レーベンがやってきたこと　保護活動と繁殖

　すぐ近くでブリーダー崩壊の現場が見つかり、もう動物は飼わないことを飼い主さんに受け入れてもらい、全頭を複数の保護団体で保護しました。普段、保健所で殺処分期限のつけられた野犬の受け入れをしている団体なので、飼いきれなくなった人間の後始末に協力する余裕はなかったのですが、レスキューのタイミングが遅れるとどんどん犬の生命が消えてしまうことがわかり、代表の入退院の前後で対応していきました。

　犬に罪はないのです。

　そんな中、順に避妊去勢手術の病院に運んでいたら、獣医さんから連絡が。「妊娠している犬が居ますが、手術はどうされますか？」飼い主さんは、今妊娠している犬は居ないと言っていたはず。

　私達は、犬の生命は救いたいけれど、犬を増やしたいわけではありません。あの環境で栄養状態も悪く、血縁もおそらく濃くて、健康な子犬が生まれる保証はどこにもありません。母犬の体力も奪われて危険な状態になるかもしれない。重い病気や奇形などの障害をもった犬が生まれてきた場合、そこに多額の医療をかける余裕は団体にはありません。現在保護している他の犬にも影響が出ます。純血種の子犬に注目が集まれば、里親が見つかるはずの雑種成犬たちのご縁が遠ざかる可能性も高い。出産そのものでシェルターが混乱したり、落ち着かない環境で無事に生まれなかったりする場合もある。この出産をどうするか、ボランティアは一生懸命話し合いました。お腹に宿った生命を迎えるのか、避妊手術と共に子犬を諦めて取り出すか。意見は割れました。

　そんな中で、これまでも預かりボラをしてくださっていた里親ご家族から申し出がありました。「うちで出産も含めて担当したい」

　ありがたい提案に、最大限の協力をすることを伝えて、お願いすることになりました。

　母犬は、もなか。子犬達は、みりん、こんぶ、しらす、という名前になりました。

　ご家族の子ども達も、産まれたての子犬は初めて見たそうです。日に日に大きくなっていきます。

　もなかは、あの家にそのまま居たらこんな出産ができたのでしょうか？話し合いの結果堕胎することになっていたら、この子達には会えなかったわけで、預かりご家族のおかげです。

　お店で犬を選んでお金で買うように、この子達の行く先が決まることは望みません。でも、保護した中に子犬は居ないのか？というたくさんの問い合わせがありました。

　結局、里親さんの中でここというご家族が迎え入れてくださることになり、一般募集はしない形で決まっていきました。頭数を増やして行き先が決まらず抱え続けるということは避けられ、もなかもその後避妊手術をしました。

　保護団体の中で犬を増やして良いのか、ということに関しては、他の団体の考えも様々です。産ませるために繁殖させたわけではありませんが、こういったケースもあるのか、といった学びになりました。

　その後、譲渡されていったスピッツ達は美しく、元気です。純血だから、雑種だからどちらがどうということはありません。犬で利益を得ようとした人間が大変な状況を作り、犬が迷惑した、ということが共通なだけです。