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｜仔猫の緊急搬送！

 

 

2023年3月某日、保健所からエンジンルームから仔猫が発見され、負傷しているとの連絡が、相模原北夜間動物病院にありました。意識はあるということでしたが、どのような状態か詳細は不明で、最悪の場合も想定しながら到着されるのを待っていました。

 

30分後、運び込まれた仔猫は顔を上げてこちらをみています。でも、その体は車のグリスと血液でベトベトな状態。状態を確認しつつ、応急処置をスタートしました。

 

 

｜何故そんな事故が・・・

 

 

エンジンを切ってすぐの車は、エンジンルームがとても暖かいので、猫たちはその暖かさを求めて、隙間から入り込み、エンジンルームで暖を取ることがあります。

 

今回の事故は、猫がいるなんて知らず、エンジンをかけてしまったため、エンジンのベルトに猫が巻き込まれてしまうという事故です。寒い時期に発生しますが、大人の野良猫さんだと警戒心が強いので、事故に合うことは少ないです。しかし、今年生まれたばかりの子猫の場合、すやすや寝込んでしまうと人の気配に気づけず、事故が発生してしまうのです。

 

「ボンネットバンバン」というキャンペーンがあります。野良猫や近くで仔猫が生まれたような形跡がある地域では是非、車のエンジンをかける前に、ボンネットを叩いて猫がいないか確認していただくことで、事故を防ぐことができます。

 

 

｜血とグリスまみれの体

 

運び込まれた仔猫は、上半身に怪我がありそうでした。左目がおかしいように見えましたが、風邪をこじらせているようで、すでに治りかけの様子でした。下半身は汚れも出血もありません。上半身を詳しく確認すると、両前足から胸にかけて皮膚が剥がれており、筋肉や腱、血管にも大きな損傷、筋肉の隙間にはグリスが入り込んでいる状態でした。

 

特に損傷が酷いのが左前足で、骨折はありませんでしたが、治療は困難であり、感染のリスクもあったため、緊急手術で断脚を行うこととしました。「がんばったね。もう大丈夫だよ」と声を掛けながら、手術の準備を進めました。

 

 

 

｜夜間の緊急断脚手術

 

一般に受傷から、6時間以内をゴールデンタイムと言われており、細菌感染を起こしていないため、しっかりと洗浄ができれば皮膚縫合することが可能です。（※犬や猫の咬傷や明らかな感染が考えられる場合は例外です。）さくらは、受傷から6時間以内なので早期に手術を行うことで回復も早くなると考えました。

緊急手術は夜の12時からスタートしました。左前肢断脚と外傷部位の洗浄、皮膚の縫合を行いました。筋肉組織の隙間に入り込んだグリスの除去にかなり時間がかかり手術が終了したのは明け方。欠損した皮膚の範囲も広範囲だったため、なんとか皮膚を寄せて縫合しましたが、おそらく破綻する部位もあるのではないかと考えながら、絶対安静で入院となりました。麻酔から覚めて、痛み止めも効いている様子で、チュールをペロペロ食べて、「にゃぁ〜」と、かよわい声でないてくれました。

ほっと一安心しました。

 

 

 

｜経過は良好・・と思われた。

 

昨日まで4本足で歩いていたのに、急に3本に。体に巻いてある包帯もあってか、入院室の中でコロンコロン転がっていました。でも、とってもいい子。スタッフに撫でてもらうと、うっとり、スリスリ。「助けてくれてありがとう」と言ってるかはわかりませんが、もりもり食べて、ぽっこりお腹になり、日に日に、目の輝きが増していくようでした。

 

一方で縫合している皮膚は、一部は生着してくれたようですが、一部は脱落しました。特に右前足の肘と脇の部分は動くところなので、治りが悪く、皮膚は完全になくなってしまいました。このままでは、ずっと包帯生活となってしまうため、保護猫の医療分野で提携させていただいている麻布大学に相談したところ、皮膚再建を行っていただけることになりました。非常に難しいとされている、自家皮膚移植（おしりの皮膚を脇に移植する）を行っていただけることになりました。

 

 

 

｜治った！

 

大学から帰ってきて3日間は絶対安静。移植した皮膚が生着することを祈りつつ、仔猫さんもおりこうにじっとしててくれました。

 

しっかり栄養を取って、大人しく過ごした結果、無事生着！そして、その後はみるみる回復しました。さらには、毛が生えてきました♪3本足での生活にも慣れてきたようで、ぴょこぴょこ歩いたり走ったり。入院室を散歩してると他の入院の猫さんたちが気になるみたいで、ケージの前でゴロン。スリスリ。すごい社交性。。。

 

 

この仔猫さんは、入院中に「さくら」と名付けられました。桜が咲いていた季節にやってきた仔猫。ちょうどクラウドファンディングをスタートした時期に治療を開始しましたが、梅雨に入ったつい先日まで、治癒まで2ヶ月かかりましたが、今はもう大丈夫。3本足のハンディキャップをもろともしない、可愛らしさと元気いっぱいな姿は、猫の生命力の強さを改めて実感することとなりました。さくら、本当にがんばったね！

 

これからはずっとのお家で、幸せに暮らしてもらえますように♪

 

 

クラウドファンディングの一部をさくらの治療に使わせていただきました。本当にありがとうございました。