こんな話を聞いたことがあります。結婚詐欺で捕まった男が刑務所に収監されました。すると、彼に騙された女性が面会にやって来て言うんだそうです。「他の女性は騙されたかも知れないけど、私にだけはあなたは本気だった。罪を償って刑期を終えるまで待ってるわ。出所したら私と一緒に暮らしましょうね」と。しかもそう言う女性は決して一人や二人ではないんだそうです。

 

これは一体どういうことでしょうか。女性の勝手な思い込みでしょうか。それとも男は彼女と一緒にいて「好きだ」と繰り返し言ううちに、その瞬間は錯覚して、女性に本気で惚れていたのかも知れません。

 

もう少し具体的に説明します。以前、うちに所属していた若手女優から聞いた話です。居酒屋のアルバイト初めて2週間、この店は自分に合わないと感じて辞めることにしました。そこで彼女は店長に「父が危篤なんです!すぐに田舎に帰らないといけなくなりました!」(実は実家のお父さんはすこぶる元気です)嘘が伝わったのかはたまた店長が百戦錬磨なのか、彼女の言葉に店長は半信半疑です。ヤバイと感じた彼女の交感神経は一気に心拍数をあげ血圧を上昇させ発汗が始まりました。

 

そこで彼女は祖父が亡くなった時のことや、映画で見た臨終のシーンなどを具体的に思い出し、それらを総動員して店長に説明し始めました。すると不思議なことに本当に父親が死ぬのではないかという錯覚が生まれ、涙がボロボロとこぼれて来たのです。それを見た店長はびっくりして立ち上がりすぐに2週間分のアルバイト料を計算してくれました。そして別れ際「これ僕からの気持ち」と言って、餞別まで包んでくれたんだそうです。帰り道、彼女は思いました、「もしかして、私って名女優かもしれない」と...。

 

実はこれが「チームプレイ」の大事な要素です。駆け引きして相手役の心を動かすのです。観客は戦っている俳優たちを見て「この2人の関係はこの先どうなって行くんだろう」ということに注目します。つまり個人プレイは人間の「今」を見せ、チームプレイは人間の「未来」を想像させる演技というわけです。

 

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