花はお腹を満たしてくれるわけでも,薬になるわけでもありません.けれども,生活に彩りを添えてくれます.必需品ではありませんが,花のない世界はどこか味気ない気がしないでしょうか?
 花を見て,初めに目に飛び込んでくる情報は「色」だと思います.赤やピンク,黄色や白といった一般的な色から,絞りや覆輪といった様々な模様,最近では緑や黒,ニュアンスカラーといわれる変わった花色も登場してきています.花色が多様であればあるだけ,花壇のデザインやフラワーアレンジメント等で表現できるテーマも多様になり,私たちを視覚から楽しませてくれます.しかし,すべての花がすべての花色を有しているわけではありません.より多くの品目で,今はない新しい色の花を作り出すことが,見た目が最重視される花の育種では求められています.そして,目的の色を出すためには,それぞれの花色がどのような仕組みで発現するのかを明らかにする必要があります.
 私たちの研究室では,特に黒色やアンティーク色(くすみがかかった色)といった珍しい花色の発現メカニズムを調査しています.ダリアの黒色花は,他の色の花が蓄積するフラボンという淡黄色色素を蓄積せず,赤色色素のアントシアニン,特に色の濃いシアニジン系アントシアニンを高蓄積することで黒色を示しています.これにはフラボンを作るための遺伝子の発現抑制が関与することを突きとめました.また,ニチニチソウの黒色花でも似た現象が起こっていることがわかりました.これらの情報を育種に利用すれば,他の品目においても黒色花を作り出せる可能性があります.
 
 また,季節や環境によって花色が変化するメカニズムについても解析を行っています.赤い品種が冬の低温にあたるとオレンジ色になったり,欧州では鮮やかなオレンジ色の品種が日本ではピンク色や淡い黄色になったり,意外にも花色の変化は頻繁に生じます.これらの色の変化が,どのような条件で,どこで刺激が感受され,花の中で何が起こって生じているのか.それを明らかにできれば,例えば,栽培にひと手間加えて花色を自在に変化させることや,同じ株で春と秋では違う色の花を咲かせて2倍楽しむ,といった新たな花の観賞方法を提案できるかもしれません.
 
 園芸学部には植物が大好きで,花を咲かせて見て楽しむことに価値を感じる学生がたくさんいます.そんな学生と共に,花をより彩り豊かなものにするため研究に励んでいます.

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