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- 2022年2月1日
元保護猫「カケル」の記録 2
こんばんは!
またまた夜分遅くに失礼致します。
昼間活動するとどうしても更新がこの時間になってしまい、申し訳ありません。
前回に引き続き、カケルについての記事になります。
今回は1回目に大学病院に連れて行った時の記録を読み解いていきます。
2017年7月19日、カケルを1回目の大学病院に連れて行きました。
カケルの怪我の状態を知るためには、レントゲンだけでなくCTとMRIによる精密な画像が必要でした。
しかしCTとMRIを撮るには、麻酔が必要です。
麻酔はみんな同じくらいあるショック症状やアレルギーの危険性の他に、内臓(主に腎臓と肝臓)の機能低下により麻酔から覚めないという危険性があります。
そのため、初めに血液検査で「麻酔をかけて大丈夫なのか?」という判断と、神経学的検査とレントゲンで「CT&MRIのために麻酔をかける=リスクを負って検査をする意味はあるのか?」「麻痺は本当に首の怪我から来るものなのか?」という確認をしました。
まずは神経学的検査の説明から。
神経学的検査とは、脳から伝わる神経と体の各部位の脊髄(背骨に通っている全身の神経の大元)から筋肉に伝わる神経がちゃんと働いているか、小さいゴム製の金づちで体の一部をトントンと叩いて反応を見るテストです。
生き物の神経は主に脳からの信号と各部位の脊髄からの反射の信号で命令を出します。
やけどをした時に「熱い!=危険だ!」と咄嗟に手が離れるのは各部位の脊髄から反射の信号が筋肉に伝わったことで起こります。
その時、咄嗟に離れた手がそのまま後方に飛んでいったり、顔面に当たることはありませんよね?
それは「熱い!離れろ!」と反射の信号が出た時に脳から「そこまで逃げなくても大丈夫、このあたりで止めよう」という信号が出ているため、手がぎゅっと踏みとどまるからなんです。
カケルは神経学的検査で、四肢(手足)の感覚低下の他に、反射亢進(反応しすぎる)が見られました。
これは各部位から出ている反射の命令に対して、制御する脳からの「これくらいで大丈夫」という信号が筋肉に届いていないから起こる問題です。
つまり、前足は前足の付け根の脊髄から命令を受け取り反応し、後ろ足は後ろ足の付け根の脊髄からの命令を受け取り反応できるということなんです。
ということは、麻痺(感覚低下)が出ている原因になっているのは足の付け根〜手先の神経ではなく、脳〜各部位に伝わる神経だと言えます。
カケルの前足の付け根の背骨と脳の間には脊椎の脱臼による神経の圧迫があります。
つまり、このテストでカケルの首の怪我が麻痺の原因だということがほぼ確定しました。
次に、X線によるレントゲンの結果についての説明です。
かかりつけの病院で初めにレントゲンは撮りましたが、2週間経っているので再度状態を確認するために撮りました。
やはり一方向からのレントゲンだけでは「第七頸椎の背側脱臼(背中側にズレている)」しかわかりませんでした。
次に血液検査の結果の説明です。
細かく項目に分けて説明する必要はないと思うので、大まかな内容を書きます。
今回の血液検査で重要なのは、麻酔からちゃんと覚めてくれるのか?という点でした。
動物の体に回った薬や毒素は主に肝臓と腎臓が分解し無害なものに変えます。
麻酔も同じで、内臓が体内の麻酔を分解し無害なものに変えることで麻酔から覚めます。
気になるのは「SAA(炎症マーカー)、WBC(白血球)」の2つの数値の高さでした。
どちらも体のどこかで炎症が起きているサインで、首の怪我から来るものなのか、どこか他にも炎症があるのか…それは調べようがありませんでした。
恐らく首の神経の炎症から来るものだと思われました。
神経学的検査、レントゲン、血液検査の3つ検査の結果として、今回の麻酔で背負うリスクは2つありました。
麻酔のリスクレベルが3だったことと、麻酔をかけてデロンデロンになったカケルをMRIやCTを撮るのに必要な体勢にした時、首の骨がズレて今より神経を圧迫してしまう可能性があったことです。
麻酔のリスクレベルは1〜5に分かれます。
全身に麻痺がある=体が正常ではない上にまだ子猫のカケルは、麻酔のリスクレベルが3でした。
麻酔のリスクレベル3は「体に明らかな異常がある」です。
麻酔をかけて検査するか待合室で考え、結果検査をすることになりました。
まず確認出来たのは、7個目の骨は折れているのではなく、背側(背中の方向に)脱臼して6個目の骨に食い込んでいるということです。
MRIで撮った3Dの画像では腹側(四つ足で立った状態で地面の側)から見ると、規則正しく並んでいる背骨の中で、7個目の骨が6個目の骨と胸の1個目の骨に隠れてしまうほど食い込んでいます。
(首の骨は7個でそれ以降は胸の骨となります)
そして、7個目の骨が背側にズレることで中に通っている神経が圧迫されています。
麻痺はこの圧迫によって起こっているものと思われます。
あとあまり関係ないのですが、脊髄の中に出血の跡が見られました。
怪我をした時に出血したもので、もう血の塊になっていると思われます。
これだけ動けているカケルが、今後どうなっていくのか?どうしていけばいいのか?の話ですが、ここで重要なのはカケルが生後3ヶ月の子猫であり成長期の真っ最中であるということです。
カケルが動けているのは7個目の骨が絶妙なバランスで他の骨と噛み合っているからで、今後成長するにつれてズレが広がるようだと、更に神経を圧迫し、場合によっては循環器や呼吸器を動かす命令を出している神経を傷つける可能性があります。
そうなると心停止、呼吸停止になることも考えられます。
治療法としては、7個目の骨がズレないように挟んでいる6個目の骨と胸の1個目の骨をボルトなどによって繋げ固定するのと、7個目の骨の中に通る神経を圧迫から解放するために7個目の骨の背側を切り取ることの2つです。
神経の治療は早ければ早いほど治る可能性が高くなります。
それなら早く手術したい!と思いますが、カケルの骨はまだ成長途中です。
子猫の骨はもろく、ボルトを入れるにしてもトントンと軽く叩いただけで入ってしまう、ということは何かの衝撃で簡単に抜けてしまうんです。
そして、2つの骨をボルトで固定した状態で骨が成長するのがこの子にどんな悪い影響を与えるかわかりません。
手術は骨がしっかりしてきたら最短で2ヶ月後に出来るようになります。
早い時期にやるメリットとしては、術後の神経の回復率の高さ、骨がズレる前に固定することで命の保証がされる、それと遊びたい盛りの時期に動けるようになる、というところです。
デメリットとしては固定した骨が上手く成長しなかったり、逆に成長することによってまた障害が出る可能性がある、弱齢の子猫に麻酔をかけるリスクがある、というところです。
手術を遅らせるメリットとしては大人の骨格に近くなり成長がほとんど止まった状態でボルトを入れることによって、今後固定した部分がどうにかなってしまう可能性が低くなる、体力がついているので麻酔のリスクが低くなる、というところです。
デメリットとしては手術するまでの間に骨がズレたら突然死する可能性がある、長期に渡って神経が圧迫され損傷したら治らない確率が上がる、というところです。
またこの手術の危険性としては、首の腹側、つまりノドの方からアプローチする(切り開く)ことにより大動脈や首周りの重要な神経が傷つく可能性がある、また胸の1つ目の骨まで切り開くとなると、循環器や呼吸器を損傷する可能性があるということです。
疾患の治療によって引き起こされる新たな疾患を「合併症」といいます。
合併症が起これば長期に渡って治療が必要になったり開胸が必要になったりします。
難しい選択になります。
とにかく、手術出来るということと手術によって回復するということは検査でわかりました。
時期に関しては月1の検査で状態を確認しながら、突然死を回避したいので早い時期に手術しようと思っていました。
今回の記事はここまでになります!
最後まで読んでくださった方が居ましたら、ありがとうございましたm(_ _)m
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