チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)という仕事

 

CLS伊藤 麻衣【左から2番目】

 

国立成育医療研究センターで米国Child Life Councilの認定を受けたチャイルド・ライフ・スペシャリスト(Certified Child Life Specialist:CCLS)として心理社会的な支援を行っています。すべての診療科において、病院にかかわるすべての子どもたちと家族が対象です。

 

具体的には、下記のような支援・サポートをしています。

 

  • 子どもの発達段階や理解度に合わせた説明
  • 感情表出やストレス発散、浄化まで考慮した遊び
  • 意識転換法、リラクゼーション、呼吸法、バーバル/ノンバーバルコミュニケーションなどを使用した、処置・検査・治療時のサポート
  • 信頼関係構築・維持を目的とした日々のコミュニケーション
  • 家族支援・きょうだい支援
  • 多職種との連携 など

 

そして、小児がんの入院病棟で無菌室にまつわる仕事として、たとえば無菌室に入る前に必要な治療のひとつである放射線照射のための説明や練習をしています。説明の際には、子どもの成長・発達や年齢、性格に合わせて理解しやすく、かつ恐怖や不安をできるだけやわらげて病気や治療と向き合うための心の準備ができるような説明を心掛けます。練習では本番と同じ場所、体勢、手順を事前に体験することで子ども自身が“何をするのか”“何をする必要があるのか”をその子らしく理解して対処しやすいようお手伝いをします。

 

無菌室に入ったその後も、気分転換、ストレス発散、浄化を目的とした遊びやコミュニケーションなどを通して介入し、子どもが治療にできるだけ前向きに主体的に向き合う力を引き出せるよう、寄り添い続けます。

 

ドルフィンセラピーのセラピストになりたかった幼少期

 

幼少期の夢は、ドルフィンセラピーのセラピスト

 

小さい時から犬がいる環境で育ったので、犬が大好きです。本を読むのが好きで、英語を聴いたり話したりすることが大好きなマイペースなこども時代でした。幼いころは、ドルフィンセラピーのセラピストになりたかったのを憶えています。また、小さいときはお母さんのそばを離れなかった人見知りだったはずなのですが、いつからかアウトゴーイングな性格になっていました。

 

今現在も世の中にさほど知られていないこの仕事を知ったきっかけは、15歳のときでした。とあるTV番組のエンディング数秒の中で、私服の女性が点滴をつけた子どもと遊んでいて、2人ともとっても楽しそうに笑っている場面を見て、「この人みたいになりたい」と思ったのがきっかけです。その仕事がCLSだと知ったのは数年後のことでした。

 

人生みんなそれぞれが楽しく幸せに生きていけたらいいなという思いがあったので、病院にももっと笑顔があったらいいのに、みんながいつも笑顔だったらいいな、と漠然と思っていました。

 

相手に寄り添う、そのためにとどけたい体験

いずれ自分とは違う他の人のことも、大切に思えるひとになる

 

子どもたちが自身を受容して「できた!」と乗り越えられた場面を共有できたときや、子どもやご家族やスタッフがおだやかでいられるとき、スタッフとの連携がうまくとれたときは、CLSとして大きなやりがいやよろこびを感じます。

 

そして、子どもたちが自分たちを大切にしながら人生をすすんでいくために、みんなちがってみんないいと実感できる体験をとどけられたらと思っています。それらは、医療体験を人生の糧に思えるきっかけのようなものであり、自分のことを受け入れて大切に思えるものとなり得ます。

 

そうした体験の積み重ねが、いずれ自分とは違う他の人のことも、大切に思えるひとになる――そんな原体験になっていくのだと思います。

 

誰かの“Security Blanket”に

 

“Security Blanket(小さいころから肌身離さず使っている安心できるブランケット)”のような存在

 

CLSを志してから、“Security Blanket(小さいころから肌身離さず使っている安心できるブランケット)”のような存在=その人が必要だと思うときに手に取れて、あたたまったり心地良く安心できたりするような存在でありたい――と心に留めています。

 

そのあたたかさを叶えるのは、笑顔だったり丁寧さだったり、どんな感情も受け止める誠実さだったりします。

 

不安でいっぱいかもしれない子どもとご家族が、安心してここでの生活をすごせるように。丁寧に誠実に耳を傾けて寄り添うことを続けたいと思います。そして、その人の持つ力を一緒に信じて、引き出すことをお手伝いできたら、一緒にそのときそのときを過ごすことができらと思っています。

 

その子らしく生活のできる療養環境を求めて

 

 

一方で、子ども一人ひとりやそれぞれの家族に合わせた環境の整備が課題であると考えています。それぞれの発達段階とその時々のニーズに合った環境の提供、患者さんご家族それぞれのプライバシーを尊重した環境の提供を十分にできるような医療施設であることが大切だと思っています。

 

特に、無菌室(クリーンルーム)の中で生活する必要があるとき、寝る場所、食べる場所、薬を飲む場所、処置をする場所、遊ぶ場所などがすべて同じ場所になってしまうのは、一定期間限定とはいえ、子どもや家族にとっては負担の大きなことだと思います。

 

また、きょうだいを含めた家族の時間の確保も大きな課題です。環境整備に加えて入院してなかなか会えないときも家族の絆やコミュニケーションを強めるような支援をしていきたいと思っています。

 

無菌室を、『自分だけの特別な空間』としてすごせるような場所にしたい

 

 

無菌室(クリーンルーム)自体、一定期間とはいえそれまでの入院環境ともまた少し違う空間です。そんな場所を少しだけ“特別な空間”にできたら。

 

無菌室にしかない気分転換のツール(プラネタリウム、動くおもちゃ)や、それぞれの患者さんやご家族が自由にカスタマイズできる壁や空間。

 

また、やわらかな雰囲気やプライバシーが確保できるようなデザイン、リラクゼーション効果の望める香り、ライトなどの設備がもっと充実するといいなと思います。

 

みんなの力を合わせて、優しくてあたたかい未来につながりますように

 

 

どんな時も、どの子どもも、彼らの基盤である家族も、とっても強い力を持っています。それは、私たち周りの大人も同じです。その人らしくいろいろな形や色をしていて、そのひとらしく前にすすむ力が必ずあります。

 

そして、一緒に時間や状況や機会を共有することでお互いのその力を引き出すことができると思っています。

 

子どもたちが大切なのと同じように、今このメッセージを読んでくださっているあなたも、大切な存在です。

 

病気と生きていても、乗り越えて生きていても、精一杯生きて亡くなっても、障がいがあっても、健康でも、その子らしく生きられるような世の中でありますように。外見や状況、価値観が違う相手のことも大切に思えるあたたかい世の中でありますように。そして、「どんなあなたも大切」「ここにあなたの味方がたくさんいる」と、言葉でも、姿勢でも伝え合える――そんな世の中になりますように。

 

あなたの力と、子どもや家族や医療スタッフの力とを合わせて、優しくてあたたかい未来につながりますように。

 

 

このページを読んでくださって、ほんとうにありがとうございます。

 

無菌室をつくろう

クラウドファンディグでのプロジェクト期間は終了いたしましたが、まだまだご理解・ご支援の輪の広がりを感じております。そして、一人でも多くの方々の願いのとどく企画にできればと思っております。 小児がんと戦うみんなの願いである「無菌室」の新設に、引き続き力をお貸しください。

▼お申し込みはこちら ※今年度中、もしくは資金調達の目途が立ち次第、募集は終了致します

 

今後とも、国立成育医療研究センターを何卒よろしくお願いいたします。

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