プロジェクト概要

“幻の復元国宝”とは!? ~はじめに~

こんにちは、本プロジェクトの広報担当の小犬丸(こいぬまる)と申します。本名です。

好きな食べ物は白玉とよく伸びるチーズです。

 

小犬丸アイコン

 

私は合同会社ダイスコネクティングというウェブコンテンツや企画を手がける会社に所属していますが、数年前から  デジタルの力で復元された国宝 ” や ” 生きた国宝 ” にまつわる活動に惚れこみ、お手伝いをしています。

 

さて、寄り道はこのくらいにして本題です。

まずこのプロジェクトが何をしようとしているのか、またプロジェクトが目指す「現代によみがえる ” 生きた国宝 ” とは一体なにか、をご説明していきたいと思います。

 

 

今から約2年前、ひとつのプロジェクトがこのReadyforで静かに始まりました。それは「幻の屏風を復元!きらびやかな『醍醐の花見』を体感してほしい」というプロジェクト。

 

このプロジェクトは一部が関東大震災で焼失した国宝「花下遊楽図屏風(かかゆうらくずびょうぶ)」の右側(右隻)をデジタルの力で ” 制作された当時の色彩 ” で完全な形に復活させよう、その復元資金の一部をクラウドファンディングで集めたい!というデジタル復元師であり日本美術研究家の小林泰三先生からの呼びかけでした。

 

※本プロジェクトは独自のものであり、東京国立博物館は関係していません。

 

小林泰三先生の以前のプロジェクトページ
https://readyfor.jp/projects/daigo-no-hanami

 

完全な形…そう、実はこの国宝は不完全。下の画像をご覧ください。

実は現在東京国立博物館におさめられている国宝のこの屏風、空白があることがわかります。なんと空白のこの部分は関東大震災のおり、たまたま東京に修繕に出されていたところを被災し、焼失してしまったのだとか。なんとも痛々しい様子ですね。

 

欠損のある国宝「花下遊楽図屏風」
屏風のメインとなるはずの中央部が焼失…

 

先生はこの空白を埋めるだけでなく、色彩を描かれたときの状態、つまりデジタルの力で新作の瞬間までタイムスリップさせようという挑戦に取り組みました。

 

一体そこには誰がどんな様子で描かれていたのか…。また制作された当時の色彩とはどんなものだったのか…多くのかたの賛同のもと、2017年の右側の復元は見事サクセスしたのでした。

 

制作当時の状態に復元された「花下遊楽図屏風」の右側と小林泰三先生
制作当時の状態に復元された「花下遊楽図屏風」の右側と小林泰三先生

 

震災で失われた部分も含め、見事に制作された当時の華やかな色彩に戻った屏風は当時と近い照明の明るさのもと(実際現代よりもっともっと薄暗いのです)、小林先生の復元時の根拠となった資料や苦労話、鑑賞のポイントなどを交えた報告会と共に多くのかたに楽しんでいただきました。

 

新作状態に復元された作品を鑑賞する支援者
座ると淀殿と視線が合う!ロウソクの灯りがゆらいで、表情が動く!屏風なのに躍動する!

 

あれから2年…多くのかたから「ぜひもう片方の屏風も復活させてほしい」「左側があってはじめて完成品となるはず」とご要望をいただくようになりました。

 

実はこの屏風は左右ふたつでひとつ、” つがい ” なのです。

 

(美術用語ではこの作品のようなタイプの左右一対で構成される屏風を六曲一双の屏風と言います。六曲とは6つのパネルがジグザグに曲がるようになっている仕様のことを言います)

 

現在の国宝「花下遊楽図屏風」左隻右隻
現存する「花下遊楽図屏風」(六曲一双)の姿

 

この屏風について、もう少し深く掘り下げていきたいと思います。

小林先生がこの屏風に関わることをライフワークと言うほど、さまざまな注目すべき点がこの屏風には複数隠れているとのこと。

 

では何がすごいのか…見ていきたいと思います。

 

そもそも国宝「花下遊楽図屏風」って?

 

さて、このつがいの屏風について、もう少しくわしくご紹介しましょう。

作者は狩野長信といい、狩野永徳の弟です。狩野永徳と言えば美術史に輝く超有名人。この絵(唐獅子図屏風)をどこかで見たことはありませんか?

 

唐獅子図屏風
唐獅子図屏風(三の丸尚蔵館蔵

 

これが狩野永徳の作品です。「花下遊楽図屏風」を描いた狩野長信はこの狩野永徳の末の弟にあたります。作者は画業エリートである狩野一族の一員なのでした。

 

「花下遊楽図屏風」が描かれた時期は安土桃山から江戸時代のごく初期。

実際の作品は東京国立博物館に収蔵されており、最近では桜の時期に展示されることが多いようです。今年、2019年も312日~48日まで本館に展示公開されていました。きっと来年の桜の時期にも会えると思いますよ。

 

それではいよいよ屏風に描かれている内容について注目してみましょう。ポイントは2つ。

 

大河ドラマ「真田丸」にも描かれたあのシーン!?

 

まずは登場人物!

少し大きめに描かれているメインの貴婦人はなんと秀吉の側室、茶々(淀殿)、そしてこのシーンはその秀吉の最晩年に主催した大宴会「醍醐の花見(だいごのはなみ)」の様子ではないかと言われています。

 

作品の描かれた時期はこの「醍醐の花見」の開催からそれほど時間は経過していません。

今で言うなら写真を撮るような気持ちでこの華やかな宴を絵におさめたのかもしれません。

 

屏風として描かれた背景とは全く異なると思いますが、現代でも総理主催の「桜を見る会」の様子は毎年ニュースになりますね。たぶん醍醐の花見だって、当時たくさんの人の話題になったと思いますよ!)

 

現在でも世界遺産である京都市醍醐寺では毎年4月第2日曜日に「豊太閤花見行列」が開催されています。この屏風が「醍醐の花見」の様子なら、歴史上の有名人が描きこまれていて、そのお祝いは現代にも続いています。屏風の中の世界と私たちの世界がつながっているかもしれない…ちょっとロマンではありませんか?

 

大河ドラマ「真田丸」の1シーン
大河ドラマでは秀吉が醍醐の花見の際に桜の木から転落する事故を起こします

 

エレキギターと同じようなセンセーショナルな楽器!?

 

また、こちらの登場人物を見てください。今度は日本の文化史的や音楽史的ににも興味深い点が見られます。

 

屏風内の三味線を弾く女性
髪もハードに動いている様子…ロック!

 

屏風の中の風流踊りの踊り手

 

派手な衣装で踊ったり、三味線を弾いたり…。実は当時、三味線(現在の三味線の原型となったもの)は当時の南から伝わってきた最先端楽器でした。

 

屏風の中の茶々と思われる貴婦人、とても新しもの好きのようですね。もしかしたら茶々を喜ばせたいと願う秀吉のはからいだったのかもしれません。

 

屏風内の風流踊りの踊り手たち
上半身と下半身をガラッと変えるコーディネートは当時のアバンギャルドルック!?

 

ちなみに現存する最古の三味線(木製のボディだけで皮は張られていないようです)は「淀」という銘で秀吉が作らせたものと言われています。現在の所在は明らかではありませんが、当時の姿を残す幻の三味線なのでしょうね。

 

また三味線の演奏にあわせて踊る人もいて、さながら今で言う野外ライブやフェスのような開放感の中、音楽に身をゆだね、おいしいお酒や珍しい食べ物に次々と手をのばし、舌鼓を打ったことでしょう。

 

小林先生はこの屏風の中の、生き生きしている人物たち、しゃれた小物たち、満開の桜…これらすべてが制作当時の状態に戻ったらどれだけ超ド派手でファンキーなのだろうと、長年この作品に愛着を持って現状復元などを手がけられてきました。完全な形になることにより、文化史的な見どころも浮かび上がってくる点もおもしろいですね。

 

右側が復元された今、いよいよもう片方、左側を作り、つがいに戻してあげたい…そしてそれをみんなで祝いたい…っ!

 

というわけで、このプロジェクトがついに始動することになりました。

 

屏風の復元をして“つがい”が完全になったら何をするの…?

 

復元され、新作状態で完全になった状態のものを作ってハイ終わりではありません。

これはリターンのメインになるものですが、ぜひこの色鮮やかな復元国宝屏風の鑑賞会を開き、皆さんで楽しみたいと考えています。

 

屏風のテーマが宴会なのに何もないのはちょっともの足りないでしょうから、ほんのおしのぎ程度ですが、軽食もご用意。また、当時流れていただろう三味線もBGMとして流し、気分だけでも「醍醐の花見」的な雰囲気で!

 

メインはもちろんつがいとなった屏風を楽しむこと。チラチラ揺れる灯火のもと、屏風がどんな表情を見せてくれるか今から楽しみです。また左右揃って完全な形になることでどんなパノラマが目の前に広がるのか…。

 

あわせて屏風の貴婦人の復元打掛もありますので、屏風をバックに貴婦人スタイルで記念写真も撮影していただく予定です。男性も似合う藤の柄は近くでよく観ると美しい「あしらい」の日本刺繍がほどこされています。一見の価値ありですよ。

 

復元打掛を着る参加者
打掛も小林先生が職人たちと苦労を重ねて復元されたものです

 

復元するのはメディア出演も多い小林泰三先生

 

復元というのはただ好きな色を塗ることではありません、きちんと基礎資料や監修を受けながら「こうだっただろう」という根拠を地味にコツコツ積み上げていく作業です。

 

以前の右隻を復元したのはデジタル復元師 小林泰三先生有限会社小林美術科学 代表取締役社長)。

新しい美術鑑賞活動「賞道(しょうどう)」の提唱者であり、主宰です。

 

日本美術研究家にしてデジタル復元師、小林泰三先生

 

先生は大学時代に美学美術史を学び学芸員の資格も取得、その後大手出版社で美術画像の復元にたずさわっていました。独立後はまだまだ一般的でなかったデジタル技術による美術の復元、そしてそれを「実際に参加者に使わせる」活動に昇華し、「賞道」が生まれました。

 

復元作業中の小林先生
復元作業中の小林先生。コツコツご自身で丹念に復元作業をおこなっています

 

現在では子どもから大人まで、そして全国に賞道の活動は拡がり、NHK「歴史秘話ヒストリア」「日曜美術館」、BS-TBS「にっぽん!歴史鑑定」など、メディアにも多数出演。著書も「日本の国宝、最初はこんな色だった」「誤解だらけの日本美術」(光文社新書)と長く一貫して「日本美術は自分で使ってみて初めてわかるもの」とおっしゃっています。

 

田辺誠一さんと
「にっぽん!歴史鑑定」の現場でのひとコマ。
番組ナビゲーターであり俳優の田辺誠一さんと。

 

 

賞道の活動とはどんなもの?

 

古墳壁画を楽しむ参加者
壁画のなかで埋葬された人と目があうよう描かれている人物がいることが
寝て鑑賞することで初めてわかる高松塚古墳

 

巻物を楽しむ参加者
アニメーション文化の源流である絵巻物を実際にくるくると巻いて眺める

 

掛け軸を実際に巻き下ろしてみる参加者
掛け軸は空間の差し色、窓の代用としての機能を参加者のかたが自ら体験

 

どんな姿勢で観るかでまったく異なる表情が見えてくる
どんな姿勢で観るかでまったく異なる表情が見えてくる。
日本美術は作品や同席者との対話のなかで新しい面を見せる。
​​​​​

 

「日本美術って難しい」「美術って堅苦しい」というかたも「わびさび」以外にも日本の美の懐はもっともっと海のように広くて自由!…と、日夜デジタル復元した国宝をたずさえ、学校や寺社、日本文化を事業とする場など全国津々浦々でご講演されています。

 

 

 

小林先生は公益的な場以外にもカジュアルな場でも国宝トークをおこなう、在野の研究者の中でも最先端を走る革命的な存在です。

 

スナック国宝のマスターとしての小林先生
人気の限定イベント「スナック国宝」のマスターでもある小林泰三先生

 

お金のつかいみち

 

ご支援いただいたお金はおおよそ次のような割合で遣わせていただく予定です。

 

使いみちの比率

 

前回のプロジェクトに比べると募集金額がアップしています。以前は他プロジェクトで利用予定で屏風を制作している中、その不足分をクラウドファンディングで募集しました。

 

今回はすべての費用を自費でまかなう必要がありますが、自己資金だけでは制作が進まないことが予想され、また皆さんにクラウドファンディングという形でご支援いただけないかとReady forでプロジェクトを公開することになりました。

 

小林泰三からのメッセージ

 

昨年プロジェクトを達成し、「花下遊楽図屏風」の右隻を復元して披露したときすでに、左隻の復元を希望する声がたくさんありました。右隻に描かれ関東大震災時に失われしまった主人公、淀殿をよみがえらせることから始まったこのデジタル復元ですが、華麗によみがえった淀をはじめとする宴を楽しむ人々を間近に鑑賞すると、どうしても左隻の風景も含めてダイナミックに鑑賞したい、ということになるのは当然でした。

 

というのも、この右隻左隻をそろえ一双として鑑賞しなければ、この花見の宴がどれほど豪華で、どれほど大きな敷地で行われていたかが、体感できないからです。「醍醐の花見を体験したい!」という意味では、今回のプロジェクト成功により、やっと実現できると言えるでしょう。

 

二回目になりますお願いですが、きっと色々と発見のある充実した内容となるはずです。その経過、結果をつぶさに報告して参りますので、どうぞ皆様ご期待ください。そして、できましたらプロジェクトへのご参加をよろしくお願い申し上げます。

 

どんどん使うことが本当の目的~最後に~

 

プロジェクトの最初にお話した「現代によみがえる生きた国宝」とは、つまり

 

・新作当時の色彩にデジタルレタッチで復元する

・さらにそれを鑑賞者が実際に触り、使ってみることができる

 

…ということなのです。

 

屏風ですから、そのものを広げる・たたむことはもちろん、室内で日よけにしたり、影に隠れて着替えしたりもできます。インテリアとしてどんどん国宝を使ってみることができるのです。

 

デジタルの力で復元されたこの屏風、実際に描かれた肉筆のものと違い、複製できるという利点があります。ですから、いくらでも量産できる、生活道具として思い切って使うことができるということが可能に。…ちなみに私はたたんで立てかけられていた右側の屏風をうっかりバターンと倒したことがあります…。

 

現存する国宝は当たり前ですが、国の宝です。それゆえ、後世にきちんと引き継げるよう、博物館や美術館では標本のようにできるだけ損耗しにくいよう工夫して展示されています。

 

しかし実は作られたときにはこんなにド派手だった、こんな風にも使っていたという使い手の感覚はどんどん時にさらされ、忘れ去られていきます。作家の工夫も、この作品が生活道具として見てきたであろう人々の生活の香りも失われていくのです。

 

使ってみるとデザインの意図がわかったり、モダンな印象をもったり…「日本美術はとてもエキサイティングだということに気づいてほしい」と小林先生は言います。

 

右隻を楽しむ参加者

 

そんな世界をいっしょに楽しみたい、日本美術のエンタテイメント性をもっと多くのかたに支援を通して知っていただきたいというのがこのプロジェクトの本当の目的です。

ぜひ完全版となったつがいの復元国宝「花下遊楽図屏風」を楽しみませんか?

 

また、このプロジェクトの情報をSNSにシェアしていただくだけでも私たちにとって大きな励みや支援なります。日本美術のおもしろさを伝えるこの活動の背中をぜひポンと押してやってくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。

 

【追伸】

本プロジェクトの更新情報は日本美術のコラムとしておもしろいものも掲載予定です。ぜひ引き続きチェックしにきてくださいね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
2019年10月31日までに、「花下遊楽図屏風」復元屏風(左隻)を 
1帖作成したことをもって、プロジェクトを終了とする。 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最新の新着情報