こんにちわ、中川克志と申します。サウンド・アートとか実験音楽のことを研究しています。1975年生まれです。2011年から横浜国立大学で教員やってます。

 

バシェの音響彫刻のことは知っていましたが、実は、それが大阪万博で展示されていたことは最近まで知りませんでした。不勉強でした。知ったのは、日本におけるサウンド・アート(ざっくりと言えば、音楽ではない音を使う芸術、です)の歴史や起源を調査し始めてからです。2015年11月には、大阪万博で使われていたバシェの音響彫刻が復元されてコンサートまで行われることを知って、京都まで見に行きました。

 

なんとも大げさな楽器が馴染みやすいけれども奇妙な音色を奏でるコンサートに参加して、不思議な気持ちになりました。なんだろうこの楽器は、もう一度見たい。僕がこの「バシェ音響彫刻クラウドファンディング」に期待して支援させていただいたのは、この時にとても面白かったからです。

 

 

関東でもバシェの音響彫刻が演奏される機会を実現して欲しい。バシェの音響彫刻を使って何か面白い音楽が奏でられて欲しい。

 

ということで、楽しみにしています。うまくいきますように。

 

 

2017年5月11日 横浜国立大学 中川克志

 

 

 以下、ちょっとした蛇足です。

 

 2014年にNYのMoMAのリサーチ・ライブラリーでアーカイブ調査をした時に、バシェの『Structures for Sound - Musical Instruments by Francois & Bernard Baschet』(1965年10月5日〜1966年1月23日)という展覧会が、MoMAで初めて行われた「音」という言葉を冠した展覧会であることを知りました。つまり、バシェの音響彫刻は、美術館で展示されるタイプのサウンド・アートの先駆的存在なわけです。

 

 でも同時に、この展覧会にあわせてバシェたちは、全米の何箇所かのライブハウスでコンサートを行っていたことも知りました(バシェ兄弟とLasryという作曲家とその家族からなるLasry-Baschet Structures Sonores ensembleという6人組のアンサンブルでツアーしたようです)。また、そもそもバシェたちは、新しい楽器を作ることで新しい音楽を作りたい、と思って、バシェ独特のあの音響彫刻を作ったことも知りました。つまり、バシェの音響彫刻は、音楽史の革新を目論んで作られたものでもあります。

 

 ということは、バシェの音響彫刻は、音楽と美術の双方の領域で先駆的かつ革新的なものとして構想された、と位置づけられるわけです。僕はこういうことにも興味があります。つまり、バシェの音響彫刻が21世紀の日本で音楽や美術にとってどんな存在として位置づけられるか、といったことにも興味があります。復元されたバシェの音響彫刻の音を聴きながら、音楽や美術の問題について考えてみたいと思っています。

 

 

参考:

バシェの展覧会について →url 

:僕が調査した時にはアーカイヴ資料をいちいち書庫から出してもらう必要がありましたが、今は、一部だけならオンラインにあるし、著作権関連の書類に署名しなければ複写できなかった展示の様子の画像も全部オンラインにあるようです。

 

バシェの楽器製作理念について:Baschet, François. 1963. “New musical instruments.” New Scientist 337: 266-268 (May, 2. 1963) →url

:20世紀の音楽のほとんどは18世紀の楽器で作られている、これはいけない、新しい音楽を作るためには楽器から変えていかねばならない、といったことが宣言され、既存の楽器のメカニズムが簡単に分析されています。

 

バシェの楽器製作理念について:ジョセフ・P・ラヴ「フランソワ・バッシェと音響彫刻」(『美術手帖』1969年9月号所収)

:おそらく初めてバシェの楽器製作理念について詳しく解説した日本語の記事です。ちなみに、おそらく『美術手帖』における「音響彫刻」という言葉の初出です。