(不登校支援)分身ロボットオリヒメ★プロジェクトの実施報告
この度は分身ロボットオリヒメ★プロジェクトへの多大なるご支援をありがとうございました。
オリヒメを使った子ども達の多くは、不登校のため複数年にわたり家から外出していない子ども達でした。中には、あまりにも外出していなかったために靴のサイズがすっかり変わってしまい、履ける靴が無いという子もいました。そのような子ども達への支援は、居場所に来室してもらうという点でとても時間がかかります。しかしそんな子ども達でも、“遠隔操作ロボット”ということですぐにオリヒメに興味を持ち、「やってみたい!」という返事をもらえることができ、私たちも彼らにすぐに支援を行うことができたというのは大きな成果でした。
オリヒメを使った実際の活動では、ボードゲームやカードゲーム、クイズ等をすることが多かったです。オリヒメでできる事の幅はあまり広くないため、中にはオリヒメとZoomの両方を使って活動していた子もいました。オリヒメで遊ぶということは、実際やってみるととても難しく、創意工夫が必要なことが多かったです(例えば、移動できない、自分(操作側)を見せることができない、画質の限界、音の重複等)。またオリヒメを操作している子どもも、ずっと操作画面を見つづけることに疲労を感じてしまうので、どんなに長くても30分の活動が限度でした。ただ、このオリヒメの不自由さが子どもやスタッフの創意工夫や試行錯誤をうながした面もあるように感じています。さらに、オリヒメが不自由であるからこそ、それ以上のことができる居場所や学校、そのほかの場所へ直接参加するという意欲につながったという面もあったのではないでしょうか。
オリヒメを使用していた子どもが、実際に居場所に参加して、オリヒメで見ていたスタッフを見て、ぴょんぴょん飛び上がって喜んだり、教室に入り、級友と給食を食べたり、卒業写真を写したりすることが出来た。二年間ぐらい外にも出られなかったが、今は、外に出られるようになり、キックボードで近所を走り回っている子もいます。複数年外出できなかった子が、病院に行くことができ、医師と話をすることができる様になった子もいます。
以上のことから、この数か月間、オリヒメを使った活動をしてみて感じたことは、オリヒメは「支援の入り口」という点でとても優れているということです。オリヒメは長期間使用して活動するには不自由な点が多いですが、居場所のスタッフと人間関係を構築したりするための十分な機能はあります。また子どもが容易に興味を持ちやすいので、早期の支援が可能になります。
最後に、プロジェクトではオリヒメを子ども達の学校に設置し、オリヒメを使って登校する、という計画も立てていました。実際にオリヒメを教室で待機させたりもしましたが、当該児童が「他の子が自分(オリヒメ)をいっぱい見ているかもしれない」と感じでオリヒメの操作をすることができませんでした。オリヒメは愛嬌のある見た目をしており、かつ遠隔操作ロボットということで、その場にいる多くの子ども達の興味を引きます。実際に居場所「ねいらく」でも、最初に居場所内にオリヒメを置いたところ、参加している子ども達がオリヒメに群がってしまって家で操作している子どもがびっくりしてしまったり、多くの音が重なってしまって上手くコミュニケーションが取れなくなってしまったりということがありました。その後は「ねいらく」でもオリヒメを静かな場所に設置して、あまり多くの人が群がり過ぎないように気を付けながら活動していました。オリヒメが他者の興味を引くということは良い点ではあるのですが、不登校の子ども達は、実際に来室したり登校したりした場面ではあまり騒がれたくない、特別視されたくないと思っている子も少なくありません。そのためオリヒメで活動する際は、その様な子ども達の気持ちに配慮する必要があるということも分かりました。
近年、不登校の小中学生の数は増加の一途をたどり、2023年度には29万人を超えるまでになっています。そして、どのように子ども達を支援していくのかについては、学校教育分野においての大きな課題となっています。
不登校支援としてのオンラインという手法については、例えばコロナ下のオンライン授業には多くの不登校の子ども達が参加できたという報告など、その有用性についてしばしば議論されるようになってきました。特にオンラインミーティングツールやチャット等を使用した支援はすでに教育現場で活用されています。しかし、遠隔操作ロボットを不登校支援に導入している場はまだありません。今回、本プロジェクトで実際にオリヒメを使用することで、子ども達が落ち着いて参加できるような活動内容や参加方法などを試行錯誤しながら具体的に検討・検証することができました。この検証結果は、早期からの具体的介入という点において不登校支援に寄与するのではないかと考えています。
<プロジェクトの収支報告>
寄付金額:436,050円 ※寄付金額は、クラウドファンディング手数料を引いた金額になります。
振込手数料(大学へ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50490円
遠隔操作ロボットOriHimeのレンタル代(2023年5月~12月まで)・・ 360800円
活動報告書の印刷代・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13920円
郵送費(リターンの郵送のため)・・・・・・・・・・・・・・・・・5850円
人件費(報告書の封入作業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4750円
封筒・文房具等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・240円
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合計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・436050円
最後に重ねてご支援のお礼を申し上げます。ありがとうございました。
奈良教育大学『居場所ねいらく』一同