AH42号線、Dhulikhel~Jayle間)を対象とした現地調査を行いました。そこで目に留まったものは、蛇籠を用いた施設や構造物の多さでした。擁壁、山留、防護柵(ガードレール)、護岸、水制工、砂防堰堤、および沈下橋等、日本に見られない利活用がなされていました。観察をする中で、変形はするものの、崩壊などの決定的な被害がなく、工期も短く、材料の入手が容易で安価である点に着目し、住宅の耐震補強への展開に至りました。

 

 

実施プロジェクトの内容

 

そこで私たちは、これまでの研究結果や仮説をもとに、「開発途上国における石造組積造のノンエンジニアド住宅の耐震性向上(人的被害軽減)に向けた蛇籠を用いた耐震補強工法の開発研究」を、産官学の共同体制(千葉大学建築学科鈴木弘樹研究室、毛利建築設計事務所)で始めました。この取り組みは国際貢献やジャパンブランドの防災技術の普及の意味合いも持つプロジェクトとなります。

 

この度、皆さまからいただいたご支援で、私たちは石造組積造の住宅建設と実験データ計測を実施します。

 

 

 

今回の実験では、補強の有無による比較実験を実施します。見通しとしては、補強無しの住宅が崩壊し、補強有りの住宅は、変形はしますが、ジャケッティングの拘束効果により崩壊には至らず、少なくとも人命は守ることができる効果検証を行えると考えています。

 

実験ですので、何が起こるかはわかりませんが、この実験が、皆様のご支援で実施する範囲です。その後、この実験による検証をもって、ワイヤーを金網状に編み、住宅を補強する策を、現地で試行していきたいと考えています。

 

 

プロジェクトによってもたらされる未来


今回のプロジェクトのメンバーの一人でもある毛利建築設計事務所の今井様から、開発途上国での地震被害が甚大になる原因をよく表している昔からの言葉を教わりました。

It is not earthquake that kills, it is not even the buildings that kill, it is the poorly constructed buildings that kill.

 

――人々が犠牲になったのは、地震のためではなく、建物によるでもなく、建物の脆弱性によってである。

 

災害に強い社会を構築する上で最も優先されるべきこと、それは人的被害軽減です。地震に対しては、建物の耐震化が必要でありますが、開発途上国における庶民の住宅は、その国の基準法があっても、根付いた文化や、もとより経済的な理由で対応が困難であることが多いです。それ故に、同じ材料を用い、同じ構造によって、同様な被害が繰り返されることになります。

 

本研究の根底にあるものは『地震災害からの被害軽減化』であり、そのことが人々の「住生活の向上」の第一歩であると考え、補強方法を提案して参ります。

 

また、防災科研では、防災に関する研究成果の国際展開も大きな命題の一つです。ネパールのみならず、近隣諸国においても更なる脆弱な建物から人的被害軽減に向けた取り組みをして参りたいと考えています。そのための、取っ掛かりとして、この技術だけでなく、研究成果全般の確かさを証明することで、同様な地震被害の可能性を具備する近隣諸国においての展開を図り、あるいは波及効果によって、開発途上国の安心・安全な社会の構築に繋がることを期待しています。

 

この度、クラウドファンディングに挑戦いたしました理由は、広く皆様からご寄附を賜り、私たちの取り組みを広く知っていただきたい、という意図もございます。プロジェクトの実現、そして防災技術の更なる発展のために、皆さまのご寄附をよろしくお願いいたします。

 

 

プロジェクトメンバー紹介

 

■中澤 博志 / Nakazawa Hiroshi

国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門 主幹研究員

 

 平成8年3月 東京理科大学大学院理工学専攻科土木工学専攻終了後、民間会社に就職。その後、主な研究歴は、平成12年4月より東京理科大学理工学部土木工学科助手として、地盤の液状化に関する研究や1999年のトルコ・コジャエリ地震を始めとする地震被害調査等に従事した。その後、独立行政法人港湾空港技術研究所(現国立研究開発法人)が実施した「実物大の空港施設を用いた液状化実験」プロジェクトにおいて、空港土木施設の液状化対策の合理化・低廉化に関する研究に携わり、平成27年4月より現職。地盤の液状化対策や地盤調査手法の確立、ため池堤体の耐震性等に関する共同研究を手掛けるとともに、2015年ネパール・ゴルカ地震の被害調査を切っ掛けに、蛇籠に関する研究に着手し現在に至る。

 

 2015年ネパール・ゴルカ地震後、別のプロジェクトにおいて、蛇籠道路擁壁の実大模型による耐震性の検証実験をしてきました。道路擁壁の倒壊により山の一本道が閉塞してしまうと救急活動や復興活動が滞りますので、道路機能を維持することは大切なことです。ですが、直接人命を救うためには、やはり建物の耐震化が必要であると思います。現地調査や実験からも蛇籠は地震などで変形しやすいですが、倒壊までには至らない粘り強さをもっています。この利点を活かし、山間部で最も崩壊・損傷等の被害が確認された脆弱な石積み組積造住宅を対象に、蛇籠を応用した金網による耐震補強法を検討していきたいと思います。蛇籠は金網と石を使った単純なものですが、この技術を建物の耐震化に応用し、Low Techを科学し、Low Costを追求し、Localで活かすことの出来る3L技術として、現地に提供できたらと考えております。

 


■今井 弘 / Imai Hiroshi

毛利建築設計事務所 上席研究員 / ものつくり大学非常勤講師

 

 2015年ネパール地震からの住宅復興に向けて、ネパール政府復興庁のテクニカルワーキンググループの一員として活動しています。

 

 住宅再建は、新築案件は耐震基準も制定され、昨年より一気に加速し、着工率は9割を超えて本格的してきたものの、既存住宅(軽微の被害、基準不適合建築)の耐震補強技術の開発、指針作成が未だ進んでいません。強度型の耐震化ばかりではなく、人的被害を減少できるようなローコストな建築技術が必要です。


 この課題に向けて、今回、防災科学技術研究所にて、石造組積造ノンエンジニアド住宅の耐震補強の振動台実験を行い、ネパールで必要とされている技術を、必要としている人たちに提供したいと考えています。

 
 

 

 

 


■鈴木 弘樹 / Suzuki Hiroki

千葉大学 工学部建築学科 准教授 建築家 博士(工学)

 

 栗生総合計画事務所で平等院宝物館などを担当。鈴木弘樹研究室で日本初のサカディアンライトを用いた精神病院保護室改修を行い、建築設計として千葉大学ゐのはな同窓会館や北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅前交通広場など公共的施設を多く設計しています。都市計画・街づくりでは、柏の葉キャンパス(UDCK)街づくりなどを行っています。

 

 十数年前、大学でネパールの広場調査のためネパールを訪れました。宗教に根ざした素朴で質素な生活を送っている人々に触れ、ネパールに魅了されました。2015年に発生したネパール地震によって寺院や街並、民家が崩壊した映像を見て強い衝撃を受けました。伝統的な寺院や街並み、人々の民家が少しでも早く復興し、安心安全な生活がおくれるよう願っています。

 

 今回の実験は復興が進んでいない山間部の住宅の復興の一助となるための実験です。私の役割は、自身の研究テーマの建築空間の快適環境の創造、現在行っている精神病患者の住環境の改善を応用して、震災後不安に思っている人々に安心安全な住環境の技術提供を目指しています。

 


■小村井 貴世 / Komurai Kiyo

千葉大学工学学部建築学科 鈴木弘樹研究室 博士課程在籍
構造設計事務所 S WORKS 共同主宰

 

 構造設計事務所 TIS & PARTNERS で構造設計に携わる。渡仏し、パリベルビル建築大学ポストマスター建築と災害コースでハイチ地震やペルーの地震後の現地調査を行う。卒業後はパリの坂茂建築設計にてスイスのオメガ美術館の設計等を担当。日本に帰国後は構造設計事務所S WORKSを共同主宰。

 

 構造設計および意匠設計に携わりながら、千葉大学にて2015年ネパール地震後の復興住居について研究を行っています。私は建築の大学を卒業してから、貧しくて住まいがない人々や、突然起こった災害により住まいを失ってしまった人々のために、ローコストでローカルな材料を用いてできる建築を提供したいと常に考えてきました。日本は災害大国であり、耐震技術は世界一といえます。日本で培った技術をネパールの現地で未だに困っている人々のために活かしていきたいと思っています。

 


■青木 直美 / Aoki Naomi

国立研究開発法人防災科学技術研究所 企画部研究推進課 主任

 

 本プロジェクトの事務手続きを担当。

 

 左の写真のように金網で石を囲ったもの、見たことありますよね。みなさまの身近で形を変えながら自然災害の軽減に寄与している蛇籠。いつの時代にも適応できる蛇籠は、応用できる分野が多々あると思います。その一部を今回のプロジェクトで実施します。無限大の可能性を秘めている蛇籠研究への応援をぜひよろしくお願いします。
 

 後方に見える白い屋根は、本プロジェクトの実験実施場所である「大型耐震実験施設」です。2月に「大型耐震実験施設」でお会いしましょう!
 


 

税制上の優遇措置について

国立研究開発法人防災科学技術研究所へのご寄附については、税制上の優遇措置が受けられます。

 

(1) 所得税の申告について
防災科学技術研究所への寄附金は、所得税法第78条第2項第3号及び法人税法37条第4項に規定する寄附金(特定公益増進法人(独立行政法人)への寄附)に該当するもので、証明書を添付し確定申告することにより、所得税法上の寄附金控除を受けられます。法人の方の場合は、法人税法上の優遇措置を受けられます。

 

(2) 個人住民税の申告について
寄附金税額控除の対象として条例で指定している都道府県・市区町村に寄附金を支払った年の翌年1月1日現在お住まいの方は、税務署へ確定申告する際に条例指定分として申告書に明記することにより、確定申告をしない方は、市区町村へ寄附金控除の申告をすることにより、個人住民税の寄附金税額控除の適用を受けることができます。寄附金税額控除の対象として条例で指定している都道府県・市区町村については、寄附金担当(TEL:029-863-7523 E-mail:kifukin[AT]bosai.go.jp ※[AT]を@に変換してください )にお問い合わせ下さい。

 

(3) 上記(1)、(2)の申告について
この寄附金領収書が必要となりますので大切に保管して下さい。

【参考】文部科学省ホームページ「寄附金の税制について」

http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/06051001.htm

 

寄附金領収書の発行について

後日、「寄附金領収書」を送付いたします。確定申告の際、証明書としてご活用ください。

■領収書名義:Readyforアカウントにご登録の氏名を宛名として作成します。

■領収書発送先:Readyforアカウントにご登録の「ギフトの発送先ご住所」にお送りします。

■寄附の受領日(領収日):Readyforから防災科学技術研究所への入金日とします。

■領収書の発送日:1月末頃を予定しています。発行までお時間をいただきますが予めご了承願います。

 

 

その他

*本クラウドファンディングでのご寄附は、反対給付を求めないものとします。

*ご支援者様の御芳名を防災科学技術研究所のホームページ等において、公表をさせていただきます。御芳名の公表を希望しない場合は、下記お問い合わせ先に連絡ください。

 

お問い合わせ先


〒305-0006  茨城県つくば市天王台三丁目1番地
国立研究開発法人防災科学技術研究所  企画部研究推進課
Tel. 029-863-7523 Fax. 029-863-7825
E-mail:kifukin[AT]bosai.go.jp ※[AT]を@に変換してください

 


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