
支援総額
目標金額 2,500,000円
- 支援者
- 250人
- 募集終了日
- 2019年10月30日
資料保存器材さんの解説「写真資料の劣化と保存について」
お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。
今週READYFORサイトのデザインが変更され、写真や文章が横長の表示となりました。プロジェクトページのトップの写真も両側が帯状に黒くなって、まるでアナログ時代のテレビ番組を、地上デジタル放送で取り上げる時を思わせるような表示となっておりますが、お気づきでしょうか?
プロジェクトの方はお蔭様で現在、目標金額の76%まで達しております!
残り12日ですが、引き続き頑張ってまいりますので、どうぞ最後まで温かい応援を宜しくお願い致します。
さて、今回の新着情報は、このプロジェクトで【歌舞伎ブロマイド】を保存する「アーカイバル容器」の制作をお願いする、株式会社資料保存器材の方にお願いし、写真資料の劣化と保存についての記事をご提供頂きましたので、ご紹介させて頂きます。
写真資料は材質上、補修も脱酸処置も難しく、保存がたいへん難しい資料ですが、何故写真が劣化するのか、そしてどのように保存すればよいかを、詳しく解説して頂きました。
また、今回のプロジェクトとは別件ですが、この度、当館が所蔵する映画スクラップの保存に関して、「デジタル化」という大きな進展があり、デジタル撮影準備のための簡易補修作業を、資料保存器材さんの工房で見学させて頂きました。【第6弾】の新着情報で、詳しくご報告しておりますので、こちらもぜひ合わせてお読み下さい!
▽松竹京都映画スクラップの補修見学@資料保存器材工房【ご報告】
https://readyfor.jp/projects/ootanitoshokan6/announcements/113894
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写真の劣化と保存について
松竹大谷図書館様から写真資料の劣化について説明してほしいとのご要望をいただきました。今回ご相談いただいたブロマイドなどに代表される紙焼き写真の劣化について説明致します。
劣化についてお話しする前に、紙焼き写真の構造を説明します。技法によって構成や素材は異なりますが、一見1枚に見える写真は以下のような3つの層で構成されています。写真が劣化をしたとき、どの層に劣化が起きているかを見極めることが大切です。
1)支持体
金属、ガラス、紙、樹脂があります。
2)バインダー層
主にゼラチンが使用されていますが、アルブミンやコロジオンが用いられることもあります。ほとんどの写真ではこの層に画像材料が含まれていますが、一部バインダー層を持たず、支持体に直接画像材料が含まれているものもあります。
3)画像材料
銀、染料、顔料などがあり、乳剤層やバインダー層の中に分散されています。
次に写真に劣化を引き起こす原因をご紹介します。様々な要因がありますが、下記のように大きく3つに分けて考えることができます。
1)化学的劣化(銀鏡化、退色、黄変など)
2)物理的劣化(破れ、破損、欠損、変形など)
3)生物的劣化(カビ、虫害など)
写真特有の化学劣化のうち、代表的な例として銀鏡化があります。
プリント上面の画像がまるで鏡のような金属的な光沢を出す現象です。(画像1)銀鏡は酸性の雰囲気や水分によって画像を形成する銀粒子から発生した銀イオンが、バインダー層の表面に達して還元されて起こる現象です。

画像1:銀鏡化した写真 (【音貞アルバム】より 松竹大谷図書館様ご提供)
つぎに銀の硫化があります。画像銀が、空気中の二酸化硫黄や硫化水素と反応して黄褐色の硫化銀を形成し、画像を変色させます。また現像処理のうち、定着剤のチオ硫酸ナトリウムが残留した場合にも同様の変色を起こします。(画像2)

画像2:変色・退色した写真(【音貞アルバム】より 松竹大谷図書館様ご提供)
物理的な劣化は、破れなどの破損、折れ、亀裂、欠損、汚れなど、人為的ミス(ハンドリング)や不適切なアルバムや容器での運用や、温湿度などの環境が原因でも起こります。
最後に生物的な劣化はカビや虫損があります。バインダー層に使われているゼラチンは動物の骨などから抽出されたタンパク質のためカビが生えやすいといえます。紙焼き写真にカビが生えると、バインダー層そのものを侵食し画像に変色などの影響を与えます。(画像3)
画像3:カビ、虫損により劣化した写真(松竹大谷図書館様ご提供)
これらすでに起こった劣化を処置することは難しいため、新たな劣化を引き起こさない環境の整備が重要で、温湿度、光、大気汚染、虫害対策などを考慮する必要があります。
環境整備の一つとして保存容器への収納があります。収納することで光などの環境汚染や、塵、埃や虫など異物の侵入や、取り扱いによる人為的ミスから写真を護ことができます。
しかし写真を長期保存するための容器や包材はなんでもよいというわけではありません。身近に入手できる保存容器や包材の中には、写真に悪影響を与えてしまうものもあります。写真の長期保存に望ましい包材の品質は、2つのISO(国際標準化機構)で規格化されています。
■ISO18920:2011 Imaging materials - Reflection prints Storage practices、(写真-写真印画の保存方法)
■ISO 18902:2013 Imaging materials -Processed imaging materials -Albums, framing and storage materials(写真-現像処理済み写真フィルム、乾板及び印画紙 包材、アルバム及び保存容器)
使用する材料はISO 18916:2007 Imaging materials -Processed imaging materials -Photographic activity test for enclosure materials(処理済みイメージング材料-写真保存用包材の(長期保存のための)写真活性度試験)※以下PAT。に合格した材料が推奨されます。PATは対象の素材に温度と圧をかけて強制劣化させ、包材が写真資料に及ぼす影響をシミュレートし、画像に与える影響(ゼラチンや銀への影響)、汚染、斑紋の3項目について測定します。PATに合格するにはこの3項目すべて基準を満たさなければなりません。
また保存容器の材質だけでなく、出し入れの際に写真に負担や損傷が起こらないように形状も工夫する必要があります。
今回、松竹大谷図書館様からご要望いただいたブロマイド用の保存容器では、デジタル化を行うこともあり、閲覧性より収納を優先してほしいとのご要望でした。そのためブロマイドを1枚1枚収納するアルバムのような保存容器ではなく、まとめて収納する箱にしました。ブロマイドと、収納先の書架のサイズを考慮して設計しました。ブロマイドは閲覧時の探しやすさと、画像面に触接触れないようPATパスしたOP袋に収納します。(画像4)

画像4 松竹大谷図書館様所蔵ブロマイド用保存箱とOP袋
写真用の保存容器は2種類ございます。いずれもボード、接着剤、リフィルなどすべてPATをパスしています。
1)アーカイバルバインダー(画像5)
収納した写真をアルバムのように閲覧することができる保存容器です。写真用のリフィルはプリント・ネガ、ポジフィルムなど様々なサイズをご用意しました。リフィルをファイルするバインダーは、一般的なバインダーファイルと異なり、小口だけでなく、天地も覆う構造の為、バインダー内を完全な暗所にすることができます。

画像5:アーカイバルバインダー 株式会社資料保存器材
2)紙焼き写真用保存箱と中性紙フォルダー(画像6)。
写真を二つ折りの紙製フォルダ(無酸、無アルカリ、無サイズ)に挟み、縦にならべて保存することができます。保存箱は一般的な被せ箱ですが、収納する写真の量が少なく、傾きが生じると、写真を変形させるおそれがあるため、保存容器の中に細かく仕切りを設けることで、傾きが起きにくいような構造にしています。

画像6:紙焼き写真用保存箱 株式会社資料保存器材
この他、写真を劣化させると思われる既存の包材から写真を取り外す処置も行っております。例えば、古い台紙は酸性紙が使用されていることが多く、長期間接触していると写真に酸の影響が出る恐れがあります。また写真整理で一世を風靡した粘着材付きのアルバムは取り外しが困難で接着剤による変色や、劣化が問題になっています。弊社では酸性紙の台紙や粘着剤付きのアルバムに貼られた写真の除去なども行っております。
事例:https://www.hozon.co.jp/koubou/post_12938
(株式会社資料保存器材HP 「今日の工房」より)
今後も私たち株式会社資料保存器材では今後も技術の深化や経験を高め、お客様が所蔵する資料を安全に保存、活用できるよう提案やサポートを行っていきたいと考えています。
■参考文献
1)<講演>記録を残すために:写真資料保存修復の基礎 白岩洋子
GCAS report : 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 5巻 2016年2月
http://hdl.handle.net/10959/00004229
2)PAT(写真活性度試験=Photographic Activity Test)の概要と有用性―アーカイバル容器の確かな信頼のために (小林尚美、阿部祐貴)
https://www.hozon.co.jp/report/post_7898
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今回のプロジェクトでは、皆様からいただいたご支援で、デジタル撮影アーカイバル容器の制作を資料保存器材さんにお願いし、貴重な【歌舞伎ブロマイド】を末永く保存し未来に伝えていけるよう、皆様の支援のお力とともにぜひプロジェクトを成功させ、資料保存器材さんの技術のお力添えをいただきたいと考えております。
リターン
3,000円
活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載
■サンクスメール
■4月末に報告メール
■松竹大谷図書館HPに名前を掲載
※ご了承いただいた方のみ掲載いたします
- 申込数
- 69
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2020年4月
5,000円

松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー(2種類1組セット)
3,000円のリターンに加え、
■松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー(2種類1組セット)
当プロジェクト限定 歌舞伎台本『曽我綉侠御所染』と、映画台本『男はつらいよ』第一作の表紙デザイン!
※デザインは全て一緒です
- 申込数
- 59
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2020年4月
3,000円
活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載
■サンクスメール
■4月末に報告メール
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- 2020年4月
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松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー(2種類1組セット)
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当プロジェクト限定 歌舞伎台本『曽我綉侠御所染』と、映画台本『男はつらいよ』第一作の表紙デザイン!
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- 制限なし
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- 2020年4月

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