【変化の兆し】

先日、私たちのクラウドファンディングが7月24日に終了して以来、初めて京都の扇子職人中西さんの工房を訪ねました。引換券の一つである国産扇子の見立てと、今後の「かはほりあふぎ」の制作スケジュールについて相談することが目的の訪問です。

 

仕事を終えて京都の工房に着いたのは19時。

 

玄関の戸を開けて「こんばんは」と挨拶すると、

「どうも、こんばんは!」と奥から中西さんの声。
(なんだか心なしか声が明るく感じますが、これは一体!?)

 

久々にお会いした中西さんは、変わらずお元気そうでした。そして、いつもより少々にこやかに見えます。

 

以前から、私はファンディングの進捗情報を中西さんに電話で逐一お伝えしており、先月末に無事に目標を達成して終了したこともお話していましたが、お忙しいシーズンやお盆にお会いすることは避けていましたので、実に4ヶ月ぶりの再会となりました。

 

私はプロジェクトやインタビューにご協力いただいたことへの御礼をして、今後の制作について相談を始めます。

 

 

最初に「最近、お仕事はいかがですか?」と私が質問すると、

 

「なんででしょうかねぇ。例年と比べて修理の仕事がとても多いんですよ。

今の3倍ほどあればこれだけで食べていける(笑)」

 

と、中骨だけの状態で修理を待っている沢山の扇子を指差して答える中西さん。
(私のSNSでの投稿をご覧になった方々からの依頼もあったのでしょうか!?)


中西さんは笑顔でこう続けます。

 

「プロジェクトの達成度合いを乙井さんから電話で聞いてましたけど、
『あぁ段々と面倒臭いことになってきたなぁ』『作らなあかんなぁ』と思てたんですよ(笑)」

 

…いつもの「中西節」が口を突いて出てきました。

 

齢70の個性的な京都の職人さんとの滑稽なやり取りは、
これまでの関係があるからこそ、成立しているのかもしれません。

 

こんな話をしている時、私は中西さんのご心境に少なからず変化が生じていることを察しました。

 

「ほんま、わからんもんですな…」

 

 

中西さんは私のような扇子産業とは無縁だった者が立ち上げた今回の「かはほりあふぎ」のプロジェクトが沢山のご支持を得て見事に成立したこと、また、時を同じくして生じている最近の身の回りの出来事を指してぼそりと言うと、少し遠い目をされました。


実は、新着情報にてお送りしてきた『扇子職人・中西潤吉が斬る!』のインタビューでは私が意図して掲載しなかったのですが、インタビューの端々で「もうできることなら、この仕事を辞めたいんですわ」と何度も漏らしていた中西さん。


「仕事を辞めたい」のフレーズを何度お聞きしても、私にはその言葉が本心から出てきたものなのかどうか、判別することはできませんでした。いつもの「中西節」の一つかもしれない、とも思えました。

 

しかし、中西さんのお仕事についての姿勢が解り、これまでの軌跡をお聞きし、
その感性に触れ、奥深い話をお聴きするにつれて、

 

「できることなら扇子作りを生涯続けていきたいと、心の奥底ではきっと思っていらっしゃるのだろう」

 

私はそのようにお察しするようになっていました。そうであって欲しい、という願いが後押ししていることは自分でも気付いていますが、誰かの願いが、祈りが通じることもあります。

 

私はこれからも中西さんにはずっと扇子を作って頂きたいですし、壊れたかはほりあふぎをずっと直して頂きたい。そう思っています。

また、中西さんと共に国産扇子の危機を訴え続けることで、伝統文化の継承に理解があり、新しい顧客や市場を創れる若者たちが、この京都に乗り込んで扇子をはじめ伝統産業の活性化に参画したいと思ってもらえる空気を創っていきたい、そう願っています。

 

「中西さんに若者が弟子入りしてきたら最高ですね!」私がそう言うと、

「そんなんいりまへん!」と笑う中西さん。

 

そんな若者が現れてくれたら…というのは単なる願いではなく、これからの私たちの使命となっていくのかもしれません。


【この数ヶ月の間に中西さんの身の上に起きた出来事】

今回訪問での中西さんの笑顔のわけ。ちょっとした心境の変化のわけ…。

少し訊いてみると、クラウドファンディングプロジェクトを始めて以降、このようなことがあったのだそうです。

 

・女性ライターの方と意気投合し、京都新聞に記事が掲載されました
・人気番組「和風総本家」の取材依頼を「自分には物語がない」と断りました
・例年よりなぜか修理の依頼が急増しています

 

僅か数ヶ月の間にこんなに沢山の変化が!素晴らしいことです。
 

それにしても「和風総本家」の取材を断られたお話は中西さんらしさが顕れていますが、折角なのに勿体無いな~と思いました(笑)。

 


今回のプロジェクトの引換券の一つに、

 

「私(乙井)がなかにしや京扇のありものの国産扇子の中から、支援者様を想定して見立てた扇子をお送りする」

 

というものがありました。そのお話がメインで今回工房を訪れたつもりでしたが、中西さんからこのようなお言葉が…!


「新しく仕立てさせてもらいます。ご希望や支援者さんの特徴を教えて下さい。」


…ということで、現在、9月下旬の発送を目指して、国産扇子を中西さんが仕立てて下さっています。

※これまでにご希望をお伝えくださった方は、中西さんに既にお伝えしています。

 

しばらくお時間を頂戴いたしますので誠に申し訳ございませんが、
どうか到着をお楽しみになさってください!

 

次回は、現在進めている「かはほりあふぎ」のスケジュールを共有させて頂きます。今回もお読みいただきまして有難うございました。

 

新着情報一覧へ