文章は①から続いています。

 

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●論点6 営利企業の参入・競争主義の教育となる懸念
―自由競争の歯止めとしての教育委員会の役割
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多様な学びの場の公的支援とかかわって、バウチャー制度の導入などにより、営利目的 の団体などが参入し、自由競争化する懸念があるといわれています。そうであるからこそ、 その歯止めとして、個別学習計画の認定手続きに、公教育事業を担う教育委員会が関与す る実質的な理由があると思います。
これまで「民営化反対」という大雑把なくくり方により、「公」の活動よりも、子どもの 支援領域ではるかに実践的な蓄積を積んできた「民」の活動=NPO・非営利市民活動(フ リースクールやプレーパーク、シェルターなど)の社会的な役割や意義があいまいにされ てきました。また、営利企業の中には、良心的な学習支援活動に従事している場合もあり、 NPO活動が発展していない地方、地域における学校以外の学びの場として「認定」対象 からすべて除外するわけにはいかないでしょう。
不登校問題など子どもや保護者の支援活動が市民・NPOによって支えられてきた現状 をふまえて、自治体と市民・NPOとの連携・協働による支援協力体制づくりが求められ ます。

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●論点7 フリースクールなどが、発達障がいの子どもなどの排除の手段とな りうるか?
-文部科学省令(新法の施行規則)で定める基準がポイント(質問 2-3、4と同じ) ________________________________________

発達障がいなどを疑われる「手のかかる」子どもが、むやみに特別支援学級に押し込め られるという現実がある。その延長として、ホームエデュケーションやフリースクールも 利用されることは確かに想定されるところです。
しかし、その現実は、不適切な制度運用から生まれたものであり、主には、学校教職員 の発達障がいへの無理解(研修の不備等)など、教育力量と見識、さらには人権感覚など が問われる問題です。
ご指摘のような特別支援に関する問題と、今回のフリースクールなど多様な学びの場の 公教育参入の問題は、目的、性質の異なる事柄です。前者は、障がいのある子どもの学習 権を通常の学校の場で平等に保障する取り組みであり、後者は、不登校の子どもの学習権 を、通常の学校ではない「多様な学びの場」で自分に合った方法で学ぶことを保障する取 り組みです。
そのような目的や性質の違いを無視して、現象面で同じ問題性が認められるからといっ て、制度改革自体の正当性を否定してしまうことでよいのでしょうか。もちろん、その点 を含めて、ご指摘の問題は法の運用に関する問題であり、文部科学省令(新法の施行規則) で定める基準がポイントの一つになると思います。

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●論点8 多様な学びの場への公的支援
―文部科学省令(新法の施行規則)で定める基準がポイント(質問 2-3、4と同じ) ________________________________________

法案では、附則 2 で、「政府は、速やかに、多様な教育機会の確保のために必要な経済的 支援の在り方について検討」し、「必要な措置を講ずるものとする」としています。
冒頭で述べましたように、この法案は、学校外の学びの場を義務教育、普通教育に参入 させることにより、不登校の子ども、保護者が長い間苛まれてきた自己否定感から解放さ れるような環境づくりとなる、という趣旨にもとづいて、その推進をはかることが妥当と 判断しました。
フリースクールやフリースペース、あるいはオルターナティブスクールなどにおける居 場所作りの取りは、子どもの命と暮らし、遊びとも一体化した居場所こそが、子どもの真 の学び、自己決定による学びとなり、自己肯定感を高める場ともなる、という考えに立っていると思います。その考え方が、法案にも反映されていくことが望ましいと思います。 そのため、個別学習計画認定にともなう保護者への経済的な支援のあり方も、個別対応(「学 習支援金」等)以上のものが構想されていいと考えます。
ただし、その点を含めて子どもの命と暮らし、居場所を創り出してきた多様な学びの場 への公的支援のあり方は、当面は、法案に基づく運用面、制度設計として具体化していく ことが望ましく、そのための文部科学省令(新法の施行規則)で定める基準がポイントに なると思います。憲法 89 条で、公的支配が及ばぬ団体、機関への公的支援の禁止がうたわ れているために、機関助成が困難という認識が一般的ですが、子どもの命、暮らしを守る 居場所に対する公的支援は、十分に公共性のある活動であり、私学助成のように、機関助 成の道を探っていくことも大切であるといえましょう。

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●論点9 二重学籍の解消問題と「修了認定」による差別的な扱いへの対応
-文部科学省令(新法の施行規則)で定める基準がポイント(質問 2-3、4と同じ) ________________________________________

二重学籍の問題とは、学校外の学びの場、たとえば、フリースクールやオルターナティ ブスクールに在籍していても、卒業時には原籍校で校長の許可を得て卒業資格を得るとい う意味での二重籍でした。せっかく学校外の学びの場、居場所で長い間生活し学んだにも かかわらず、卒業証書は、まったく通ったこともない学校から授与される、ということは 子どもにとっても苦痛だったと思います。その意味では、今回自身が選んで学んだ場での 学習成果を基にして修了証書が出るということで、子どもも達成感を味わえるし、二重学 籍問題も基本は解決することになります。
ただし、教育委員会の修了証書と学校での卒業証書とが、同じ義務教育修了の証明であ って質的に異なるものではないとはいっても、場合により「差別的な扱い」をうける危険 性がないとは言えません。特に高校進学の際に、これまで不登校の子どもが内申点で不利 な扱いを受けてきた現実があります。今回の「修了」認定が、同様に不利な扱いを受ける 可能性がないとはいえません。ただし、その点への配慮を含めて、今後検討される制度の 運用、制度設計上の問題であり、その中で重要な課題のひとつになるでしょう。そこでは、 基本方針や文部科学省令(新法の施行規則)で定める基準がポイントになると思います。

<義務教育修了証書一本化、原籍校一本化は、将来の課題>
なお、義務教育修了証書を一本化するという道もありえますが、それは新しい制度改革 の問題であり、学び場、学校単位での修了行事(卒業式)や生徒の母校愛、達成感への配 慮などから、すぐに解決できる問題ではないように思われます。また、上記のような差別 を心配して(さらには、子どもの所在確認システムとして)、原籍校に一律、籍を残すという考え方もありえますが、それでは、まさに学校教育法の補完法として学校至上主義の制 度的な枠組みを越えられないだけでなく、「学校外の学びの場の義務教育参入」という趣旨 を大きく踏み外してしまうことになりかねないと思います。

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●論点 10 法案成立のよって生じる地方の経済力格差、地域間格差の問題 ー学校至上主義の制度的な壁に風穴をあける
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わたしは、どんなに実践的な努力をしても、どうしても超えられなかった制度上の壁に 対して「風穴をあける」こと、その突破口となるのが、今回の法案だと考えています。
いったん制度ができると、地方における経済力格差や地域間格差の問題がよく指摘され ます。多様な学びの場や民間団体の実践についても、確かに格差が生じるでしょう。ただ し、だから制度がいらないということにはならない、実践的にはどのように苦労しても超 えられなかった制度の壁を突破する、その意味を考えていきたいと思います。
制度改革で、確かに多様な学びの場作りなどにおいても地域差、経済力差が生じること になり、いろいろ混乱も生じるでしょう。しかし、その「格差を自覚できること」も制度 あってのことです。かつ、法制度があるからこそ、その格差を是正していくことが行政の 責務になるわけです。
学校以外の学びの義務教育、普通教育への参入という制度改革は、学校至上主義の制度 とそれを支えてきた考え方に対して、「風穴をあける」効果があります。
最近、西野博之さんが文科省の職員を集めて講演されたと聞いています。おそらくこの 法律が通ると、教育委員会職員に対しても、「学校以外の居場所づくりと学びの重要性」な どについて研修が始まるでしょう。
学校至上主義と学校復帰という発想にとらわれ続けている日本の教育行政、学校教職員 に対して始めてメスが入れられるのです。制度の壁を突破するという取り組みは、至難の 業ですが、そのような今まで想像できなかった効果を期待できます。
法案に限界があることは百も承知です。しかし、制度的な突破口を開きたい、という思 いで進めてきた取り組みにご理解をいただければ幸いです。
 

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