プロジェクト完了のご報告
昨年6月から8月に実施いたしましたReadyforによるクラウドファンディング「野生生物との共生を|知床ネイチャーキャンパスの継続を皆さまと共に!」は、皆様方のご協力により無事、第一段階の目標を達成しました。本当にありがとうございました。いただいたご厚志により「知床ネイチャーキャンパス2022 リカレント」は無事終了し、そのご報告は既に皆様にお送りした通りですが、ここに改めて感謝の気持ちを知床からお伝えしたいと思います。
いただいた寄附総額2,525,000円の使途について、事業年度終了に際してご報告します。
総額から㈱レディフォー様の事務手数料472,175円を差し引いた2,052,825円のうち200万円はプロナトゥーラファンド様よりいただいた助成金と合わせ「知床ネイチャーキャンパス2022 リカレント」の実施における直接経費、及び同ファンドの助成金支給対象外経費(人件費や固定費などの諸経費)に充当させていただきました。
残額の52,825円は、今回のクラウドファンディングのプロジェクトページに記載させていただいたとおり、ケースメソッド教材の開発とその教材を利用した「知床ネイチャーキャンパス-3STEPで学ぶヒグマ管理」(本年1~2月実施)の必要経費の一部に充当させていただきました。いただいたご寄附が当初目標を上回ったことにより、この教材開発とその後の新しいネイチャーキャンパスの実施につなげることができ、私どもの財団の活動にとっては非常に大きな「次の一歩」につながりました。重ね重ね感謝申し上げますとともに、今後も当財団へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
【「知床ネイチャーキャンパス-3STEPで学ぶヒグマ管理」開催報告】
※当財団のホームページにて掲載しておりますが、ここで改めてご紹介したいと思います。
https://shiretoko-u.jp/
①事前のオンライン学習
大学生及び大学院生と、社会人を対象とした受講生の皆さんに、事前にヒグマ専門家の間野勉さん(北海道立総合研究機構)のオンライン講義を受講していただき、当財団で作成した物語風のケースメソッド教材「ヒグマ対応最前線」による予習していただきました。
②ズームによる講義とワークショップ
2月11〜12日には14名の大学生・大学院生を対象に、2月25~26には社会人を対象にした「知床ネイチャーキャンパス-3STEPで学ぶヒグマ管理-」の「ケースメソッドとワークショップ」を開催しました。
学生向けの初日は、まず知床財団保護管理事業係・伊集院彩暮さんに実際の管理の現場で感じている体験談(モヤモヤ)をお話いただき、その後グループに分かれ、ケース教材をもとに知床のヒグマ管理の課題や共存のあり方について議論を深めました。初日最後の全体討議では、敷田麻実・北陸先端科学技術大学院大学教授のファシリテーションのもと、発信している情報の質、国立公園有料化の可能性など多様な意見や対策が話し合われ、時間が足りなくなるほどの議論の時間となりました。
社会人向けの初日は、は知床財団保護管理事業係・伊集院彩暮さんのリアルな体験談(モヤモヤ)をじっくりお聞きした後、敷田麻実さん(北陸先端科学技術大学院大学教授)のファシリテーションのもと、ケース教材を題材に、1「理想的なヒグマと人との関係」2「管理担当者が直面する課題」について、まずチームごとに、その後全体でディスカッションを行いました。理想的なヒグマと人との関係については、「緊張感」や「距離感」というキーワードが多くの受講生から上がりました。では誰がどんな距離でヒグマに遭うのが問題なのか?というような議論の切り口を見出すところからスタートしました。直面する課題については、複雑に絡み合った現実の事象を前に、そもそも根っこにある課題とは何なのか?を整理。様々なステークホルダー(行政、観光客、地域住民など)の認識のズレが問題ではないか?認識のズレを修正するのは難しいので現実的には強制力がもっと必要なのではないか?など深い議論に進んでいきました。
学生向けの2日目は、前日のケースメソッドの続きで「知床の現場でヒグマ管理にあたる高松(ケース教材の主人公)がなすべきこと」の議論からスタートしました。午後は、そこから発展したテーマ「300万円で有効なヒグマ対策を考える」によるワークショップを行いました。各チームがヒグマ管理に関する地域の複雑な状況を理解、共有した上で、少しでも高松を応援し、課題解決の一助になるべく対策案を考えました。多様な意見を出し合ってディスカッションする楽しさ、合意形成の難しさも感じたのではないかと思います。そして最後の発表・ディスカッション。チームそれぞれの観点で興味深い対策案の発表が行われました。間野先生や伊集院先生、梶光一・東京農工大学名誉教授からそれぞれのチームに講評をいただき、無事全日程を終了しました。
引き続き行われた懇親会でも、講師も交え、様々なお話で盛り上がりました。ご受講いただいた皆様、講師の皆様、どうもありがとうございました!
社会人向けの2日目は、実際にケース教材の主人公・大地ができることについての話し合いからスタート。共有できるビジョンやあるべき関係があるのか、あるとしたらどんなビジョンで、何をすべきか?何ができるのか?へと話が進んでいきました。
午後からはケースメソッド議論の延長で、「3000万円で知床ウッズの事業を考える」のワークショップへ。各チームが予算配分も含めて、有効な対策を立てるためにそれぞれの視点から案を組み立てていきました。
最後の発表では、
・ヒグマの行動変容についての調査研究
・観光客を対象とした動画やイベントによるマナー向上策
・イベント化や農作物のブランド化も見据えて地域を巻き込む電気柵設置
・共感と体制づくりを軸に、地域で行うワークショップや交流会の開催
などなど、これまでの議論を踏まえたさまざまな案が発表されました。受講生同士の質疑応答のほか、講師の皆さんからもそれぞれのチームに講評をいただき、2日間のプログラムは終了。引き続き行った自由参加の懇親会でも、プログラムの感想や発表案についてざっくばらんに話し合うことができました。
オンデマンド配信講義、ケース教材での予習、ケースメソッドとワークショップ(大学生・大学院生対象、社会人対象)という2ヶ月にわたってオンラインで行った今回のネイチャーキャンパスは、このように全日程を終了しました。
当財団としても初めてのケース教材作成に始まり、全編オンラインでのプログラム進行など試行錯誤の部分も大きかったですが、今回の経験を今後のよりよい教育活動につなげていきたいと考えています。受講生の皆様、講師の皆様、お世話になった関係者の皆様、そしてご寄附を通じてこの活動を支えてくださった皆様、本当にどうもありがとうございました。
【ご参考】今回のクラウドファンディングの「プロジェクト概要と集めた資金の使途」より
野生生物と人との共存のために、その間に発生する問題を解決し全国の地域の未来に貢献する人材養成を行う「知床ネイチャーキャンパス」を実施し、安定的に継続できる組織基盤の整備を進めます。さらに知床で蓄積された経験を生かした教材等の開発を進めます。いただいた資金は、まずネイチャーキャンパスの継続実施に必要な人件費や諸経費として200万円を使用させていただきます。さらにそれ以上のご寄附をいただいた場合には、ケースメソッド等の教材開発のための人件費や諸経費、及び教育環境・体制充実に必要な機材やサーバー・通信環境等を整備するための資金に充当させていただきます。